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製作日記 鶏頭骨キャンドル①

 最近、フリースクールで皆がアクセサリーを作り始めた。例年手の空いたものが集って思い思いにアクセサリーを作り、皆で審査をするのだという。「対象」は10歳前後の女子。これはフリースクール内でアクセサリーを着けそうなのが小学校高学年から中学校前半のGirlsしかいないためだ。そのため、彼女らに「これは売れない」と判断されたりすると皆落ち込む。
 基本的に、僕たち中高生や大人が「これはいい」と思うものは論外。赤やピンクをたっぷりと使ったものにはよくGOサインが出る。しかしながら幼稚すぎるものも駄目。
 ことに僕はこのイベントに参加するのは初めてで、そこまで上手に作ることは出来ない。こうなっては皆とは趣向を変え、「おいニフ~。ぜんっぜんだめじゃないか」などと云われないためにも皆の度肝を抜くような作品を―過去それをやったものは皆挫折して以後可愛らしいアクセサリーを作るのに熱を上げるという―作ってやろうじゃないか。
 そう考えている中でふと思いついたのがキャンドル。昔そういえば作ったなと思い、そんな中で皆の度肝を抜くような形を考えていると、家にある鶏の頭骨のことを思い出した。
 それは、僕がハクビシンやラットを解剖したように、そこが開催している実習に参加して貰ってきたものだった。既に絞められている鶏の頭を煮沸して、ひたすら肉をほじくり出すという実習だった。当時、僕は小学3年生。この作業には骨が折れた。1本どころではなく2、3本折ってしまうような勢いだったが。
 そんなこんなで完成した鶏の頭骨も、当然使う機会などなく4,5年間ずっと棚の奥深くに眠っていた。そんなものが、龍角散たちの言葉を受けて存在を顕した。

頭骨。既に型どりのため固められている

 さっそく、家に帰って取り出す。4年の月日の内に何カ所か壊れてしまっている部分があるが、それでも使える。翌日、綿・ラップ・油粘土など買って帰る。もう6年以上お世話になっている習い事の造形の先生曰く、綿を頭骨の中に入れて形を固定し、ラップで包むのが良いとのこと。そうすれば油粘土で型を取ってもくずれないとか。
 そうして粘土で固めて3日。別個に注文した蝋が家に到着し、いよいよ今日蝋燭造りに挑戦することになった。蝋の入った袋を開けて、器に空ける。その上で、鶏の周りを依然として固めている粘土の塊を取り除かなければならない。
 当初の僕は、時間が経てば油粘土も乾いて固まると思っていた。しかし、現状を見ろ。触ってみると「ぷにぷに」とまではいかないが、柔らかい。こんなもので大丈夫なのか。
 糸で以て粘土を切り出して行く。だが、はたしてこれで型が取れるのか。松原始の「カラスと京都」という本を思い出した。数年間放置されていた「狸の骨が入ったダンボール箱」を動かしたとき、「たぷん」といったとかなんとか……
 もしも3日間放置した鶏の骨がそうなっていたらどうしよう。粘土どころではなく骨までも切り裂いてしまうのではないか。そんな心配を余所に、糸を動かしていく。
 手が震えないうちにさっさと切ってしまった方が骨をぬくときになって取り出しやすくなるからだ。とはいえ、思ったよりも深く糸は埋まっていく。このぶんでは、ひょっとすると骨まで食い込んでしまっているのではないか?
 そう危惧しながらも手は止めない。一部どうしても入っていかないところにぶち当たったため、そこが骨だと判断。両手で持って、ゆっくりと型を外していく。ぱっくりと割れた型の中からは、思った以上に綺麗な頭骨が姿を現した。

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