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「アイドル」

一つ前に書いたジャニーズ性加害問題の記事で触れていなかった、私の中の「アイドル」について書いてみたいと思う。

アイドルと私

初めて好きなったアイドルは鈴木あみちゃんだった。憧れのお姉さんで、美容院で写真を見せて同じ髪型にした日のことを今も覚えている。そのあとはモー娘。も好きだったし、AKBの握手会にいってた時期もある。最近はK-POPのヨジャドルも好きだ。

何より一番長く好きだったアイドルは嵐。
Jr.の頃に存在を知り、デビュー時から全曲聴いてきた。「南くんの恋人」を楽しみにしていたし、「流星の絆」で鬱作品への耐性ができた(笑)、24時間テレビの相葉ちゃんのお手紙でファンになり、花男でブレイクしていく姿を追いかけて、主演ドラマをいくつも見て、ライブDVDを買って見ていた。今だって、再始動する日を夢見ている。

仕事としても、雑誌時代は沢山の女性アイドルを特集させてもらったし、撮影や連載を通していろんな姿を見てきた。今の会社に入ってからも、男女問わずいろんなアイドルとお仕事させてもらっている。

こんなふうに、幼少期から今に至るまで、私の近くにはいつもアイドルがいる。


アイドルを好きな理由

アイドルが好きな人にとってアイドルの魅力は千差万別で、しかも一つに絞ることはできない。顔、スタイル、歌、ダンス、性格、トーク、ファンサ、今なら接触イベントでの対応や配信でのおしゃべりなんかも含まれるだろう。それらの複合で、「好き」が生まれる。

私は、その中でも「自分で考えて努力している姿」が好きだ。

例えば、私が好きで推していたアイドルに、元AKB48の佐藤亜美菜ちゃんという人がいる。

彼女は、AKB48の4期生としてデビュー、現在はAKB48を卒業し、声優として活動している。
彼女のアイドル人生の中で一つのターニングポイントとして挙げられるのが「総選挙」だ。彼女はまだ総選挙が作られる前、なかなか表舞台に立てない状況の中、いつでも公演に出れるように他のチームのダンスまで覚え、アンダーとして何度もシアターの舞台に立つことでファンの中での支持を高め、初めての総選挙で8位を獲得した、という努力家エピソードがある。
これは、ままならない現状を打破するにはどうすればいいか、自分には何ができるかを考えた末に起こした行動が実を結んだ瞬間だ。

亜美菜には、こういう自分で考えて考えて考え抜いて、状況を打破したというエピソードが沢山ある。
私は彼女のそういうところが大好きだし、このエピソードを友達から聞いて、好きになった。(元は友達の推しで、彼に布教された。それもAKBカフェでw)
余談だけど、今はAKB時代ほど応援してるわけではないが、それでも今も「好きな声優さんだれ?」と聞かれたら「佐藤亜美菜ちゃんっていう人がいるんだけど〜」と言って説明している。もっとアニメとかに出て〜!

もちろん他のアイドル達も、日々試行錯誤をして、今何をすべきか、どうしたら前進するかを考えていることだろう。
だからこそ、私はアイドルを応援したくなる。

アイドルが業界から好かれる理由

ジャニーズを始め、昨今は多種多様なアイドルが存在し、それぞれの得意分野で活躍している。
ニュース番組に出る人、スポーツ番組に出る人、ファッションブランドを立ち上げる人、コスメをプロデュースする人、確か麻雀かなんかでプロになった人もいたはず。
今の時代、アイドルは個性が大事。歌って踊るだけでは残れない。

そんな多種多様な彼らが業界から好かれる共通の理由が、
「気持ちのいい人」であることだと思う。

仕事を通して何組ものアイドル達に会ってきて、本当に徹底されてるなと思うのが、めちゃくちゃ態度がいいというこ
挨拶はもちろん、座り方や受け答え、態度……私が会ってきたアイドルは皆それらが丁寧で明るい。お互いに助け合っていて、その姿に胸を打たれる。

以前、撮影の後カメラマンさんと「すっごい良い子達だったね!今日でファンになっちゃった!」と言いながら興奮して帰った日の話をしたい。

それは雑誌時代。グループ内で一人俳優業なども熟す多忙なメンバーがいるグループがあった。(いい話だけど、バレそうなので男女は伏せます)
撮影も、緻密に組まれたスケジュールの合間を縫って、そのメンバーに合わせて夕方から夜にかけて組んだ。確かそのあとにラジオか何かの収録が予定されていた……と思う(笑)
その多忙なメンバーを便宜上Aさんとする。

