見出し画像

製作日記 鶏頭骨キャンドル②

 その綺麗な頭骨をそっと粘土の型から引き出す。そうして間髪をいれず、予め用意していた材料を使って蝋燭を作る準備を調える。もっとも、これを行った時点で未だ準備は整っていなかった。いそいで蝋燭の芯(固形の蝋とともに購入)を適当な長さに切り、型の天辺に開けた穴に差し込む。

 また、蝋が直接芯にかかってはならないとも書いてあったため、少し離れたところに第二の穴を開けた。もうこれだけで、どこかにゆがみが出ていないか心配になる。流石に3日以上も外気に晒されて固められていたのだ。大丈夫だと思いたい。
 そうしてかたちが完全に整ったことを見届け、急いでいらない鍋などを利用した蝋燭造りが始まる。いよいよ蝋を溶かすのだ。とはいえ、蝋の分量などは勘で測るしかないし、よくよく考えればこんなに小さい穴に溶けた蝋を流し込めるはずがない。改良しなければ。
 さっそく穴を広げようとするのだが、すでに左右に分けたものをそれぞれ再度合体してしまっていた。もう一度剥がすとなるとおそらく型がくずれてしまう。だから、そうすることはない。
 ひょっとすると型が大きく変わってしまうかも知れないが、糸で以て必死に穴を開ける。あまり力を込めるとつぶれてしまうため、少しずつ、少しずつ穴を広げていく。
 そうしてようやく穴はあいた。そうなれば、あとは蝋を流し込むだけ。袋に入った蝋を1つかみ取りだし、フライパン(卵焼き用のフライパン)にのせる。そしてそれを巨大なフライパン(26センチフライパン)の中に入れる。そして、大きい方のフライパンに丁度良いぐらいに水を入れる。

 こうして蝋を焦がすことなく―そもそも焦げるのだろうか―熱することが出来るのだ。とはいえ、蝋を溶かす経験がこれまであったわけではない。かなりな不安を抱えていたため、一先ずは様子見ということで強火に。ぐらぐらと沸騰させて溶けるのを少しでも早くしようとした。
 けれど、知人に聞いてもそういったことをしろとは勧められない。それもそうだ。うまい話には裏がある。よくよく考えてみると、沸騰させるのにはなにか拙い理由があるはずだ。
 そういえば、母が昔チョコレートを作った際に「水が入ってしまって上手く出来なかった」と言っていた。その理由は「固まらない」からだと。ということは、蝋も水が入ってしまっては上手く固まらないのではないだろうか。
 そういったことに気がつき、急いで火を止める。後は余熱で何とかなりそうだ。しばらく本を読みながらちらちらと目線を送る。そして、しばらくすると底の方に見えていた蝋の塊らしきものが消えてなくなり、フライパンの中にあるものは液体のみとなった。

溶け出してきた蝋の塊

 さて。その液体を、頭骨型に注いでいく。だが先ほど穴を開けたときに何らかの悪影響が出たのか、それともずっとそのままだったのか。粘土の塊の下の方から、なにやら白っぽい液体が流れ出てきた。もちろんそれは蝋だが、一部粘土が混ざってしまっているようだ。
 どうしよう。最初はすぐに蝋が固まって止まるものだと思っていたのだが、流れ出す蝋は止まってくれない。いまにも机からしたたり落ちてしまう、というところまで流れ続けて、ようやく止まった。
 さて。原因はなんだろうか。蝋が冷めて固まった頃合いで取り上げてみたのだが、あちこちに亀裂が入っているのがわかった。型どりの際にひび割れたのか、頭骨を取り出したり穴を開けたりしたときにできたのかはわからない。その最下段に近いところから漏れ出していたようだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?