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Ep22.ラジオ出演〜絶好調の路上ライブ 函館編2

2001.4.1

 函館駅が夜間も開いていることがわかったので早速ホテルをチェックアウトすることにした。フロントに降りようとしたらエレベーターが故障中。この大荷物で階段使えって!?最後まで安定の駄目ホテルぶりだ。仕方ない、階段で降りよう。

 非常口の階段を大荷物抱えて下っていると信じられないものを発見して俺は目を疑った。階段途中に何やら黒い物体が。近づいてよく見てみるとそれはウンコだった。一体なぜ?誰がこんなところに?20年経ってこの文章をリメイクしている今もこの件については謎のままだ。

 ラジオ出演の午後6時まではだいぶ時間がある。五稜郭町に出て演奏しつつ路上ライブの場所を決めよう。実は今夜の路上ライブは俺のことをFMいるかに紹介してくれた恩人MIYUさんが、200kmも離れた室蘭からはるばる見に来てくれる約束だ。なるべくベストな環境で聞いてもらいたい。

 色々演奏してみて北洋銀行前なら記念碑を背にして建物に向かって歌うと反響が得られ演奏しやすかった。寒さはあるが音はここがベストだろう。確実にこの場所をゲットできる保証はないが運を天に任せてみよう。

 夕方5時過ぎ余裕を持ってFMいるかに到着。本日のDJオヤマさんを紹介される。美人だけど気さくで話しやすい方なので安心した。待ち時間にギターの音合わせをしていたらADのノグチさんが話しかけてくれた。バイオリンをされてるそうで音楽に興味があるらしい。俺のCDを買ってくれると言う。「無料で差し上げますよ」と言ったけどちゃんと1500円を払って下さった。感謝。

 それからスタジオでマイクのバランスを取って貰いいよいよ本番突入。旅の話から何故か神戸の名産の話しになり(笑)函館の皆さんに明石焼きを紹介できて良かった。番組内でDON'T GO AWAY を生で披露、「1分半で収めて」と言われてたので難しいモノもあったが(結構展開する歌なので)何とかこなせた。全体的に和やかなムードで無事番組終了。

 軽く食事をしてから急いで五稜郭前へ向かうと、良かった、北洋銀行前はまだ空いていた。早速ギターケースを開けチラシやCD、ぬいぐるみを置いて場所を作った。

 午後7時演奏開始。何曲か演奏していると男の子2人が聞いてくれた。札幌から旅行に来ていて彼等も地元で演奏しているらしい。そうしているウチに女の子が一人。20歳のナツミちゃん、DON'T GO AWAYがすごく気に入ってくれたそうだ。つづいて14歳のモモちゃんとだんだん人が集まる。

 しばらくしてMIYUさんご夫妻が到着して合流。さらに人がたち止まってくれ一時20人くらいになるがその姿に俺は感動した。最初に止まってくれた子たちが後に止まってくれた人たちにチラシを配ってくれて、いつの間にか和気あいあいとしたコミュニティが出来上がっていた。

 旅の初めは本当に誰一人聞いてくれなかったんだよな。。。倉敷では自信満々の青年から「人だかりができると鬱陶しい」と聞かされカチンと来ていた。そうか、人だかりっていうのはこうして出来ていくのか。俺が心を開いて音を奏で、その音を受け取ってくれた子も心を開いてくれ、それを次の子に回していく。そうやって人と人が繋がっていくんだなとようやく理解ができた。

 ひとしきり演奏が終わったところでナツミちゃんは彼氏が迎えに来て帰る事に。でも「歌のお礼に」と缶コーヒーを買ってきてくれた。嬉しい。CDを勧めたら「あと100円しか持ってない」って(笑)そんな極貧状態でコーヒーを買ってくれたとは・・・思わずCDをただであげてしまった。

 中学生のモモちゃんは「もう帰らなきゃ」と言いつつ何台もバスを見送って聞いてくれていたが、流石に時間も遅くなってきた。名残惜しそうだったが、CDをあげたらとても喜んでくれ笑顔で帰っていった。だって20歳のナツミちゃんにただであげて14歳のモモちゃんからお金は取れない。

 最後はMIYUさん夫妻だけが残り改めて遠路聞きにくれたお礼を述べ2人の為だけに演奏した。どんどん冷え込みがキツくなってきて数曲だけだったがとても喜んでもらえた。MIYUさんには本当お世話になった。俺が女の子2人にタダでCDあげてるのを見て「あの子達の分」と2人CD代まで払ってくれた。その心遣いに感動。恐縮しつつもご厚意に甘えさせていただいた。

 その後MIYUさんの車で函館駅まで送って貰い駅前で2人と別れを惜しみつつ再開を約束した。その後は暖房の効いた函館駅で休むことに。ここは実に快適だった。改札の奥に自動ドアがあるのだが、夜行列車が発着する時間以外は閉まっていて全く風も入ってこない。今まで野宿した場所の中では最高の環境だった。

 辺りは夜行を待つ客やホームレスたちで賑わっていたが寝るスペースは確保できた。初めてのラジオ出演や絶好調だった路上ライブのことを思い返すと興奮して中々寝付けなかったが、暖かい駅舎で寝袋にくるまり気持ちよく俺は眠りに落ちていった。

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