他のメンバーだけが先に集合し、着替え、メイクを済ませる。あとで合流することは事前に聞かされていたので、香盤もそのように組んだ。集合写真はAさんが到着して準備ができたら撮りましょう、と。
他メンバーのソロカット撮影が進行する中、マネージャーさんが迎えにいき、Aさんが到着。準備を整えて、撮影へ。終わった子から私服に戻れるように、一旦集合写真を撮影した。

そのAさんが本当にすごかった。
到着した時は疲れ果てていたのに、カメラを向けると目がぱっちりと開き、アイドルの顔になる。キラキラと輝き出す。本人にとっては当たり前かもしれないけど、さすがだなぁと感心した。

しかし、帰り道にカメラマンさんと私が感動していたのは、実はこのAさんの力だけではない。

他メンバーの撮影が進み、ふと振り返るとAさんは机に突っ伏して眠っていた。
朝からいくつも仕事が入っていることは聞かされていたし、Aさんは当時学生で、確か定期テストの時期だったから、余計に忙しいのは想像ができた。疲れてるんだなぁと労りの気持ちが込み上げてきた時、他のメンバーが「私/僕が先に撮ってもいいですか? 寝かせてあげたいので」と声をかけてくれた。
めちゃくちゃ感動した。
一人だけ推されているように見える現状で、こんなふうに言えるのは、愛だ。Aさんのことが大好きだから、グループのことが大好きだからすっとこういう言葉が出るんだ。
ちなみに、前の仕事が伸びることも加味して一番最後に組んでいて、こちらとしても予定通りだったので、「もちろん!!」と速攻で返した。

私たちはこういうところに感動した。
激務でどんなに疲れていても、仕事をきっちり熟すかっこいいところ、グループやお互いのことを思いやって提案できるところ、周りを見て空気をよくしようと努めてくれるところ、仲が良いのが伝わってくるところ、本当に素晴らしいグループだった。

後日談になるが、そのあとグループにとって記録に残るライブにご招待いただき、まさにアイドルしている姿を見ることができた。めちゃくちゃ歌がうまく、ダンスもキレキレで、実力の面でも感動させてもらったいい思い出だ。

アイドルは、人に好かれるのが仕事。
それをちゃんとわかっているし、スタッフにもそういうつもりで接してくれる。

ちなみに、アイドル以外の芸能人と仕事をしたこともあるが、これが当てはまったのはアイドルとモデルさんだけだった。
それ以外の芸能人と仕事をすると、ほぼ100で撮影後愚痴が出る(笑)
君たち、アイドルを見習ってください♡

アイドルを馬鹿にする人たち

ジャニーズ問題が浮上するずーーーーっと前から、アイドルはなぜか馬鹿にされてきた。

この手の人たちは、アイドルの音楽をこんなふうに馬鹿にする。

私も実際某アーティストに、アイドルが歌ってるステージの裏で、「聴くに耐えない、だからアイドルは嫌いなんだ」と言われて、「いやいや何言ってんすか」と反論したことがある。
あんたは演奏しかできないだろ、彼女たちは歌もダンスもトークも演技もやるんだぞ、マルチプレイヤーなんだよ!……と、ぶ厚いオブラートにぐるぐる巻きにして伝えた(笑)

こんなふうにアイドルを馬鹿にする人たちはこぞってアイドルの音楽を「偽物」「陳腐なくだらないもの」「本気で作っていないもの」と言う。
何を見て、知ってそう言うのかは謎だ。

自分で作ってないから?
---それなら楽曲提供されて歌ってる歌手全員そうだ。
踊ってて歌に集中してないから?
---古今東西、歌って踊る歌手はいくらでもいる。
途中でファンサしてるから?
---ロックバンドの人だって皆カメラ目線したり、ポーズ決めたりしてますよね。
ピッチが合ってないから?
---人間なので。それが嫌ならボカロだけ聴いてろ。
異性にばっかり人気だから?
---知ってた?どんな不細工なアーティストにだって、ガチ恋ファンっているんだよ。

私は音楽にとって一番大切なことは、
人の心を動かすことだと思う。

ほっこり幸せにしたり、楽しい気持ちを爆発させたり
悲しみを共有したり、怒りを発散させたり。
聴く人の心に寄り添って、動かせたら、それが「本物」の音楽だと思う。
そして、「本物」の音楽には思い出が残る。

