死んだあと最後に思い出すのはその人の笑顔
最近職場で利用者の方が相次いで亡くなられている。大体が90代の高齢者なので、日毎に食欲がなくなり衰弱されていくケースもあれば、急変して救急搬送され、病院で亡くなったりなど様々。
その中の一人の女性は食に関して大変な拘りがある方だった。なんでもいい、という文字は彼女の辞書にはない。だいたい元気な人は高齢のわりによく食べるが、高くても美味しいもん食べたい、と言うのがポリシー。どこどこのだし巻きやないとあかんねん(700円もするやつ!)、果物もどこどこ産でできるだけで大きくて美味しそなやつ(大概1000円越え!)、駅前のパン屋の胡桃パン、ベーグル言うのいっぺん食べてみたい、美味しいお造り食べたいわ〜、今日のお昼なに?中華?嫌いやわ〜中華みたいなもん一番嫌いやねん!
彼女にとって食べることが生きる楽しみで、美味しいものを食べた時の「あれ、美味しかったわ〜〜!」のくちゃあっとなった笑顔は最高に幸せそうだった。嫌なものは嫌とはっきり言い、ほしいものはほしい、気持ちいいくらいにはっきりした性格の人だった。
時々一人で思い出し笑いをして、猫みたいな顔で笑い出すので、自然と職員も笑い出すこともしょっちゅうだった。
「あのな、ほしいものがある時、思い切り口に出すねん、これがほしい〜これが食べたい〜って。スッキリするで」と言って、「お造り食べたい〜〜」と叫んでいた。そして、「カッカッカッ」と猫顔で笑うのだ。
嫌なことはさっぱりと、好きなものに貪欲に、笑い飛ばしていける人はどんなに清々しいのだろう。少なくとも、最後にその人を見た時の顔が記憶に残る。
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