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ゴールドマン・サックス、最新決算【4-6月】堅調な業績を支えるアプローチ:顧客関係の深化と成長戦略

投資銀行は、日本の証券会社のようなイメージで良いと思います。逆に近年は日本の証券会社が金融グループ化し、日本の市場環境に適した形で、ゴールドマンサックスのような、投資銀行スタイルを目指していると言えます。今回のnoteは、投資銀行のビジネスモデルをゴールドマン・サックスを通じて学びます。


ゴールドマン・サックス・グループ
(The Goldman Sachs Group, Inc. <GS>)

2024年度第2四半期(4-6月)の業績

  • 売上高:

    • 127億3,100万ドル(前年同期比+16.9%)

  • 純利益:

    • 28億9100万ドル(同2.7倍)

  • 1株利益(EPS・希薄化後):

    • 8.62ドル(前年同期3.08ドル)

  • 四半期配当:

    • 2.75ドル(前年同期より0.25ドル増配)

  • 年率換算普通株式利益率(ROE):

    • 10.9%

3つの主要部門とは?

売上高127億ドルの内訳を部門別でチェックします。

  1. グローバル・バンキング・アンド・マーケット (Global Banking & Markets)
    :81.8億ドル
    ゴールドマン・サックスの中核をなす投資銀行業務。主な業務は、企業や政府機関に対する資金調達支援、M&Aアドバイザリー、証券の引受や売買、金融リスク管理など。グローバルな金融市場において、クライアントのニーズに合わせた革新的な金融ソリューションを提供しています。

  2. アセット・アンド・ウェルスマネジメント (Asset & Wealth Management)
    :38.8億ドル
    機関投資家や富裕層の個人投資家に対する資産運用サービスを提供。投資戦略の策定、ポートフォリオ管理、金融アドバイスなどを通じて、クライアントの資産を長期的に成長させることを目指しています。また、個人向けの金融計画や資産管理サービスも手掛けています。

  3. プラットフォーム・ソリュージョンズ (Platform Solutions)
    :6.7億ドル
    テクノロジーを活用した革新的な金融商品やサービスの開発に注力。オンライン・バンキング・プラットフォームの提供や、金融取引の効率化・自動化などを通じて、顧客中心の利便性の高いソリューションを生み出すことを目指しています。ゴールドマン・サックスの他の部門とも連携し、金融サービスの未来を切り拓く役割を担っています。

以上の3つの部門が相互に連携することで、ゴールドマン・サックスは投資銀行としてグローバルな金融市場をリードしています。

地域別で見ると?

  • Americas(アメリカ大陸全体:米国、カナダ等とメキシコなど中南米国)
    :81.3億ドル<売上構成64%>

  • EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカの国々が含まれます)
    :29.3億ドル<同23%>

  • Asia(中国、日本、韓国、台湾等と東南アジアの国々)
    :16.8億ドル<同13%>

"グローバル・バンキング&マーケッツ及びアセット&ウェルス・マネジメントの両部門における前年同期比での力強い成長を反映した、堅調な第2四半期の業績及び上半期の全体的な業績に満足しています」「当社のワン・ゴールドマン・サックス・オペレーティング・アプローチにより、顧客との関係を深め、改善しつつも複雑な環境の中で顧客にサービスを提供することで、当社全体を顧客に提供することが可能になっています。"

デイビッド・ソロモン会長兼 CEO 

米国銀行の特徴

グラム・リーチ・ブライリー法

現在の米国の大手銀行の多くは、商業銀行と投資銀行の両方の機能を持つ総合金融機関として運営されています。

1999年の*グラム・リーチ・ブライリー法により、商業銀行と投資銀行の業務を同時に行うことが可能になり、JPモルガンチェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズファーゴ、シティグループなどの大手銀行は、以下のような幅広い金融サービスを提供しています。

