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新卒2年目のエンジニアがDesign Technologistを名乗ることになった話

はじめに

こんにちは、サイボウズのkintone開発チームの白鳥(@__amishiratori)です。

先日参加したデザインシステムのカンファレンス「Clarity」のとあるセッションをきっかけに新卒2年目のエンジニアの私が「Design Technologist」を名乗ることになった話をしようと思います。

Clarityとは?

Clarityは2016年にアメリカで始まったデザインシステムのカンファレンスです。2016年以降毎年アメリカで開催されていて、2020年と2021年はオンライン開催されました。

Clarityについてもう少し詳しく知りたい方や、今年のセッションについて知りたい方は一緒にClarityに参加したおーじさんの参加レポートをチェックしてみてください!

このカンファレンスで2日目に行われたセッション「No Need for Bridges: How Design Technologists dissolve the design and engineering gap」で紹介された、「Design Technologist」という職業についてです。

このセッションで紹介された、Design Technologistという職業について、チームにDesign Technologistがいることのメリットを紹介します。

Design Technologistとは

Design Technologistはデザインとエンジニアリングの両領域を理解し、その2つの領域を跨いて働きます。デザイナー、エンジニア、リサーチャー、ライター、PMなどのプロダクト開発に関わる様々な職種の方との共通言語を持ち、プロトタイプ作成、ユーザーリサーチ、コンポーネント実装、ドキュメント執筆などを行います。

UXエンジニア、UIエンジニア、デザインエンジニアなどデザイナーとエンジニアの中間に立つような役割を持つ人がいますが、それに近いものだと考えています。

まだ日本語の文献も少なく、聞き馴染みのないロールですが、スピーカーのAyeshaさんが所属するPinterestの他にもAirbnbやSlackなどの企業でDesign Technologistの肩書きを持つ方はいるようです。

セッションではDesign Technologistの具体的な活動内容として、デザイナーとエンジニアのコラボレーションのための新しいプロセスの提案や、デザイナー・エンジニア両方に向けたオンボーディングセッション、新機能のユーザーテストや検証のためのプロトタイプ作成、アクセシビリティ改善などをデザイナー、エンジニアと協力して行うことが挙げられていました。

こういった活動からDesign Technologistはデザイナーとエンジニアの間に立って橋渡しをし、双方に信頼を築く手助けをするロールだといえます。

Design Technologistはデザインとエンジニアの両領域で両方向のニーズを翻訳して伝えることにパッションをもち、チームがクロスファンクショナルなニーズやゴールに向かっていくために尽力します。

AyeshaさんはDesign Technologistという職業を以下のような言葉でまとめていました。

デザインシステムがデザインとエンジニアの間のギャップを埋めるツールであるとするならば、Design Technologistはそれの「人」バージョンである

No Need for Bridges: How Design Technologists dissolve the design and engineering gap

なぜチームにDesign Technologistがいると嬉しいのか

セッションではチームにDesign Technologistがいる利点についてAyeshaさんのチームメンバーからの声が紹介されていました。

エンジニア:

コラボレーションする時に、技術面の視点を持っているデザイナーとデザイン面の視点を持っているエンジニアの両方の振る舞いができるひとがチームにいるのは貴重。作業する時は工数によってデザインとエンジニア足りない方の手伝いができる人がいることも貴重。

No Need for Bridges: How Design Technologists dissolve the design and engineering gap

デザイナー:

デザインシステムチームでは、この職種の人は調停者のような存在。デザインとエンジニアリングの両方向からの視点を持ちながら、チームの生産性をあげるためのツールやプロセスを開発する。

No Need for Bridges: How Design Technologists dissolve the design and engineering gap

PM:

Design Technologistはエンジニアが作れない(作るべきでない)ものをデザインしないように、デザイナーやアーキテクトを手助けする人

No Need for Bridges: How Design Technologists dissolve the design and engineering gap

セッションを視聴したあと、一緒に参加したおーじさんと「サイボウズのkintone開発チームでのDesign Technologistの役割」について話していました。

kintone開発チームでは職能ごとにわかれた依頼型でのコラボレーションが多く、相談のハードルがやや高めに感じられることがありました。コードのかけるエンジニア、デザインのできるエンジニアはいままでもチーム内にいましたが、違う職能の人がシナジーを持って働く文化は少なかったかと思います。

もしkintoneチーム内にDesign Technologistがいれば、相談のハードルが少なくなりよりチームワークのある製品を開発していける体制になるのではと話していました。

