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「貴人」か「奇人」か?(過ぎたるは・・・)

接種会場での〝お・も・て・な・し〟

('21年7月当時の話)

コロナワクチンの2回目接種が終わった。真夏のような暑さの中、自転車で10分ほどの接種会場である「区民ひろば」へ向かう。

私は「65歳以上の優先接種」を受けられる立派な資格保有者なので、その恩恵に服することが出来たという訳である。3年弱前にそのありがたい年齢になった私を迎えてくれたのは、大変な親切と丁寧さと優しさであった。

なにしろ会場には杖が必要、耳が聞こえにくい、介助が必要な先輩方がほとんどなのだ。一歩足を踏み入れた途端、暑い中やって来た事への労りと、足元への注意、移動時の気遣いなどなど、まるで貴人に対するような扱い方なのである。

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「貴人」から「奇人」へ !?

着古したダメージジーンズにTシャツ、サングラスをかけた貴人は、丁寧なる案内の下、静々と問診デスクへ。

次のデスクに向かう時に言われた。「あの「3番」と書いてあるところへお願いします。3番。さんばん。わかりますか?」「・・・」(〝3番〟という字は読めます、まだ・・・)

無事、注射を終えると前回とは別のコーナーへ誘導され、そこでは「ワクチン接種済み証」が渡された。

〝ワクチン接種済み証〟?。なんだか聞いた覚えがある。そうだ、昔飼っていた犬が春・秋に狂犬病ワクチンを接種したときに聞いたんだった・・・。貴人は途端に狂犬病ワクチンを終えた犬の気分になった。

接種した後、15分ほどは健康観察ということでその場に留められる。前回の時には「15分経ったらお声がけしますから」と言われていたのだが、2回目ともなると自分で時計を確認して帰って良いらしい。

「あの時計で3時15分になったらお帰りいただいて結構ですが、読めますか?」。この〝読めますか?〟とはどういう意味なのだろう。

何しろ〝あの時計〟というのは、駅のプラットホームにあるようなシロモノである。室内で見えないはずは無い。現に乱視の私にも分の刻みまで見えるほどの立派な時計なのだ。

ということは単に〝時計の読み方が分かるか?〟ということだったのだろうか。まさか???。いくら私よりずっと先輩方が多い会場とは言え、それは無いだろうとは思いつつ、つい「じゃあ無言で消えてもよろしいの?」と言ってしまった。

犬の気分の貴人はここでまさしく、〝奇人〟となってしまったようだ。後ろで吹き出した看護師の声を私の耳はしっかりと捉えていた。

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適切な〝お・も・て・な・し〟は難しい・・・

1回目の接種後に微熱・倦怠感・頭痛の3点セットになった副反応があった為、2日分のツイッター投稿用の写真を予め準備した上で臨んだ2回目である。

その準備万端さに恐れをなしたか、2回目の副反応は倦怠感と僅かに上がった体温だけで終わったが・・・。過剰な〝ご親切〟を受けた〝副反応〟はその後もしばらく残ってしまった。

特段、若いつもりでいたいという気もないが、過ぎたるは及ばざるが如し、の見本のような対応には少々閉口してしまう。〝読めますか?〟の真意は未だに謎のままだ。

何にしても、人に適切に対応する、ということは難しいものだと思う。ましてや適切な〝おもてなし〟においてをや、である。

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文責・写真 : 大橋 恵伊子