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映画『対峙』

映画『対峙』を観てきました。
ニュースを見られない私は、この映画も見られないかなと思っていたのですが、事件のシーンは出てこないと聞き、思い切って観てきました。
事件の被害者と加害者それぞれの両親による対話を描いた映画。難しいテーマ。どんな展開と結末になっているのだろう。型にはめたような、ただ感情を煽り、押し付けがましい内容だったり、答えがはっきりないままに終わるものだったりするのかなと、期待半分疑い半分みたいな気持ちでした。でも観てみたら、ほんとにとても良かったです。観て良かったなと思うし、これからも忘れたくない作品だなと思いました。
作中に事件のシーンは無かったのですが、思わず字幕から目を逸らしてしまう描写もあったり。ただ、単純に描写が辛いというだけじゃなくて、4人の対話の中でそれぞれの思いが私の体にまで込み上げてくるのです。ただ対話を傍観しているという感覚ではなく、込み上げた思いで、思わず目を逸らしてしまうのです。
複雑な感情を描かないといけないし、当人であっても、何から話していいのか、どんな風に話せばいいのか、どんな風に決着をつければよいのか、とても難しい対話を、見事に描いた作品だと思いました。そう簡単にできることではないと思うのです。監督はフラン・クランツさん。俳優で、今作が初めての脚本・監督作品なのだそう。驚きです。

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人が間違いを犯した時、どう対処してどう改めれば良いか、何が本当に正しいかなんて、明確には分からない。ただ、人が人間として在り続けるために、人間が共存していくために、答えは必要で、そしてその根本的な答えは概ねすでに出ていると思う。それは人がヒトであり人間であるからこそ、見つけ出してきたもの。けれど、人はヒトであり人間である限り、「間違い」は避けられず、その度また答えからはぐれる。私はそれを目の当たりにする度、絶望するのだ。けれど人はやはりそれで終わらないのだろう。迷いもがき苦しみ、でもそれと向き合い続け、また答えに辿りつくのだ。この作品を観て、人間が人間たる所以を知り、決して愚かではないのだと光を見た。

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