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【要約】デザイン思考の先を行くもの

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『デザイン思考の先を行くもの』/各務太郎/2018/
クロスメディア・パブリッシング

1. Entrance
 iphone、ゲームボーイ等ヒット商品の裏に隠された共通点を探る!

2. Essence
 まずは全体を俯瞰します。本書は大別して以下の通り構成されています。
 a. 見立てる力
 b. デザインの誤解、デザイン思考の誤解
 c. 0→1、0→1の実践
 d. 社会実装

見立てる力


「建築も映画も同じ!」というメッセージから物語は動き出します。


 ちょっと待ってと、いきなり置いてきぼりになりそうな加速から始まりますが、この内容がしっくりと来てしまいます。

 もちろん、建築と映画は完成物としては全然違うのですが、出来上がるまでのプロセスや構成には共通する点があります。
 筆者から見立てれば、映画はシーンの連なりであり、一方の建築は各部屋の連なりであり、その意味では根本的な構成は同じで、両者は「シナリオ」という点で共通すると言うのです。

「見立てる」という動詞は聞き慣れないですが、その心は?と、謎かけで使われる「アナロジー」の概念と同義と考えて良いと思います。

 上記を基にさらに考えを広げれば、
映画、小説、建築、音楽、UXのどれも、一段ステージが上のシナリオという共通の観点から見ることで同じ仲間に括ることができます。筆者は、シナリオを映像で表現するか、文字で表現するか、図面や構造物で表現するか、音で表現するか等の翻訳方法の差異に過ぎないと考えています。
 ここに介在している思考が、異なるものを抽象化してリンクさせる「見立てる力」です。


デザインの誤解、デザイン思考の誤解
 章題をシンプルに表現すると、下記の通りとなります。

デザイン=問題解決力
≠絵心
≠センス
≠クリエイティビティ

 デザインという単語に付きまとう、おしゃれさやアーティストのようなイメージ。実はこれはdesignという概念を海外から輸入してきたために起きている誤解です。そこで海外で使われているdesignの意味を辿ってみます。

日本語で使われるデザイン
1:意匠
2:図案
3:設計

英語のdesign
なんと、上記3の意味のみ!
おしゃれなイメージの1や2には、「Styling」という別の切り口の単語が割り当てられているのです。

これがデザインという概念の誤解の正体です。

 デザインという言葉の意味には、複数の意味が混在しながら使われることに違和感を覚えることが度々あったため、この箇所を読んだ時は衝撃を受けました。
 日本語でスタイリングというと、もはや髪型やファッション関係の概念のイメージが強すぎて、今更「デザイン」と「スタイリング」という単語が使い分けされ直すことにはならなそうです。そのため、コミュニケーションにおいて、デザインという単語がどの意味で使われているのかをジャッジできる目が必要と感じます。

 デザインの誤解がわかれば、必然的に最近話題のデザイン思考の誤解も理解できます。デザイン思考は海外から取り入れられた概念であり、であれば当然、おしゃれな資料やプロダクトを如何にして作るかみたいな話ではないわけです。

 しかし、面白いのが、デザイン(stylingでない意味の方)の概念を突き詰めていくと、結果的に美しいものに仕上がる可能性があるという点にも触れられています。これが誤解を加速させている一因にも思えますが、デザインというワードの魅力の1つと思います。

 デザイン思考については、色々な本を読んでいるのでまた別の機会に取り上げたいと思いますが、端的に言ってしまうと、デザイン思考はPDCAサイクルそのもので、PDCAサイクルという言葉が独り歩きしてしまっている気がする昨今、実際にどのように進めれば良いのか詳細化されたのが、デザイン思考でないかと思います。

 後半の0→1(0から1を考える力)、社会実装をどのように行うかについては、また次の機会に!



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