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私と私周辺のコト

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私なんて人は存在しません。どなたもどうぞ騙されませんように
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#小説

花争い

私絶対きれいだわ

私の方がきれいだわ!

もう
薔薇も桜も喧嘩しないで

(でもきっと、
   あたしが一番きれい♡)

ショックー!
NN、蓮華が好きなんだって!

ニワゼキショウも!!

ばっかじゃないの?
トルコキキョウも知らなかったのよあいつ!

あんなやつに評価されなくたって、関係ないわよね!私たち!

そーよそーよ!!

大平原を渡りゆくものたち〔生々しい殺戮シーンがある(かもしれない)ので、苦手な方はブラウザバック願います〕

かれらは大平原を横切ろうとしていた。
渡り切ったらそこにはきっと、おいしいごはんが待ってるのだ。
一緒に行くと言ってきかなかったルレを左に、ルレのきょうだい、ポドリヨンを右に、かれらはひたすら走っていた。
もうすぐ渡り終えられそうだったのだけど・・・

だめだ!くる!

叫んだルレが白いものに覆われたかと思うと、悲鳴を上げるひまもなく、いきなりぶしゃりと潰された。
翻って白いものは、今度はポドリヨ

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画廊、あるいは、アシスタントの憂鬱

勤め先は画廊。
たいていはぼやーっとしてられる。
商談は社長にまかせればいいし、社交は奥様にお任せできる。
ただ・・・

S画伯の個展だけは、ちょっ
と・・・

搬入日や初日はいい。
問題は二日目からだ。

朝、表戸を開けると、それはもう起きている。
金魚の絵からは金魚が落ちて跳ねてるし、桜並木の絵からは花びらがどっさり舞っている。
静物画からは果物がこぼれ落ちてるし、ああ、竜の眼。
竜はどこ?

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ところでアルタはまだあるにょ?

レンタル

同窓会にはショウコも来る
おまけにカレシを連れてくる!情報が入ったのは何と、会日程の三日前!
これじゃあ手当てもききやしない!
でもショウコ・・・
同じ産院で生まれ、同じ名門幼稚園に通い、同じお嬢様学校で、成績とモテモテぶりを競い合った、そんなショウコにキメられるくらいなら、そんな同窓会、行かない方がましだ!
(でも行かなきゃ行かないで、今度は敗者と決めつけられる!)
こーなったら!!

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追悼

追悼登山に行くという義兄を、私は止めきることができなかったが、そんな私をあざ笑うかのように、その日も山は大いに吹雪き、義兄は二度と戻らなかった。
義父のときもそうだった。
ご友人の追悼登山にゆくのだと言ってきかず、結局吹雪にのまれてしまったのだ。
これでは全くの繰り返しではないか!
警察は繰り返し、登山者たちに言っている。
追悼は平地で!
尾根でなく平地で!
でも山男たちは繰り返し、追悼は登山を行

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疎乃美の疎

疎(うと)むとも読むと知ったとき、疎乃美の気持ちは奈落に落ちた。
パパもママも大嫌い!
そんなに私がいらなかったなら、つくらなければよかったのよ!
つくっちゃったんなら私のこと、可愛がらなきゃ絶対嘘よ!
可愛がられてないと決め込んで、呪いの札に父、母の名を書き込んだ彼女、
彼女は全く知らなかった。
その日がたまたま悪魔らの、

人間の願い何でも叶えたるでぇ

の日だったことを。
父母は死んだ。

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誤算続きの女たち

里奈のこと知ってる?

ああ、先月結婚した・・・

それが離婚されちゃったの。
試験結婚のお試し期間にね。

だってお試しは里奈の方から・・・

そ。里奈から高屋君への条件。彼女飽きたら別れる気だったからね。

ところがそんな条件を、逆手に取って高屋君が里奈を・・・

やるよねー、アッシーも。

結局『どれ』が首絞めたの?

山崎君と加藤君。

中西助教のはばれてないの?

