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フリースクール活動日記 2024/03/21-西荻窪

 今回は旧教室のあった場所を訪れてみたいという皆の欲望が叶うはこびとなった。けれどもそれだけでは面白くない。ついでにこれまで楽しく利用した公園などをも巡ることになる。今は懐かしいどんぐり公園、いもむし公園など(これらはあくまで僕たちの付けた別称であるため、こんな名前の公園は近くにはない)…これらを巡って遊び、最後に教室跡を見て西荻窪駅で解散、というのが当日の運びとなった。
 8時ごろにあったという地震の影響かいくつかの電車が遅れていたようだ。若干遅れて着くとそこに警察官が立っているのを目撃した。また、か。前回と場所は違うもののそれでも思わず目を見開いてしまう。もちろん、駅も違えば人も違う。時間だって違うのに。気付かぬふりをしてずんずんと進んだ後、ちらりとそちらに目線を向けておもむろに方向を変え、出口の方へと向かう。期待していたのだがその結果は…残念なことに、芳しくはなかった。職質してくれないというのはなかなか応えるものがある。こんな時のために「谷崎潤一郎マゾヒズム小説集」と「ラヴクラフト全集」を持ち歩いているというのに(本当はとある表紙の「ドグラ・マグラ」が一番良いのだろうが、残念なことにあれを店で購入する勇気は僕にはない)。
 そのうちソースが自転車をこいでやってきて、全員が集合新発となった。末広通りをしばらく東へ向かう。「末広」と付くのであれば道の長さは八㎞で道幅も八.八八尺であるなどと想像していたのだが、よく考えてみればそんなことはないだろう。
 やがて道を左折する。西荻窪方向からならばよく行くのだが、吉祥寺から旧教室方面に向かうのは今回が初めてあまり通ることのない道であったため、どこで曲がればいいのかわからずに途方に暮れることとなった。だが、こちらにはイマンモがいる!いくら方向音痴と自称しても、先日娘のお祝いで酔って何かしらの角に足をぶつけて小指を骨折していようとも、Googleマップというものがあるのだから。
 その結果道を進みすぎていたことが判明し、少しだけ引き返すことに。そうしてひたすら北上する。かなり長い一本道が続くためか皆次第に飽きたらしく付近の家の観察をするようになった。この家はとても多く木が生えているから落ち着く、このお屋敷に住んでみたいなどと他愛もない話から自分の家の近所にある豪邸についての話まで幅広く話を回した。そのうちにまた曲がり角。何度も何度も右折左折。本当にこの道で正しいのかと不安に思い始めたころ突然開けた大通りに出た。目の前には大きな校舎、東京女子大学とある。ここで右へ曲がり、外周を回っていくとついに最初の目的地である善福寺公園が見えてくる…のだが。いつまでたっても後続組がやってこないのだ。まあ、しかたがない。なんといったってイマンモは骨折しているのだから。それも足を。先頭に立っていたトラたちの声掛けで皆いったん止まり、大学の石垣に座って休憩をする。
 こういうときに、自転車は不便だ。止めるだけでも場所をとるのに加えてここは傾斜はあまり急でないにしろ坂道。わざわざ家からこいできたソースには脱帽せざるをえない。
 皆と合流、坂道を下って善福寺公園へと入った。これまでは下の池のみで遊んでいたのだが、なぜか今回はそこを素通り。一路上の池へと進んでゆく。ここから先は僕の行ったことのないエリア。隙あらば池に突き落とそうとしてくる面子に気を配りつつ少しずつ少しずつ安全な場所へと向かう。
 そこで少し早めの昼食を摂る。時計を見ればまだ11時台、12時にすらなっていないのだ。そうはいっても小腹も空いている。皆早めに弁当を食べ終わったためイマンモに次の目的地へ向かおうと呼びかけるもそれはきっぱりと断られてしまった。どうやらここで、遅れてくることとなるCOTAさん、そしていろいろな出来事が重なり深い悲しみの淵に沈んでいた龍角散を待つのだという。彼には会ったのは先週金曜日が最後。久しぶりに顔を見ることができると息を巻いていると、不意にイマンモがスマホを耳にあてた。誰かから電話がかかってきたようだ。口から漏れ出る断片をつなぎ合わせた結果、どうやら龍角散がすぐ近くへときているようだ。どうやら、下の池まで。それを聞いて皆は湖畔に殺到し、対岸に向かってしきりと目を凝らし始める。誰が一番に龍角散を見つけられるか、などという遊びをしているかのよう。

