梅系

正直なことを言わせていただくと、
甘い梅干しが好きだ。

「梅干しは死ぬほど酸っぱいのが好き」と言っている人をテレビやなんかで見かけるとかっこいいなあと思うから、ときどき見栄張って真似して言ったりするけれど、本音では新聞に広告が載っているような甘いはちみつ漬けにあこがれている。

もちろんお茶漬けやおにぎりは赤くて酸っぱいのが合うとは思うが、もらってうれしいのは甘い方だ。
内心みんなそうだろうとか思ったりもする。

梅干しはシソの部分をお茶漬けに入れるのが好きだ。
理由はというと、梅は丸ごと入れると塩が強すぎるし、種を取って細かく分けるのが面倒だからである。
しそはもともと細かくなっていたから、それを昆布みたいにしてお茶漬けに入れていた。

お茶漬けはずっと好きな食べ物のひとつである。
お茶漬けに限らず水分を含んだお米にめっぽう弱い。
小学生の時、母に誕生日に何が食べたいか尋ねられた私は
「お茶漬け」
と答えた。
私としては普段通りのあられと梅と昆布のものを想像していたから、
母が困った顔で
「鯛茶漬けにしようか」
といったときには複雑な気持ちになった。

申し訳ないのだが、結局鯛茶漬けを食べたのか覚えていない。


というと、いつも思い出す人がいる。
小学校が同じだった女の子で、私は「梅ちゃん」と呼んでいたのだが、
5年生くらいになるころ「梅ちゃん」ではなく「夢ちゃん」だったことが判明する。
その時は早く言ってくれよと恥ずかしくなったが、結局そのあとも私は夢ちゃん呼びを辞めなかった。

ときどき帰り道が同じになるだけでクラスも一度もかぶらなかったから、彼女との親交は浅いが、
卒業式の袴がとても可愛かった。

綺麗な梅干し色、
ではなく深くて鮮やかな松の色だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?