見出し画像

【読書感想】河童

ちょっと面白いものを読んだので、ここで紹介させていただく。江戸庶民の日常を紹介した杉浦日向子著『お江戸でござる』だ。「髪結い」「貸本屋」「屋台」「口入れ屋」「岡っ引き」など、当時の暮らしぶりが手に取るように分かる江戸の指南書である。同書のなかに「河童」という章がある。ツッコミどころが満載だったので、是非お付き合いいただきたい。


甲羅がある河童は、両手が甲羅でつながっているので、片方の手を引っ張ると、そのまま抜けてしまいます。


子どもの頃、紙コップの両側に穴を開け、アイスの棒を差し込んで腕に見立てて人形を作ったことがあるが、その要領か。水筒などの「パーツが分解できて水洗いも簡単!」を彷彿とさせる。そのような構造の方がやはり腕全体を隅々まで洗浄しやすいのであろう。確かに衛生上有益のような気がする。


河童は子どもや女性のお尻が大好きです。・・・厠まできて、くみ取り口から手を伸ばしてお尻を触ります。その時は、その手を切り取ってしまうことです。


これは厠(かわや/トイレ)に斧か何かが常設してあって、それを使って切り取るということだろうか。私にその勇気と覚悟があるか?と聞かれても、即答はできない。しかし、それが江戸の掟であり、善良な市民としての法令遵守(コンプライアンス)であるなら、ヤるしか他はない。


後になって河童は『手を返してください』と謝りに来ます。返してやると、その手を元のようにつないでしまいます。


河童の手を自宅かどこかに保管することが前提だろうか。「後になって」が数日後の話だとすると、何日も河童の手を身近に置かなければならない。紛失・盗難等があると当人が逆上する可能性があり、そのようなリスクは犯したくないので、大切に保管するしか道はなさそうだ。手の接合方法については興味シンシンである。


すると、詫び証文を書いて手形を押して帰っていきます。


意外に律儀。再犯防止の観点からも必要な手続きだった可能性がある。三回の詫び証で河童階級での降格とか。山奥の川に左遷とか。

 
河童に会いたくはない。だが、近くに川はある。読んでおいてよかった。万が一にでも遭遇した場合、対処法は心得ている。河童のセクハラに遭いそうになったら腕を片方からすっぽり抜いてしまうか切り取るかだ。そして、いつの時代も領収書と証文が我が身を守る盾となる。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

527,181件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?