音楽は、アーティストとファンのもの。
聴きもしない人がやんや言っても意味がない。

どんなに技術的に下手な歌でも、気持ちがあれば伝わるし、分かち合うエピソードだって付随してくる。
デビュー曲、タイアップ曲、ファンがアーティストに出会った曲、辛い時期を乗り越えた曲、バズった曲、ファンに向けた曲、ライブ定番曲、合唱曲、ライブで大雨が降った曲、真夏のフェスで歌った曲。
失恋した時に慰めてくれた曲、受験生の時勉強しながら聴いた曲、文化祭で披露した曲、卒業式で歌った曲、初デートのとき見た映画の主題歌、大好きなドラマのエンディング、そういったいろんな思い出も含めて曲の価値が生まれる。
だからこそ、外野がその価値を定めても意味がない。

茂木さんにとって、モーツァルトやビートルズやボブ・マーリーが価値のある音楽なのは、茂木さんが彼らの音楽に思い入れがあって好きだからというに過ぎない。
茂木さんは1962年生まれ、現在60歳だ。1966年に来日し日本でも長年ビックヒットを飛ばしていたビートルズに対して、「イエスタディ」が発売された1976年当時14歳だった茂木さんが、思い入れなど持ってないとは言わせない。

ただ、彼らの音楽を知らない人からしたら、彼らの音楽こそが「偽物」、気にも留めない音楽になる。
あれが本物だ! と言われても、へぇそうなんだ〜で終わる。
ビートルズが、30代の私にとって音楽の教科書に載っていて、リコーダーで吹くだけのアーティストであるように。

価値のある音楽、それは自分にとって思い入れのある音楽だ。
他人はどうでもいい。

アイドルは夢を与える仕事

「アイドル」とは一体何なのか。

狭義では、歌って踊る見た目がよい若い歌手
広義では、音楽面以外も含めて、誰かの憧れになる存在
だと私は思う。

狭義では、古くは松田聖子や中森明菜、今ならジャニーズや48、坂道、ハロプロ……のようなグループ、最近は少ないけど松浦亜弥みたいなソロアイドルがそうだし、
広義では、YAZAWAも尾崎も、ビートルズだってアイドルだと思う。

音楽だけでなく、生き様やスタイルがアイコンとして成立したら、それはもう広義ではアイドルだ。
ビートルズが本物だという、そこのあなた。あなたは本当に純粋に音楽“だけ”を受け取って、そう言っていますか? ジョン・レノンの生き様に思いを馳せたり、ポール・マッカートニーかっけー! と叫んだことはないですか? マッシュルームカットに憧れたり、似たようなスーツを着たことはありませんか? 女々しい見た目だとか言って馬鹿にしてくる上の世代に反発したことだってあったんじゃないですか?

ビートルズは、今の若者にとってのK-POPだし
尾崎の「盗んだバイクで走り出す〜」は、SMAPの「No.1にならなくてもいい もともと特別なオンリーワン〜」だし
YAZAWAは、Adoであり、YOASOBIであり、米津玄師なんだ。

ビートルズが、尾崎豊が、YAZAWAが、特別なんじゃなくて、
その人が生きた時代にその人へ大きな影響力を残した人が、その人の特別になる。
K-POPや、ジャニーズや、今売れている歌手が薄っぺらく感じるのは、あなたが歳をとって感受性が減っているからだ。
感受性がMAXだった10代の頃に出会った音楽の方が、今出会った音楽よりずっと胸にくるのは、その頃の方がもっと日々目まぐるしく変わる問題ごとに振り回されて、悩んで、苦しんできたとき、隣にあった音楽だから。
その優劣は、単に思い入れの差にすぎない。

「アイドルは夢を与える仕事」と言われる。
「夢」というのは、「明るい未来に向かっていく想像」ではないだろうか。
リアコだって、推しと付き合うという明るい未来に向かっていく想像をしてる、とも言える。
今がどんなに辛くても、支えてくれたり、共感させてくれたり、癒してくれたり、元気付けてくれたり、そうやって寄り添ってくれる存在こそが、その人にとっての「アイドル」だと私は思う。

だから、別に歌って踊るだけがアイドルじゃない。
人生に寄り添ってくれる存在、それが「アイドル」だ。

アイドルは虚像か

「推しの子」が大ヒットし、社会現象を巻き起こす昨今なら、YOASOBIの「アイドル」にもあるように、アイドルが表に見せている顔がすべてではないことは誰にとっても明白だと思う。

熱愛報道みたいなスキャンダルだけじゃない。
化粧を落としたら違う顔をしているだとか、本当は体調が悪いのにそれを隠して笑顔でステージに立っているだとか、本当は家ではダル着なのにインライでは可愛い服を着てるだとか、実はメンバーと喧嘩してるけど仲のいいふりをしているだとか。
そんな「嘘」の積み重ねで生まれている虚像であることを、ちゃんとみんな知っている。(……忘れてないよね? って人もいるけど)

