加害者、被害者、目撃者の視点


アナザーストーリーという検証番組をご存知だろうか?

毎回テーマごとに、様々な視点からの証言をもとに、事件や人物を紐解いていく番組だ。

その、アナザーストーリー的な視点で、わたしが経験した交通事故について書いてみたい。


①交通事故の被害者の視点

30年以上前、当時7〜8歳頃、わたしは道路を横断する途中、車に跳ねられた。

軽く数メートルは宙を舞い、(よくある話だが、ほんとうにその数秒スローモーションになって見えた)そのまま道路に倒れこんだ。

軽自動車からひとりのおばはんがすごい形相で出てきて、まだ幼いわたしにこう言い放ったのだ。

「わたしは悪くないからね!!飛び出してきたあんたが悪いんだからっ!」

明らかに動揺している。


焦りまくるおばはんをぼんやり見つめながら、ゆっくりと起き上がると、なんと無傷であった。


近くにあったパン屋のおばちゃんがお店から出てきて、こっちを見つめている。

さらに焦りまくるおばはん。

「わたしは悪くないから!わたしは悪くない!!」

パン屋のおばちゃんに対してのアピールなのだろうか。

人身事故の場合、車の方が加害者になるので、おばはんは動揺しまくっていたのである。

狂気ともいえるほどのおばはんのヒステリーに恐怖を感じ、わたしはそのまま家に帰ってしまった。

随分後になってからその一件のことを親に話すと、

「ばか!なんでその時言わないんだ!」と、えらく怒られた。後遺症があとから出てきた場合のこともあるのかもしれないが、とにかくあの狂気なおばはんのことは一刻も早く忘れたかったのだ。



②交通事故 目撃者の視点

つい最近息子を送りに行く朝、道路の目の前で、軽自動車とバイクの正面衝突を目撃してしまった。
曲がり角での衝突だった。

倒れたバイクの女性は外傷はなさそうだが、うずくまっている。

「大丈夫ですか?」と、その女性に駆け寄ると、接触した車から子連れの女性(ちょいおばはん)が出てきて、

「わたしは悪くないねん!この人が当たってきはってん!」と、テンパりながら主張し始めた。
(どこかで聞いたセリフだ)

バイクの倒れた女性を気遣うでもなく、「あー面倒臭いことになってしもた」感をガンガンに出している。

近所の人も出てきて、救急車を呼んだ。

そのあと、警察なども来て、一応目撃者のわたしも事情聴取を受けた。

去り際、バイクの倒れた女性は声を振り絞るようにして、

「、、ありがとうございました」と言って動きにくい手を振ってくれたのだが、手なんか降ってる場合じゃないよ、あんたの無事を願うよ、と後にした。



③交通事故の加害者

5年ほど前、夫を駅まで送った帰り、接触事故を起こしてしまった。

左右の確認ミスと、ペーパードライバーから運転するようになって日がまだ浅いこともあって、気が動転してしまい、コツンとあててしまった。

中からおじさんが出てきて、やれやれ、という顔をしている。わたしもおじさんも怪我はない。


とりあえず警察を呼び、現場検証や事情聴取などをして、車の保険のことなどについて話し合い、最後におじさんに謝ると、「まあ、気をつけてね」とだけわたしに言い残し、後にした。


当てたのがややこしい人でなくてよかった!とほっとした。




番外編 交通事故 加害者の家族


20年以上前、父親が人身事故を起こしてしまった。

バックする際、後方確認ミスで、歩いていた人(中年サラリーマン)の足を巻き込んでしまったのだ。

幸い捻挫程度で済んだものの、怪我の治療などは保険から下りるので、あとは当人同士のやりとりはなくなるのだが、その中年サラリーマンは納得いかなかったようで、こちらが何度も謝ってるのにもかかわらず、執拗に脅迫電話をかけるようになった。

その時は静かなサラリーマンだったのに、電話口ではその筋の人ばりに脅してくるのである。

まさにややこしいタイプの人だ。


気弱な父親はすっかりその電話に参ってしまい、「わたしとお母さんがついてるから大丈夫や!」と父をなぐさめた。

その年末に大きな松葉ガニ二匹を送ると、そのややこしい電話はぴたっとなくなったのである。


かにが好きだったんだ。。


あらゆる視点で交通事故を経験したが、やはり、加害者被害者とも、どんな人に当たってしまうかは、もはや運である。



2018.3.7『もそっと笑う女』より

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