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ビギナー経営:小さい会社の会計(3)

あめにきのオフィスのnoteでは、スタッフが仕事をしてきたうえで気がついたことを、書いていきます。
12月は、月曜日に書いていきます。

前回に引き続き、小さい会社の会計。

会社の実態に合わせた計算書類(決算書)を作ると、税務の方針に合わないということが起きます。
このときに、税務署は、「まず実態に合わせた計算書類を作ってください。その後で、税務署向けに修正したものを作って提出してください」と言っていますが、それに従っている中小企業は少ないです。

この理由は、多くの中小企業で、決算書の時点で、税務に合わせるからです。
中小企業や個人事業主が計算書類を作る理由が、「税務署に出すから」になっているからです。だから、税務署が求める方向(公平な課税)で計算書類を作ることになります。そうすると何が起きるかと言えば、その計算書類を経営判断に生かせないことになります。

特に問題になるのは、減価償却について、実態よりも長い期間を税務会計で設定している場合です。
店舗用の建物の場合によく起こります。店舗は、頻繁に改装・建替えをすることが多く、税務が決める年数まで建物を使い切る、ということがないことになります。
例えば1000万円の建物を5年間使う予定となると、毎年の減価償却費は200万円になります。
建物取得時点で、1000万円の現金減少と固定資産増加。翌年は200万円の固定資産減少と(減価償却費計上のため)利益減。5年経過後には固定資産はゼロになり利益は累計で1000万円減。
これが、会社の実態を表した毎年の処理です。

ところが、税務上、木造建物の減価償却期間は20年とされています。
すると、毎年の減価償却費は50万円となります。
これをもとに決算すると、毎年、50万円の固定資産減少と(減価償却費計上のため)利益減。
利益から差し引く減価償却費は、本来200万円のはずなのに、この場合には50万円しか差し引いていません。
つまり、差額の150万円分、利益が「水増し」されていることになります。

これを見ると、まず、税務会計が減価償却期間を長めに取る理由がわかります。税収確保です。減価償却費計上による利益の減少を抑えて、利益を多めに出そうとしているわけです。
そして次に、この税務会計をそのまま企業会計に使うことが、危険だということもわかります。実態よりも利益が多めに出ているわけですから、経営判断にも影響が出ます。

なお、この場合については、このままこの建物を20年間使い続けたのであれば、単なる利益の先取りにすぎません。(それも困った話ですが)。
この場合は、6年目以後はやらないはずだった減価償却を、税務の基準に合わせることで20年間やり通すというわけです。ですから、最終的にはつじつまが合うことになります。
問題は、5年間でこの建物を使うのをやめたときです。5年間で移転・改築・閉店などする、というのは、業種にもよりますが、それほど珍しい話ではありません。
そうなると、先取りした利益を埋めあわせる場面がなくなります。

個人事業主の場合は特に、「法人税申告表別表4」のような加算減算を行いません。そのため、税務会計をそのまま決算書として使うことになります。
これも、企業会計と同様に、実態に合わせた経費計算を行った後に、損益計算書での「繰戻額等・繰入額等」で税務会計に合わせて修正する、という方法もあるのですが、ほとんどの場合は、経費の段階で税務会計に合わせています。

次回に続きます。

*個人事業主や法人成り会社あたりの規模の経営者の方は、労務・広告・法務・経理、さまざまなサポートについて迷うこともあると思います。
ぜひ、「あめにきのオフィス」にご相談ください。(このnoteを書く最大の目的は、もちろん広告です。)

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