弱いとこなんて見せちゃ ダメダメ
知りたくないとこは見せずに
唯一無二じゃなくちゃ イヤイヤ
それこそ本物のアイ

YOASOBI「アイドル」

ただあくまでこれは芸能人、いや人間もれなく全員がやっていることだ。
言えないことを聞かれれば隠すために嘘をつく。
SNSなんかの人に触れる情報はつい着飾って書いてしまう。
それだってありのままじゃないなら嘘だ。

でも、アイドルの場合は、「その嘘こそがファンへの愛情」だというのが他との違いだと思う。
自分こそが「一番星の生まれ変わり」であるところを見せてくれる、それこそがアイドルが「アイドル」たる所以だ。
その人個人の、キラキラ輝く一部の面を見て、人は彼らを「アイドル」と呼ぶ。

アイドルは究極の虚像。
それは彼らが作ってくれた愛情の塊だ。

アイドルと音楽

アイドルの音楽には素晴らしい音楽が沢山ある。
アイドルを馬鹿にする人がいくら否定しても、それは揺るがない事実に違いない。

私が嵐の楽曲の中で一番思い入れがあって、好きなのは
「We can make it!」という曲だ。

当時私は専門学校生で、クラスの中で成績が悪く悩んでいた。
一緒にいた友達たちは先生にいつも褒められていて、自分だけ評価が低い。経験もないまま飛び込んだけど、本当は才能がないのかな……と悩んでいた。
そんな中、この曲の翔くんの

Dreamと書いて「目標」と読む

嵐「we can make it!」

というラップに、心打たれた。
ドラマ「バンビ〜ノ!」を見て、新曲として聴いていたときはなんとも思わなかったのに。
ある日突然この曲のこのリリックが頭に飛び込んできて、自分にとってデザイナーになるというのは「夢」だけど、「目標」なんだ! と頭が切り替わった。ぼんやり憧れているものじゃなくて、一歩一歩積み重ねて実現するもの。今人より劣っていたって、卒業する時までに追いつけば良いんだ! と思えたら、落ち込むことがなくなった。
後日私は、CD制作の課題でこの「We can make it!」のデザインを提出し、クラスで一番の評価を得る。先生にもCDを作る才能あるよ! と言われたし、自分でもそう思った。
これがデザイナーになるまでにいくつかある、転機の一つだったのは間違いない。

このエピソードを聞いても、
嵐(ジャニーズ)の音楽はくだらない偽物だと言えるだろうか。
少なくとも、私にとっては私の人生を大きく動かした大切な音楽だ。
もし嵐を好きなっていなかったら、おそらく有名曲とはいえない「We can make it!」を、ましてや時間差であんなに深く聴き込むことはなかったと思う。
このラップは、アイドルである櫻井翔自身が書いている。
大袈裟に言えば、翔くんが私の人生を大きく好転させたと言えるかもしれない。
そして、今も私はデザイナーを続けている。

こんなエピソードは、1000人のアイドルファンがいたら、1000個でも2000個でも、1万個だって出てくる。
私だってこの話は、嵐との思い出の一つにすぎない。

アイドルの音楽は、人の心を動かせる「本物」の音楽だ。
それだけは間違いない。

「アイドル」

アイドルというのは、楽な仕事ではない。
キラキラしてるだけでもない。
苦しいことも、悲しいことも、辛いこともたくさんある、大変な仕事だ。

それでも私はアイドルが好きだし、
彼らにアイドルでいてほしいと願う。

2006年に公開された映画「硫黄島からの手紙」で、ブルーリボン賞主演男優賞を初受賞した際、二宮くんが記者会見で海外の記者から「俳優」と呼ばれるたび「僕は俳優ではなくアイドルです」と返したエピソードは有名だが、
私はこういうアイドルであることを誇りに思っているアイドルが好きだ。

アイドルは他に劣っていたりなんかしない。
半端者でも、くだらないものでも、誰かをだましているものでもない。
素晴らしい職業だと思う。

今、窮地に立たされているアイドルが沢山いる。
でも彼らと、彼らに心動かされたファンたちが手を取り合っていればきっと大丈夫。
また絶対に幸せな日々が戻ってくると、私は信じている。


サポートしようかと心の隅の方でふと思ってくれたあなた!ありがとうございます!毎日夜のカフェでポリポリ執筆してるので、応援してくれたらうれしいな!なんて思ったりしてるよ!