  • 商業銀行業務:預金の受け入れ、融資、クレジットカード、オンラインバンキングなど

  • 投資銀行業務:証券の引受、M&Aアドバイザリー、資産運用など

各銀行は商業銀行と投資銀行の両部門を持ち、総合的な金融ソリューションを提供しています。ただし、各銀行の強みや注力分野は異なります。

  • JPモルガンチェースとバンク・オブ・アメリカは、商業銀行と投資銀行の両方で強い存在感を示しています。

  • ウェルズファーゴは商業銀行業務により強みを持つ傾向があります。

  • ゴールドマン・サックスは投資銀行業務に特化しつつ、近年は個人向け銀行サービスも展開しています。

このように、現在の米国の大手銀行は、商業銀行と投資銀行の垣根を越えて総合的な金融サービスを提供する体制を整えているといえます。

*<グラム・リーチ・ブライリー法(GLBA-Gramm-Leach-Bliley Act)>

  1. 商業銀行と投資銀行の業務分離規制の緩和:GLBAは、1933年の銀行法(グラス・スティーガル法)の規制を緩和し、銀行持株会社が商業銀行、証券会社、保険会社を子会社として保有することを可能にしました。

  2. 消費者のプライバシー保護:金融機関に対して顧客情報の取り扱いに関する方針を開示し、顧客のプライバシーを保護する措置を義務付けました。具体的には財務プライバシー規則とセーフガード規則が定められました。

  3. 金融持株会社の監督:金融持株会社に対する連邦準備制度理事会(FRB)の監督権限を強化し、金融コングロマリットのリスク管理体制の整備を進めました。

GLBAの制定により、米国の金融機関の業務範囲が大幅に拡大し、大規模な金融コングロマリットが形成されました。しかし、金融機関の巨大化と複雑化が金融システムのリスクを高め、2008年の金融危機の一因になったとの指摘もあります。GLBAは金融制度に大きな変革をもたらし、金融機関の業務拡大と消費者保護のバランスが課題となっています。

米銀決算での注意点は?

米国の銀行の財務諸表において、企業の「売上高」に相当する項目は、一般的に以下のように和訳されます。

  1. 売上高(Total net revenuesやSales revenue, Operating revenue)

  2. 経常収益(Ordinary income, Operating income)

これらの用語は、銀行の主要な収益源である利息収入(Interest income)と非利息収入(Non-interest income)を合わせたものを指します。

  • 利息収入:貸出金や有価証券投資などから得られる利息収入

  • 非利息収入:手数料収入、トレーディング収益、その他の収入など

米国の銀行は、これらの収益項目を合計した金額を、売上高や経常収益として報告します。これは、一般企業の売上高に相当する概念です。

ただし、銀行の事業モデルは一般企業とは異なるため、財務諸表の構成や項目名称も多少異なります。銀行特有の収益構造を理解することが、銀行の財務諸表を適切に分析するために重要です。

About  ゴールドマン・サックス・グループ

  1. 創業年:1869年
    -マーカス・ゴールドマンが、ニューヨーク市のロウアー・マンハッタンで約束手形の売買を始めたのが創業の始まりとされています。1882年に義理の息子のサミュエル・サックスが参加し、1885年にマーカスの息子ヘンリーも加わり、「ゴールドマン・サックス商会」のパートナーシップが成立。

  2. 上場年:1999年
    -長年にわたるパートナーシップ形態の是非をめぐる議論の末、1998年にパートナーたちが上場を決議。 翌年5月4日ゴールドマン・サックスはニューヨーク証券取引所に上場。1869年の創業以来、パートナーシップ形態で発展を遂げ、長い議論の末に上場に踏み切った歴史を持つ投資銀行。創業から130年以上にわたる歴史の中で、数々の金融イノベーションを生み出し、今日の金融業界を代表する企業の一つとなっています。

3.ティッカー・シンボル:GS
4.セクター:Financials (金融)
5.株式時価総額:1,622億ドル<7/16日時点,およそ26兆円>
6.年間の売上高:462.5億ドル
7.ライバル企業:JPモルガンチェース(JPM),バンク・オブ・アメリカ(BAC)など
8.日本での同業種:みずほフィナンシャル・グループ(8411),
    野村ホールディングス(8604)等
9.従業員数:45,300人

まとめ

ゴールドマンサックスの最新業績は、複雑な市場環境の中で顧客関係を深化させ、「ワン・ゴールドマン」戦略によって強固な成長を実現していることを示しています。プラットフォームソリューションズやグローバル・バンキング&マーケッツ、アセット&ウェルス・マネジメントの各部門が重要な役割を果たし、消費者保護とリスク管理の取り組みも功を奏しています。これらの要素が相まって、ゴールドマンサックスは持続可能な成長を続けることが期待されています。

2024年第2四半期,Q2【4-6月】米主要銀行決算:伸びる収益、立ちはだかるコスト<JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループ>

*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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