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【短編小説】通話越しの君、数話だけの日々


僕の好きな君には恋人がいる。
僕は君と付き合うことはできなかった。
そんなこと分かってはいた。
君と電話で話した大好きだった夜は、
悲しみに溢れた。

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高校二年生の秋。僕には好きな人がいた。
君とは同じ高校で、君は隣のクラスで男女問わず人気者だった。

お昼休みになると君の周りにはたくさんの人が集まり、笑顔で溢れるような空間が僕には眩しすぎた。羨ましかった。

夕暮れ 川沿い。帰り道。
東から昇ってきた太陽は西へと沈む。
律儀とも言えるその繰り返しは
僕にとって毎日の楽しみでもある。


夜になれば君と電話ができるからだ。

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ある日の夜。

心の沈黙とは裏腹に、僕の部屋までゲラゲラ笑い声を届けるリビングのテレビ。
一人、部屋にいる僕にとってはとても苛立たしいものだった。

そんな時、スマホの画面にLINEの通知が見えた。
君からだった。

つい五分前の雷雨のような苛立ちが、嘘かのように晴れた。

「電話、してもいい?」


嬉しかった。
理由は分からない。理由なんてどうでもよかった。ただただ、喜びに浸る。

話は恋人との悩み。君の事が好きとはいえ、
正直、好きな人の恋人との悩みを聞くのはどこかしら辛いものではあったが、
僕はそれを聞いてあげることしか出来なかった。
けれど、一つだけ。たった一つだけ、
僕の心を潤した君の笑顔。それだけで幸せだった。


そうして、僕らは頻繁に夜になると
電話をするようになり、
いつしかその電話は日常へ。


恋人の存在が故、
プライベートでは会えないけれど、
そんな悲しみや寂しさも、
夜になれば忘れられる。
忘れさせてくれる。
そんな、大切な時間。
いつしか「好き」という言葉も
お互いに心地よく感じていた。
ふと、我に返ると恥ずかしかったりもしたけれど。
今思うと、かけがえのないものでもあった。


それが、永遠じゃないと知る余地もないまま。


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季節は過ぎ行き、コートなしに歩くこともできなくなった冬の空。
遠く、遠くに見えるあの日夕暮れは、
いつしか切なさを感じるようになり、
離れれば離れるほど、
君と僕との心の距離も遠くに感じてしまった。

そんな時、彼への罪悪感から君は
僕の元から離れた。

大好きだった夜の時間。

大切だったあなたの存在。

大好きだった君の笑顔。

大切だったあなたの温もり


悲しみだけが残る部屋の片隅。


僕も、君も。お互い
これからもずっと共にこうして笑顔でいると
あの頃、なにも疑うこともなく

ただ そう思っていた。




作:あめつぶ。

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