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隣の芝生

隣の芝生ってずっと青い。

あの芝生はいつも沢山の人に囲まれていて楽しそうだな。あっちの芝生はカラフルで可愛い。その芝生も凛としていてすごくかっこいいし、そっちの芝生はいつも遊んでばっかりでずるい。

幼馴染と、久しぶりに丸一日遊んでたくさん話をした。幼い頃の育った環境は似ていても、みんなそれぞれの感性でそれぞれの生き方をしていた。そしてその生き方がとても輝いてみえた。私はいつまでも子供で、安いピアスをして似たような服を着てダラダラと実家でのんびり働いている。それに比べて彼女らは...という感情が帰宅してから止まらなくなった。

もちろん私の芝生だっていつも青々としているし、みんなから愛されているし、美しくて大好きだ。

どんなに恵まれて幸せな毎日でも、やっぱりふとした時、他人と自分を比較してしまう。隣の芝生が羨ましくなる。

自分に自信を持って、私は私なりの人生を生きよう、と強く心に決めていても、「あの人みたいにもっとこうだったらいいのに」とか「あの子のようになれたらいいのに」とか、無駄なことを考えて心が弱ってしまう。



小説「若草物語」に出てくる4姉妹は、他人と自分たちを比べて、貧しさや愚かさを嘆く。どうしてあの子みたいに綺麗なドレスが着れないの?どうしてあの人と同じように楽しいことができないの?と。

けど、自分の家に帰って、母親と一緒に改めて自分たちの芝生を見つめ直すと、「そうか、今の自分たちは幸せなんだ」ということに気づく。貧しくても、寂しくても、私たちは今恵まれていて、幸せである。その事実をじっくりと丁寧に噛み締めて、謙虚に生きていこうと決める。

そんな彼女たちの生き方は、明るくて楽しくて力強くて、けれど控えめで品があって。同じ女として生きていてとてもパワーをもらえた。



自分の未熟さも、今自分が幸せであることも、他人と比べないと気づけないのが人間という生き物なのかもしれない。

隣の芝生が茶色く見えることは今後ないんだろうな。人間、死ぬまでずっとこうなんだと思う。大人になって、ようやくそういう現実を受け入れられるようになった。

だから、隣の芝生はずっと青い。

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