特別ないつもの日

「〜さ、それで…の後輩ちゃんがさ」
「うんうん!」
「〜を自分も…とか言い出したんだけどね」
「うんうん!」
曖昧な返事を返す私
大学から帰ってすぐ。
一人暮らしのアパートにこだまする貴方の声を半分聞きながら慌ただしくあっちこっち
一人暮らしの女学生はすることたくさん。
手を洗ってうがいして
コーヒーメーカーにお水入れてスイッチストーン!
それから脱いだ靴下をとりあえず洗濯カゴにシュート
郵便受けに届いてたハガキの確認。
ベランダの物干し竿には?
「〜とに!相変わらず…は忙しそうだね!………そうなんじゃない?(帰ってすぐが1番忙しそうなんじゃない?)」
「なんてーーー!!??」
ベランダで洗濯を取り込みながらスマホに向かって叫ぶ
案の定スマホはベッドに投げ捨てられている
「なんでもなーいよー!それでねぇ」
彼のトークショーは終わらない
私も私で半分聴いてない
そんなゆったりなような、慌ただしいような時間が私はとても好きだ
「あぃ!洗濯取り込み完了!」
やっと一息落ち着いて、さっきから出来上がっていたコーヒーに口をつける
本日も見事に苦い。また設定忘れてた。
「はーい、お疲」
「うわにがっ!!」
「だからそろそろ好みの味設定しなって言っただろう笑笑」
「もー!!だったらなんで買って来てくれた時に設定してくーんなーいのー!!」
「あははは」
おかしそうに笑う彼。でもちょっと責めちゃったから困ったように笑う彼。
色んな笑い方が好きだ。その色んな笑顔を見たくてついついイタズラな言葉を言う時がある。
「ねぇ。」
「んー?」
「1週間以内に修理依頼します。彼氏様」
甘えたように無理を言ってみた。
「おっ?なんとまぁ1週間かい?それはぁ、お仕事もあるし困ったなぁ。土曜日のご予定は?」
「土曜日ですかぁ?えーとですねぇ、土曜日は今のところフリーですねぇ。ですがお出かけ日和ですね。お家デートには不向きな日みたいですけど。どうなさいますか?」
「えー。もうしょうがないなぁ。仕方ない、金曜日に行って、直して、朝コーヒー飲んでお外にデート行こっか」
「わぁっ!!やったぁ!!」
こうやって困ったようにでも答えてくれる彼が本当に優しくて好き。

こんなことを言いながら
本当はお家デートでもなんでも良かった
なんならいつもおはよう、の挨拶をして
今日はお仕事?おやすみ?って聞くけど
いつもそれすらどっちでも良かった
 
「お仕事だから通話は18時以降かな?ごめんね」
「今日はお休みだから通話してられるよ。なんならお家来るかい?」
いつもの優しい声で言ってるんだろうなって思ったら本当にどっちでも良くて
まるで優しい声に包まれてるみたいで。
でも……ちょっぴりやはり寂しくて
「えへへ!早く帰って来てね!」
「えー会いたい。ねぇねぇ来てよー!」
なんて言ってしまう
そんなこと言っても
「本当に可愛いなぁ。仕方ないね」
そうしてよしよししてくれる彼
 いつからこんなに甘えたさんになったんだろうね?
お淑やかになろうとはしなかったけど、
付き合い始めの乙女ちゃんはいずこやら。

不意に言いたくなりました
「ねぇねぇ?」
「ん?どうしたの?やっぱり都合悪い?」
「ううん、あのね」
「?」
「大好き…」
「あっ…。はは。参ったなぁ。僕も大好きだよ」
 
いつも参ってるのは私の方だ。
冷めたコーヒーはなぜか美味しくなっていた。

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