ショートショート「有名の代償」
「あの、すみません!!サインもらえますか?」差し出されたのは私の本。慣れた手つきで名前を書く。ほくほく顔で嬉しそう。
うきうきした後ろ姿を見ながら呟く。「仕事がやりづらい・・・」
この後10時からこの書店一大イベントであるサイン会が始まろうとしている。今をときめく○系アイドルグループで総選挙1位をとった夢田プリ子と、握手したい気持ち満々のファンたち。このイベントで低迷している本屋の売り上げが少しでも上がって欲しいと、一致団結して準備を進めてきた。なのに・・・・。
あんなインタビューさえ受けなければ。
本日の主役のプリ子とファンたちの嫉妬と羨望の混じった視線を一手に受ける。
「名物書店員」と言われる私の白髪と敵は日毎に増えていく。
有名人はつらいよ。
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