すずめの鈴木さん


今年に入ったあたりくらいだろうか。急に庭に一匹のすずめが訪れるようになった。決まって朝だ。たまに連れを引き連れてやってくるが、つがいなのか、よくわからない。オスもメスかもわからない。

この小さき訪問者に、「鈴木さん」と名付けた。でも実は毎日来る鈴木さんは鈴木さんではなくて、田中さんなのかもしれないが、ややこしいので「だいたい鈴木さん」と総称している。

鈴木さんの滞在時間は最初は短かった。やはり警戒してだろう。野生界的にはそれが正解だと思う。何が起こるか、何が出てくるのかわからないのだ、この世の中は。

ところが最近、いやに滞在時間が長くなってることに気がつく。5分、10分と日増しに長引き、先日は30分くらい雑草やらを懸命につついてる鈴木さんがいた。完全に警戒心が緩まっている。

それでいいのか、鈴木さん、うちだからなのか?我が家はあんたに危害は加えないけど、他の家はどうかわかんないんだよ、大丈夫なの?!と、リラックスしまくった鈴木さんの態度に、心配すらしてしまう有様だ。

そのうち、腹を見せてきたりなんかするのだろうか。いや、餌付けはしていないから、そこまではないだろう。しかし、ここ最近の鈴木さんは明らかにバイブスが緩んでる。

いつも窓越しに見守っていたので、試しに庭へ出ようと近づいてみると、鈴木さんは体をびくっと震わせ、一瞬で飛び去っていってしまった。

それでいい、鈴木さん。



夜、息子のランニングに付き添いで並走していると、石のようなものが地面にあり、ライトで照らしてよくよく見てみると、かなり大きめのカエルが鎮座していた。ライトアップしても、びくとも動かない。え?死んでんの?と足元5センチほどに近づいてみる。生きている。そしてまっすぐ遠くを見つめている。人間が接近していても、その堂々とした佇まいは風格さえ感じ、ライトに照らされたカエルの背中は、「おれになんか用?」と言いたげである。

あまりに動かないので、息子がその場でジャンプしてみると、カエルは勢いよく飛んで田んぼに消え去った。かなりの飛距離だった。

人間慣れしてるのか、野生なのか、いまいちよくわからない。


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