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散らかった燃えるゴミを素手で片付ける子供。その姿はまるで。。。

早朝散歩途中、カラスの鳴く声が騒がしい。何かを狙う態勢で身構えるカラス。

今日は、燃えるゴミの収集日。…そういうことか。
数メートル先のごみ置き場に向かって突進、あっという間に散乱するゴミ。カラスも必死だわ。

そこへ、黒いランドセルを背負った子が現れた。何やら身を屈め始めたが、何かあったのかな?
少し離れた所からそちらに向かって歩いている私に気付いたその子は、何もせずその場を立ち去った。
しかし、数歩の所で立ち止まり一息ついたかと思うと、踵を返しごみ置き場へ戻って行った。
カラスの散らかしたゴミを拾い集め、細かく散らばってしまったゴミまでも素手で集め、ネットを掛けてキレイにしていた。そして、学校へ向かってトボトボ歩き始めた。

「!?」

一瞬、何だか分からなかった。何をしているんだ?こんな子、今時いるのか?

こちらに気付いた時、どう見られるか考えて、一度は何もせず立ち去ろうとしたのだろう。
それでも彼の中で「やるんだ!」という声が彼を奮い立たせ、戻ったらしい。彼の信念は、本来の軌道に修正されたようだった。

普段ゴミを出す時でさえ、分別等きちんと出すことが出来ない大人も多い中。。。最近は、カラス対策として折りたたみ式のゴミ入れを設置したりし始めましたが、まだまだ我が家の周りは直置きが多い。収集後、無惨な姿をさらすごみ置き場も多いのです。
私が見た子は、特別な行為をしたわけではないのかもしれない。今時の子がどんな子達なのかよく分かっていないけど、その子の佇まいが、何かを発していた。10メートル位離れていただろうか。それでもゴミを手にし、ごみ置き場まで歩き、また拾いに歩く。2〜3回繰り返されたその姿が、あえて例えるなら、早朝のお寺の境内を、無心で体の丈よりずっと長い竹箒ではいている、ようだった。

衝撃を受けた大人は、駆け寄って感謝の気持ちを伝えたかった。だけど、警戒心の強いこちらは余計な事を考えてしまう。変な大人に話しかけられたと彼の頭や心にトラウマとなってはいけないし…とジタバタしていたら、その子との距離が縮まってしまった。

よし!この子が信念を貫いて、自分の信じる自分の良いと思う事をやってのけたんだ。なら、私にだって出来る!思いきって声を出してみた。

「ゴミ、ありがとう。」
するとこの子は、深々と頭を下げた。淡々と礼儀正しく、どこまでも普通だった。やはり、お坊さんのもと仕える少年の様だ。少し安心したようにも見えた。私の存在を気にしていたのだろう。良かった、声を出して。

だけど…少し心配になった。
君のような子が、このどうにかなってきている社会の中で、生きにくくなければいいなと思う。
君のような子が、自分の信じる道を素直に歩いていければいいなと思う。
そんな社会を、大人である我々が作ってあげなくてはと思う。

日々の生活の中で、邪心が驚くほど多い。何故か最近、イライラすることがたくさんある。
穏やかに、優しくありたいと思うのに、気付くと物にあたってしまったりしている。

こんな状態では、あの子の手本になることは出来ない。あの子のように、自分にも信じる事、信じたい事、守りたい事、伸ばしたい事、やりたい事はあるはず。それに意識を向ければいいだけのこと。
躓いてもいい、踵を返してまたやり直せばいいんだ。そう言い聞かせて、今日もありきたりな事をして、過ごします。

当たり前に自分の気になることを正す。人の目を気にせず、信じることをする。 飄々とやってのけたあの子は、とても自然だった。
強制でも、義務でも、点数取りでもないあの子の行動は、心が締め付けられるほど清々しかった。

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