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作家志望が苦心惨憺して掌編を書いた記録



かきたいもののはなし

自分が書きたい人たちに、初めて他者に向けた言葉で触れるので、不安と期待が胸の中でパンの種のようにふくらんでいます。

わたしがいま書きたいのは、凛のお話です。

四人組アイドルグループの、「仲間感」や互いに対する微妙な心(のひだ?)を描きたいのですけれど、

わたしから見たその中心は、メンバーのひとりである凛だと思います。

凛は、ステージの上で輝きます。

人なつこさがあって、
大人数の場では明るくはきはきと会話をして、よく笑います。

生まれつきの病気があって、
激しく踊ったりすることに少し無理があるのですけれど、
アイドルをやりたい、かけがえのない思いがあって、
いまグループでアイドルをやっています。

今回かくもののはなし

ほかのメンバーの人たちのことも話したいですが、
その前に、彼らのことを書き始めた掌編の、具体的な話に移ります。

掌編の定義がわかりませんが、今回は3000字くらいを目安にしています。

この掌編で書きたかったのは、凛の輝きです。

アイドルをやりたいんだと口にした凛の中に、泉が、きらめくものを見るのです。

泉もグループのメンバーです。

当初のイメージ

当初のイメージでは、

待ち焦がれたライブの数時間前に凛が体調を崩し、
出演できないかもしれないという状況に置かれて、

ベッドの凛と、
バックの夜空と、
凛の眼差しによって一瞬表出した凛のきらめき——ステージの上でかけがえなく輝くという予感が凝縮された一粒の宝石のようなもの
がありました。

けれど他者のご覧に入れる小説の形にととのえようと考えたとき、
ライブ開演のたった数時間前にまだ自宅にいるということはあり得るのかとまず時空が揺らぎました。

構成

物語の構成は、「モチーフ素」というものを基にしました。
N予備校の「ものがたり創作」講座の第4講に紹介されている 5つの対から

  • 禁止・違反

  • 欠如・回復

  • 課題・達成

の 3対を用いました。

モチーフ素 3対の組み合わせ・モチーフ名

上図のような構成です。

それぞれのモチーフが物語の中の何に当たるかを端的に示したものが下の図です。

モチーフ素 3対の組み合わせ・具象

物語の筋をもう少し滑らかに述べます。

駆け出しのアイドルグループに初めてのテレビ出演が決定し、

(禁止)
体の弱い凛は無理はしないでと言われたのに

(違反)
テレビに強い思いがあるゆえに披露する楽曲の練習に少し無理をして、

(欠如)
その結果、体調を崩して、

(課題)
凛以外のメンバーで収録することになりそうになるが、

(達成)
凛の言葉、内なるきらめきがメンバーやマネージャーを動かし、

(回復)
出演が叶う

という筋書きです。

「欠如」「回復」は、
出演できる健康状態が「欠如」し「回復」するという視点です。

「課題」は
「出演できない」ということです。

こうして整理すると、
「欠如」「課題」と
「達成」「回復」がやや重複しているように見えますね……。

それぞれ一つにまとめてもよかったかもしれません。

実態

先述の筋書きに沿って、途中まで書いたものの、

ここからどうなれば、この掌編のハイライトとして描きたい「達成」に当たるシーンにゆき着くのか、分からなくなっています。どうしましょう。

そのシーンにつなげる展開として、

リハーサル後に体調を崩して本番の出演が危ぶまれるか、

本番終了後に体調を崩して今後の活動に影が差すか、

と、収録本番のあたりをこまごまと考えています。

前者ではリハーサルと本番との間に「達成」のシーンが入るので、居る場所はテレビ局のスタジオか、楽屋か、思い切って病院に担ぎ込まれて病室か、というぐあいで、凛の部屋にはなりにくいなと唸ります。

凛の部屋であればこそ、凛のきらめきを目にした泉が「この人をここにとじこめていてはいけない」「観衆の前に、ステージの上に引っ張り出さなきゃならない」という思いに突かれるのだと思っています。

後者では、「今後の活動」は少し大きすぎるかなという感覚があります。
当初、数時間後の出演を懸案としていたので、
出演がともかくも終わってしまって、それから今後の、もしかすると何年間にも関わることを決めるという展開は、しっくりこない感じです。

そもそも、「出演できないのでは」「いや俺は出るんだ」というような会話がどうなれば発生するのかが見えていなくて、

リハーサルの、スタッフ環視の中で派手に倒れたりしたら、俄かにそういう場面になるでしょうが、

凛はそんなヘマはしないと思います。

些細な不調は隠しおおせてしまいます。

融通を利かせて、初めての、強い思いのあるテレビ出演だから隠し切れなかったとしても、

倒れるなんて大事件はあとにとっておきたいな、なんて甘い気持ちが顔を出します。

倒れずに隣のメンバーが異変に気付くというのは凛にかぎって考えにくい……。

堂々巡りの八方塞がりですねえ。


今試しに書いたところでは、もう本番が終わってしまったので、

このあとは帰りの車か帰宅した寮か、、

車では後部座席に3人掛けるので身体の距離が近くなってさすがに隣の人が気付くかな……?

