映画感想『ルックバック』

建物の店頭広告で見かけたポスターで面白そうだな、と思って気になっていた作品。数分だけツイッターでネタバレ無し感想を見て、肩透かしでなさそうとだけ確認して早速みてきた。

始まりかたが良いなーと最初に思いました。ホントに面白いかな…とかいう不安を少なからず持っていたのを、割と力業で引き込んでくれて、上映中ずっと描写に集中できた感覚。こういうのも絵・画の力だな、と知りました。そんで描写が始まるわけですが、ほぼ止め画なのに見続けてしまう自分を「あぁ、自分はこの作品好きだ、この作品はなるべくして自分を選んだのだ」となりました。こうして"ふり返る"と僕めっちゃビビりやん、そしてそれを適宜なだめてくれる技術。やっぱプロってすげぇや。
この作品は漫画を書く小学生2人のお話で、自分も小学生で色々活動的だったなーとか、大学でやったデッサン楽しかったなー今でも喫茶店とか描くけど全然量になってないなーとか、意識無意識ごちゃまぜで記憶が湧いてきてもう泣きそうになってしまう。僕は全く努力や勉強する才能がないので、主人公達にも現実で活躍なさっているクリエイターさん達に対しどこか失礼と想いながら…。勝手に美しい話に自分を同化させてしまう癖は本当に醜いんだけれども止められない。とにかく描け→「はい…(ズシーン)」
成長していっても、別に2人の関係が拗れないのが良い。確かに気まずめの分かれ方をしたしガキらしい口答えもしちゃってたけど、お互いが無ければならない存在であることは無意識レベルでお互いわかってるんじゃないかな。藤田は自認が難しいだろうけど。
不思議な境界を越えてタイトル回収。んで世界がまた動く、いや動いているのは世界のほう…。こういう、勤勉という訳ではなくただ己の日常に戻るラスト、好きになってきちゃったよ。
全編を通すと、恥ずかしさや可愛さから始まって、状況や心情の遷移を見て、いつの間にかたどり着く運命を感じつつ日常にもどる、自らの人生を"ふり返る"ような味わいでした。一応のキーワードでもありつつメタ的にも説得力を持つタイトルですね。もう一回みて、ルックバックしているシーンを再確認するのも楽しそう。
引っ掛かる点その1、起承転結の転がマジで急でシュール。なんで藤田は忙しいのに番組を点けてるのか。言いたいことは推測できるがマジで脈略がないイベント。ある意味教訓としては正しいのかな。没入感や納得性のような親しみ深い心地よさは犠牲になった。
その2、なぜ藤田少女はシャーペンを使い続けたのか。僕だったら絶対鉛筆派だし、冒頭のシーンでは鉛筆削りが良い場所にあるから彼女も鉛筆派だと思っていた。練習で何かメリットがあるのかな…漫画にはくっきりした輪郭が欲しいとか?別に合理的な訳は無くて、それだけ"とにかく描け"に従う愚直な子なのか…。そういえば運動神経いいはずなのにスキップが乱れに乱れるし…よくわからない子。

見れて良かった。席がど真ん中とれたのは良き。そして、答えが述べられなかったあの問いは何だろう。また観たい。

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