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羽化

わたしはあのこにはなれない。
今流行りのマーメイドスカートも、
モテそうなゆるめのパーマも
きっとわたしには似合わない。
強い女性にはなれないけれど、
か弱い少女にももうなれない。
鋭敏だった感性も少しずつ鈍感になって
『楽しい』『悲しい』『疲れた』
そんな単純な感情しかわからなくなった。
毎日は忙しくも充実してて、
恐らくわたしは幸せだろう。
けれどそんなのわたしじゃない、
とわたしの中の誰かが言う。
自分の存在意義を感じられなくて
いつも喉の奥がひんやりしていて
悲しくて寂しくてたまらなかったあの頃を思い出すと、
「なんて可哀想な青春だったんだろう」と思う反面、心剥き出しの感性を少し羨ましくも思う。
毎年孤独を感じていた誕生日が
今は自分に向けられる愛を、
1年で1番感じられる日になった。
そうやって、少しずついろんなことに鈍感なりながら
少女は大人になっていく。

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