とすると気付くのはマキになります。マキもメンバーです。

どう感じてどう声を掛ける……?

マキはまだ中学生で、反抗期というか幼いところがあって、
でも子役……すごく小さい頃から活動をしているからかしっかりしたところもあって……


会話を書こうとして毎回初めに引っかかるのが、コミュ力の高低です。

わたしが話すように書いてしまうとそれはわたしであってマキではなく、

かといってない袖は振れず、
わたしはわたしに書けるものを書くしかなく、

全員がわたし並みのコミュ力である世界を書きたいわけではない、というか、ソツなく会話してほしい人……がいるというか、
凛はわたしより開放的な話し方をするし、
山堂(メンバーです)はさらさらと話すし、
マキもわたしみたいにもごもごとは話さないし……

でも彼らの話もわたしが書くんですねー。

わたしは開放的にもさらさらとも話せないのにそんなことが可能なんでしょうかー。

どなたかと協力して書けば、自分に書けないものも作品に表せる……けれど、まずはひとりで書いているから、やはりわたしが書くしかないですね。書きますよ。


マキが凛に対して敬語を使うのかどうかも分からないし、

車酔い? と思ったときにどういう感情になってどういうふうに声を掛けるのかよく分からないんですけど……。

凛はきっと、「大丈夫?」と心配されたことが、幾度となくあると思う

大丈夫だよと笑顔を返して、
あるいは平然と頷いたことがあると思う。

自分の病気のことを重苦しくは捉えていないけれど、
無自覚ではなく、
瞼を伏せて、雲行きを推し量ることもあるのではないかと思う。


体調が悪くて歩けない凛が山堂の肩を借りて歩くときに、それでも全面的に寄りかかるのではなく自分でも歩いていてほしくて、
それにそもそも肩を借りて歩いている姿を(わたしが生身で)見たことがなく、
この借り方は変じゃないか?とぐるぐる考えています。うむむ。


このときどこにいたんだろう?

やっぱり一緒にリビングにいるんじゃないかな?


なんだか寮に戻ってきて、そこで動けなくなって、当初のイメージのシーンに向かいそうでちょっと興奮したのですが、

ここにきて、やっぱりそうはならないのではないかという感じが漂っています。


凛が薬を飲んでベッドに入ったあと、泉が様子を見に行く気がしたんですけれど、

なんだかその周辺がよく見えません。

みんなで若干介抱したあと、
みんなどこにいたんでしょうか?
どのくらいの時間が経ったときでしょうか。

泉は積極的に行動することは少ないですが、どうして一人でふいに凛の部屋を訪ねたりするんでしょう。

普段と様子の違う凛の部屋を。

違うから?

たぶんそんなに親しくはなっていないんじゃないかなと思うのですが、

これまで体調が悪くて思うように動けない人を目の当たりにしたことがなかったんじゃないかと思います、

それを目の当たりにして、

まだ全快せず同じ屋根の下に休んでいて、

初めてのテレビ出演の余韻も消えてはいないでしょうから、

一種の興奮状態にあるのかも、、

それで、部屋も隣だし、ちょっと様子を見てみようかなと、言うなれば浮き足立った気持ちで部屋のドアをノックしてしまったのかもしれません。

薬を飲むのを見届けて、

ベッドに寝かせて?

たぶんほかのことをさあしようっていうふうに空気が切り換わりはしない……

ほかに何かすることがあるのか……彼らの生活として今やりたいこととかあるのか……

仕事忙しいのか?
初めてテレビに出るってどのくらいの知名度? 仕事増えてきた? でもテレビの直後に何かしなきゃいけないような多忙ではないだろう……

これからの時間は休みだろう……

マネージャーはそうでもないか

あの場の判断としてマネージャーも招き入れたけど、

たぶん普段よりも回復に時間がかかるだろうし、

一旦帰る?

高橋さんを長居させられないから、それを告げに?

それを聞いて凛は、出ていって話をする? てか何を話すの?

それをなんで泉が……? マキじゃない?


なんか変な感じがします。

流れてしまって混乱するというか。

……。

おわりに

いちおうまとまりました。

いえ、
ここで途絶えてもよさそう
とわたしが思っただけで、
ぜんぜんまとまっていないかもしれません。

が、いちおう、それをひとつの作品として、ネットの海に上梓しました。

この記事を公開しようと思ったのは、
書く仲間を求める気持ちと、
学ぶ場がないぶん、なるたけ自分の書く行為に他者の目を引き込もう(制作過程を相対化しよう)という考えからです。

「実態」の項など、こんなひとりごとをどんな顔して公開するのかしらと思わなくもなかったのですが、

創作活動のなかのそういう部分を、どなたかと共感してみたいです。


今回書いた物語はこちらです。

チーズのように穴だらけの小説です。


長々とおつきあいくださりありがとうございました。


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