 そのうちに誰かが叫び声をあげ、ある一点を指さした。小さくけれども濃い色の点が急速に近づいてきている。その顔が識別できる距離まで迫ったとき、χαοσとカッパくんが彼に向かって走り出す。そして厚く抱擁し、3人が一つ所まで集まるとまた再びこちらへ向かって駆けてくる。固く、肩を組んで。
 彼との合流を皆が喜んでいるころ。反対側からはCOTAさんがひっそりとやってきた。合流が済んだのだから、もうこの公園には用はない。それでも何人かは名残惜し気に当たりを駆けずり回っていたが、少しも経てば皆一斉に荷物を手に公園から引き払った。

喜びのあまり高飛びをする…誰か

 さて。この善福寺公園を見ていては過ぎ去った懐かしい日を思い起こす。誰かが付近の竹林で筍を掘った思い出を口にすると、また別のものはここで仮面ライダー失踪事件という陰謀が謀られたことを思い出す。また別のものはよくカワセミがあたりにいたことを懐かしみ、昔は「超人」などと呼ばれていたカッパくんがひどく珍しいブランコを一人で作ってこいでいたことを話して口を緩めた。懐かしいこの公園を抜けると次に見えるのは善福寺川。この次にどこに行くかはあまり決まっていなかったのだが、ここで正式にどんぐり公園を目的地にする旨皆に周知された。だが、西荻窪の駅からならばいざ知らずこちら側からあの公園に向かうのはあまり前例がない。途中までならば善福寺川に沿って進めばよいが、そこから先どこで離れるかがわからないのだ。自らの勘を頼りに進んでゆく。自然とイマンモの周りに集うグループ、先へ先へと進むグループとの二つに分かれる。僕はヨッシー、ソースとともに先頭に立っていたのだが、そこで信じられないものを目にすることとなる。それを正面から直視した僕たちは、そのあまりの不自然さ、不気味さに思わず逃げ出してしまうこととなる。何故…なぜ、こんなところに男子トイレがあるのか!

突如として出現した男子トイレ

 道端に突如として現れた男子トイレのマーク。おまけにその直下には排水溝が顔を出しており、まるでここで用を足せと言わんばかり。このマークはいったい誰によってつけられたのか。そのあまりに場違いで不気味なしるしに恐れおののいたのか皆、つとめて足を速く動かしその場を離れようとしていた。

なお、後にグーグルマップで調べたところ10年ほど前の画像には薄れてはいるものの赤い丸、赤い斜め線が読み取れた。このことからも本来は立ち入り禁止のマークではなかったかと推測している。もっとも、なぜそれがこんなところにあるのか、またなぜ10年間も交換されずに残っているのかなどと謎は尽きることがない。

 その後散々にさまよった挙句ようやく到着したのが「どんぐり公園」こと、正式名称井荻公園。高低差の激しいこの公園は、缶蹴りやかくれんぼなどに絶大な人気を集めていたのだが……
 突如襲来する小学生。それだけならば問題もなかったが、加えて1クラス20人ほどがやって来るとなると看過できない事態になってくる。彼らに対してこちらは10名ほど。勢力争いに負けた僕たちはそこを後にしてまたあたりを彷徨うこととなる。

このすぐあと、僕たちはここを後にすることとなる……

 その後「いもむし公園」という俗称を持つ杉並区立関根文化公園まで足を運ぶ。もはや西荻窪の拠点を失った僕たちは単なる流浪の民と化していた。よってここで再び再起を図ろうと考えたのだが、あっという間にその策も机上の空論と化し空中分解する羽目になる。
 龍角散、ドクロ仮面にカッパくん、χαοσなどがどんぐり公園の失陥に不満を抱き再奪取しようと旅立ったのだ。そんな彼らを止めようと皆で後を追ったのだが、時計を見ればもういい時間。すでに解散時刻が来てしまっていた。どこの公園にも長居できずにひたすら歩き続けるのみ。拠点を失えばどうなってしまうのか如実に表した結果となってしまった。最後に、旧教室跡を見て解散。

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