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読書記録-緯度を測った男たち

 2023/08/02 本文中の内容がまったく読書と「緯度を測った男たち」に触れていないことがわかったので、加筆修正をしました。


 少し前、僕がまだ中学校に通っていた頃の話。夏休みを迎えて浮かれていた僕は、ついつい自由研究のことを忘れ去っていた。そうして夏休みも半分になった頃、思い出して慌てはじめた。どうしよう、まだなにも終わっていないと。幸い、他の課題はほぼ全て終えていたし、なにも進んでいない自由研究にしたところで、テーマぐらいは作っていた。
 「緯度」。経度と共に、地球の大きさを測るために作られたものだ。その年の5月、僕は「大河への道」という映画を見て、それを知った。伊能忠敬とその弟子が作った「大日本沿海輿地全図」。それを作るのだって、緯度経度を用いている。
 そんなことを知った僕は、ふと「家の緯度・経度を知りたい」と思った。そんなもの、この御時世では調べればすぐ出てくる。が、僕は自分で調べてみたいと思った。
 丁度手元には、数日前に書店で興味を持って購入した「緯度を測った男たち」という本があった。フランスから派遣された測量隊が、「緯度零度」の南米にて地球の大きさを測る物語である。
 あまり想像できないのだが、昔は地球が円だとは思われてはいなかった。それは近世になっても同じで、地球が正円を描いているのか楕円形であるのかが判然としなかったという。そんな中、フランスと南米とでそれぞれ緯度1度を測り、北半球と南半球とで緯度1度の大きさに差はないか(この時ほぼ平行に北極にも測量隊が送られており、この3点で誤差が出れば地球は正球体ではなく楕円体であるとわかる)を調査するために測量隊が送られる。これはそのための道中の物語であり、あらかじめ測量関係について多少の知識を持っていたため問題なく読めた。しかし、もしやり直せるのであれば南アメリカについてもう少し調べてから読みたかった。
 早速、6月の下旬頃から準備を始めることにした。図書館でありったけの、それに関係する本を仕入れ、三鷹にある国立天文台にも電話をかけて問い合わせた。緯度経度を計るための六分儀は、さまざまな書籍を漁り、何日も図書館にも通って漸く、海上保安庁のホームページにそれらしきものを見つけた。そうしていよいよ、夏休みは終了の3日程前。漸く緯度・経度の算出方法を発見し、いざ!と意気込んで自作の六分儀を空へと向け、北極星を探した。
 ……ない……北極星が、見当たらない。空はすがすがしいほど晴れ渡っている。おかしい。空には幾つか星が輝いているが、それらはほとんどが南側。ごく少数の、北に見える星だって思っていたものとは全然違う。おそらくは、小学生の頃さんざん探した「冬の大三角」だろう。
 結局その日は星を見つけることが出来ず、その後夏休みが終わって自由研究発表をする日まで、ひたすら探し続けたものの、見つかることはなかった。そうやってなにか釈然としないものを抱えたまま、僕の自由研究は頓挫した。
 おそらくは、都会であったことが失敗の原因なのだろう。家はそこまで都心に近くなく、大都市といえるものも周辺に存在しないため、てっきり見ることが出来ると思って油断していた。これがもし、奥多摩の夜の珊瑚荘や少し前に行った伊豆大島、飛島であったならば、北極星を見つけられたのかもしれない。まあ、元々の目的が「家の緯度・経度を知ること」のため、もしそうすることができたとしても、実行はしなかっただろう。

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