それがぜんぜんばれてな

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去年の夏

たった七秒半の命だった。
彼女の甘い吐息から、吹き広げられて虹色に輝き、自由の天地へと漂い出たのもほんのつかの間、それはたった七秒半で消えた。

なんて・・・

『はかない』と彼女の唇は続いていたが、それは決して声にはならず、かわりに一粒真珠のような、涙で頬を濡らす彼女だった。
わかってる。
僕らは戻れない。
十七の僕らはこどもで、新しい命を育むには、自覚も実力も備わってなかったし、たとえそれらが

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褒めたところで

終鈴の、解放感に浮かれていた私を不意に襲ったのは、ガツンという鈍い音だった。
学校から数えて二つ目の、見通しの悪い曲がり目の、出会い頭での大激突。
相手はそう、石頭中の石頭を持つといわれる野生動物、五才児(推定)。
ガキなんか放し飼いにすんじゃねえ!
だが世間は無情にも、私よりソイツに肩入れするのだ。
何とかちゃん大丈夫!?
と絶叫の母親はじめ、近隣の民家とかからも、わらわらわらわら出てくる大人ど

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気配

ゾクリとトリハダが立ったのは、背後に気配を感じたから。
私鉄O線午前七時半、言わずと知れた殺人ラッシュ、ぎゅう詰めの車内では、思わぬトコに手やらナンやらが当たることもある、そんなくらいはラッシュの常識、でもコレは、ホームで私の真後ろにいた、整髪料臭いサラリーマン、ソイツのに絶対間違いないのだ!
カーブでガクンと車両が揺れる、すると気配もそれに乗じて私の躰をより抱え込む!
やめてよ!と私は肘を使うが

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おとうと

双子に生まれたい、双子がいいって思ってたのに、ぼくはひとりっこ。
つまんないのでおとうとをつくった。
おとうとの名は慶二郎。
ぼくとちがって活発で、スポーツが得意で歌もうまいんだ。
みなが慶二郎を見る。
すてきだなあ、かっこいいなあと。
ぼくは最初はうれしかったんだけど、いつからだろ、慶二郎のことが
だんだんうっとうしくなってきたんだ。
ぼくの大好きな飯野たまみまでが、慶二郎派だと知ったとき、ぼく

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ある晴れた午後の誤算

原稿が出来上がったのは、何たることか、この9月。
まさに一年七か月ぶりのことだった。
でも前回だって一年二か月待ってくれたんだし、担当は飯塚氏、気の長さでは定評がある。
私は彼が待っていて、もとい、待ち焦がれていてくれることを信じていたのだが、生芸ビル、生芸企画なる弱小出版社、その編集部を四階に置く、この古ぼけたちっぽけなビルには意外なことが起きていた。
生芸企画が潰れていた?
ならまだ我慢もでき

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平和を呼ぶ(はずの)メカ

オーラウォッチャーが売り出されてから、つまらない喧嘩はめっきり減った。
わざわざ手合わせする前に、相手の力がわかるから、流血の惨事を避けることができるのだ。
平和な時代が来そうだと、誰もが一時信じたが、大して長くは続かなかった。
みんなくっきり理解したのだ。
自分だけで倒せなくても徒党を組めば何とかなる。
そして集めるべき人数を、オーラウォッチャーが教えてくれる・・・・・
なるほど結果のわからない

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その日〔マダンテさんに捧げる一作〕

見送りに
行かないのか?

行かねえ
散々俺の尻っぺたで遊びやがって

遊んだのは俺だけど

新開い!!

厭だったのか?

厭って俺は

俺は・・・

この電車に乗ってしまえば、私は日常の多忙に紛れてしまうのだわ
ああでも、楽しんだ
十分だ・・・

ん?

ダンテ?

    まだんてえええええ

このだみ声!

窓を開けた
私の髪がメーテルみたいになびく

走ってくる細マッチョ
三白眼
だらし

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