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青春18×2 君へと続く道(2024)

MOVIE WALKER様の試写会にご招待いただきました。
神楽座大好き。

まず、レビューが遅くなり、大変申し訳ございません。
劇場公開前に公開できる内容のレビューが書けませんでした。

私は清原果耶さんを、極上のバニラアイスのような俳優さんだと思っています。
もちろん極上ですので単品でも十分勝負できますし、ちょっと良いレストランで最後に出てくるデザートのお皿では、色とりどりのケーキやフルーツの乗ったお皿の中で、真っ白なその姿は揺るぎない軸となります。
万能且つどのような場面でもその存在感は絶大ですが、彼女が真にその実力を発揮するのは、二種類のアイスが乗った銀色のカップの中にある時だと思います。
どんな作品で、誰と共演しても、相手役の個性を引き立たせます。
そして相手役が輝けば輝くほど、自らの透明度もより際立つのです。

主人公ジミーを演じた許光漢(シュー・グァンハン)さんは33歳、18歳と36歳をシンクロさせながら一人で演じる、という難しい役どころを見事に演じていました。
一方、清原果耶さんは自身と同じ22歳のアミを演じていますが、訳あって相手役は18歳と36歳の二人のジミーです。
技術的には、18歳に近い俳優さんに36歳まで演じさせるのが定石かなと思うのです。
ストーリーにおける必然性以上に、監督はじめ製作者が「18×2」にこだわったこの作品は特に。
33歳の「国民的彼氏」の異名を持つイケメン俳優を18歳の非モテ高校生に見せることは、ちょっと大人びた22歳を演じることでクリアできたかもしれませんが、36歳のジミーから見たアミも22歳であり、ジミーとのひと夏の恋は、アミにとっても初恋なのですから。

しかし、シュー・グァンハンさんと俺たちのバニラアイス、清原果耶さんはやってのけました。
実際には10歳以上年上の俳優さんが、4歳年下の18歳にしか見えないんですよ。
そして18年後、36歳のジミーから見た22歳のアミは、決して叶うことのない初恋に戸惑う22歳にしか見えない。
何を言っているのかわからないかもしれませんが、私が見せられたものは奇跡だったと思います。

映像は文句なしに美しかったです。
実は鑑賞前は少し心配していました。
私の中で藤井通人監督は「影を自在に操る監督」です。
監督の撮る「影」はとても魅力的で、『デイアンドナイト』では、薄い「影」のカーテンが何重にも折り重なったような奥行きのある背景の中に透き通るような光を放つ清原果耶さんが立つ、めまいがするほど美しい映像が印象に残っています。
その藤井監督が、直射日光しかなさそうな台南をわざわざ選んでキラキラの18歳の夏を描くと聞いて、「え、影ありませんけど?」と。
溶けてしまうのではないかと。
「影の魔術師」は、後半、日本に舞台を移したところで本領を発揮していました。
原作では台北だった舞台を台南に変更し、まず存分に見せた「光」や「熱」は、後半、ジミーが旅をする雪国日本との対比によってより瑞々しさを増し、18年の時を超え、台湾、そして日本で「同時に」ランタンが放たれた瞬間に、影と光は融合し、完全体となった気がしました。

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