Design Technologistを名乗ることにした話

Design Technologistというロールをこのセッションで初めて聞いたのですが、セッション後によくよく考えてみると、自分が学生時代から目指してきた「デザイナーとエンジニアのハイブリッド」、「デザイナーとエンジニアの橋渡し」が言語化されたものであること、直近で行っていた仕事がDesign Technologistの活動に非常に近いことに気がつきました。

学生時代の話

学生時代はインターンやアルバイトでデザイナーとエンジニアの両方をしていました。当時からデザイナーとエンジニアの境界がはっきりとわかれたものではなく、グラデーションのあるものになってコラボレーションがスムーズに行われればチームとして高いスピードでよりよいものを開発できるのでは、と感じていました。

自分の興味領域としてもどちらかひとつに絞ることがとても苦しく感じるくらいどちらも大好きでした。

しかし、自分が就職活動をしていたときにはこのようなロールを新卒採用で募集をかけているような会社はなく、まずはエンジニアとしてキャリアを始めました。

社内で実質Design Technologistとして活動していた

サイボウズに入社してからは、いちエンジニアとしてデザイナーとのコラボレーションをより円滑にするためにチーム内での立ち回りを工夫してみたり、デザインシステムについて勉強したりしていました。

勉強の一環として、スキルアップや業務理解のために他チームや部署の業務を体験できる「大人の体験入部」制度を使ってアクセシビリティチームに体験入部をしていました。製品開発をする中で、今後デザイナーとエンジニアの橋渡しをするにはアクセシビリティの知識も不可欠だと感じたためです。半年ほどkintoneのエンジニアとアクセシビリティチームの兼務という形で体験入部をしていました。

体験入部の活動として、新規実装するコンポーネントの選考調査とプロトタイプ作って検証しドキュメント化したり、コントラスト改善の調査・検証でデザイナーのお手伝いをしたり、活動の中で聞いたデザイナー/アクセシビリティチームのペインや思いをエンジニアに伝えるということをしていました。

そのとき感じた課題として、エンジニアチームとデザインチーム、アクセシビリティチームとのコミュニケーションコストが高いことがありました。従来はエンジニアチームからデザインチームにデザインプロト、アクセシビリティチームにDOM・キーボード操作設計を依頼してから実装、実装後に各チームに確認してもらって調整していて時間がかかっていました。

しかし、自分の所属していたエンジニアチームでは、私がデザインチーム・アクセシビリティチームの検討・検証段階にも入っていたことで、従来通り依頼した場合の回答が予測できるようになりました。この予測を使ってエンジニアチームで実装し、最後にデザインチーム・アクセシビリティチーム確認してもらうようにして、リードタイムの短縮ができていました。チームメイトからも、手戻りが発生することもなくリードタイムの短縮ができていてよかったとの声が上がりました。

相談・確認を受けるチームとしても、丸投げではなく、コンテキストが揃っている状態で相談・議論ができるため、やりやすかったとフィードバックをいただきました。

このような状況の中で聞いたDesign Technologistという言葉は、もやもやとしていた自分の夢の形がはっきりと言語化されたものであると同時に、直近の仕事が実質Design Technologistとしての活動だったことに気がつきました。

将来的にDesign Technologistを名乗ろうと決心したセッションでした。

Design Technologistを名乗り始めた

時を同じくしてkintoneのフロントエンド刷新プロジェクトの一環として共通コンポーネントの開発・提供、デザインシステムの開発を通して、ユーザー体験を最高にすることを目指すデザイナー、アクセシビリティ、エンジニアの融合チームが作られることになりました。

「これ以上のチャンスはない!」とチームへの参加を決め、同時にDesign Technologistを名乗ることを決めました。

誰かからロールを与えられるのを待っていてもしょうがないので、勝手に名乗ってしまおう!の精神です。

これからやっていきたいこと

新しいチームでデザイナー、アクセシビリティ、エンジニアのコラボレーションが活発に行われ、チームメンバーがワクワク、生き生きと仕事できるようにDesign Technologistとして活動していこうと思います。

そしてチームとしてはまずはkintoneのフロントエンド刷新プロジェクトをスコープとしていますが、ゆくゆくはkintone全体で各アプリケーション開発チームが主体的に品質の高いアプリケーションを素早く開発できるようになること、一貫性のあるユーザー体験やデザインの品質をユーザーに提供できることを目指してチームでの活動を頑張っていきたいと思います。


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