野生に戻る少年たち

夏休みに入り、息子を連れて山遊びに参加した時のことだ。

最初の川遊びでは、近場にあった木の棒をただ川に流すという遊びを延々繰り返していた。「日本、アメリカ、イタリア」と、木に名付けてオリンピックレースをしている。実にシュールだ。

(ちなみに男の子の三種の神器は、木の棒、石、どんぐりだと思うのだが、小三になってもそれは変わらず不動のままである。)


場所を移動し、ジャングルのような険しい道を進み出すと、子供達のテンションが一気に上がり始める。整備された道ではないので、足元に気を付けたり、かなりの傾斜がある場所ではクライミングのように登らなければならない。さっきより生き生きしてるじゃないか。

「楽し〜い!」と子どもらが絶叫している。本当に楽しそうだ。大人はすでに息が切れているというのに。

急斜面の崖遊びでは、一気に子供達の野生のスイッチがONされた。崖を登るためのロープがあるが、誰一人それを使わず、岩や木を持ちながら「おりゃあああ」と叫びながら駆け登りだす。

山猿?あんたたち山猿なの?と一瞬目を疑う。駆け登ったと思ったら、すぐに降る。降る方が難易度が高い。どこを持てばいいかを自分で考えながら降りるので、体も頭も使う。下に着くと、またすぐに駆け登る。延々これの繰り返しだ。

「俺、15回目!」「14回や!」驚くことに少年たちは、崖登りの往復回数を競っているではないか。崖登りハイなのか、ゾーンに入ったのか、よくわからないが、皆一様に目を見開き、無心でただただ崖登りを繰り返しているのだ。

こんな姿を街中の公園で見られるだろうか?絶対に見られない。自然の中での遊びは、本能に近いのだと思った。

試しにロープで登ってみると、意外と腕の力がいる。これをロープなしで登ってんの?!と思ったら、驚愕だった。必死の想いで息を切らして登ってる横で、「はっ!はっ!」とテンポよく往復する少年たち。やはり開眼している。「おれ、20回目!」と爽やかに叫ぶ少年の笑顔が眩しすぎた。

そろそろ行くよーと声をかけると、「まだ登りたい」と名残惜しそうである。全身泥だけで、汗まみれ、なのに顔は爽快だ。

少年たちがリポビタンDのCMの如く、崖遊びに懸命になって降りてくると、女の子たちはハンモックでのんびりと過ごしていた。とても優雅だった。


帰りがけ、息子と友達の男の子がなにやら熱心に話していた。

後で聞くと、「人間と虫について」とのこと。自然の中で遊ぶと、やはりトークテーマが壮大である。



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