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弱みを武器に。〜配信ライブの可能性〜

私は、今までの当たり前がひっくり返るような、
とんでもない出来事を目の当たりにしたのかもしれない、
と思った。
思わざるを得なかった。


8/15,16に開催された、サカナクションのストリーミングライブ「SAKANAQUARIUM光ONLINE」
8/15はサカナクションのファンクラブ会員限定配信で、8/16は一般配信でした。
私はどちらも拝見したのですが、
”ストリーミングライブの革命”とも言えるライブでした。


昨今、今までのようにお客さんを入れてのライブハウスでのライブができない状況が続き、様々なアーティストがストリーミング配信でのライブを開催していますね!
(本当にありがたい限りです!)
アーカイブで後から見返すことのできるライブも多く、
「なかなか予定が合わずにライブに行けない、見れない……(泣)」
なんて悔しい想いをしないで済む!というのが個人的にとても嬉しい!!!


手軽に見れる、自分の見たい環境で観れる(着座してだったり、イヤホンをして聞いたり。)、お酒を片手に周りの目を気にせず楽しめる!なんてことも、配信ライブならではではないでしょうか。
しかし、回線の問題や、配信側の不具合で、画面が止まったり、音が聞こえなかったりするなんてことも……
(実際今までに何個か配信でライブを見てきましたが、共同wifiを使っているせいなのか、どのライブを見ても毎回画面が止まる……というなんとも歯がゆい思いをしました……。)
そして無観客ライブですから、アーティストとしても、お客さんの様子を感じることができない状況での演奏となります。
つまり、アーティストも観客も、実際のライブと同じ熱量を感じることが難しい環境である、とも言えるでしょう。

こういったたくさんの違いはあると思うのですが、
私が注目したいのは、
「”ストリーミング配信ライブ”であるからこそ優位になる点」
についてです。

リアルでありながらも、画面越しの体験。

配信ライブは、現場(会場)に赴く必要がなく、実際に肌で体感できないライブのため、会場の雰囲気(空気)はもちろん、その場の匂いや温度、それらを感じることができません。
”画面越し”という時点で、実際のライブで体験できていたことがいくつか制限をされてしまいます。


そしてその中でも最も制限されるものは、視点ではないでしょうか。
視点の固定”は、ライブ配信の弱点とも言えるでしょう。

実際にライブ会場に足を運び、スタンディングの会場であれば、皆さんは自由に自分の場所を選ぶことができます。
「このバンドのギターが好きだから、上手側のいい場所どこかな〜」
「このバンドは前列で盛り上がりたいから、できるだけ前に行こう!!」
「このバンドはお客さん含めて全体を見てみたいし、一番全体の音が聞こえる真ん中の後方に行こう〜」
とか。

人によっては、こんな感じで、バンドごとに、自分の立ち位置を決めている人もいるのではないでしょうか。
というかまさに私がそのタイプです。
さらにいうと、
「この曲のギターソロが好きだから、この曲はギターを見るぞ!!」
「この曲のこの時、ベースはどんな動きしてるのかな!」とか。
曲によって、注目するパートが変わったりします。
そのため、視点があっちへ行ったり来たり。
立ち位置も、後方で見てたけど、盛り上がりに乗じて中列くらいまで前進したり。

このように、ライブでは、自分の意思で、視点や位置を移動させることができます。


しかし、配信ライブではそれができません。


VRが導入されるとそれも変わってくるかとは思いますが、現状、会場内にあるカメラで写している画面を観客は共通して見ることとなります。
つまり、観客は皆共通して全く同じ画面でライブを観ている、という構図が出来上がります。
ライブを見ている、というより、カメラに映し出される映像を見ている、というような感覚にすら陥ります。
そして、それこそが配信ライブの欠点であると考えます。


「欠点」と大きくいってしまいましたが、
これを「欠点」と捉えるかどうかは、魅せ方によって変わってくるでしょう。

さて、ここで、冒頭のサカナクションのライブに話を戻します。


今回のサカナクションのライブは、「MVのような生配信ライブ」ということを事前に謳っていました。
サカナクションのライブを実際に観たことある方なら、わかるかと思いますが、サカナクションのライブは、一種のアート。芸術であると、私は感じています。
そして、今回も例に倣って、まさに芸術。
ライブでありながらも一個の作品として完成していました。

私が先ほど挙げた、配信ライブであるが故の”視点の固定”という欠点をむしろ活用し、見事に昇華させていました。

例えば、冒頭の一郎さんが携帯を観ていた場面。
リアルタイムでライブ映像を配信するのであれば、ここはSEを流し本編への繋ぎにするか、実際に会場入りした際のざわざわしながら開始を待ちわびる様子を演出するのが一般的でしょう。
しかし、サカナクションは、ライブの冒頭として、一郎さんが外で携帯を観ている様子を、寄りで写し、そこから、歩いて会場へと足を運ぶ様子を映し出しました。
ここの流れは、正にMVさながらの映像でしたね。
もっと言えば、自然体でなく、意図的につくられた映像でした。
つまりは、一個の映像作品として、冒頭を”演出”していたのです。
リアルタイムのチャットでは、「本当に生配信なの!?」という声が多数挙げられていたことがすごく印象に残っています。

そこから、一郎さんは会場へと足を踏み入れるわけですが、
会場入りした瞬間、音がブワッと広がります。
今回の配信ライブでは、ドイツの3Dサウンドシステムを導入しているということもあり、立体音響が作用しているのはもちろんなのですが……
実際にライブ会場に出向いて、開始まで待っていて、ライブが始まった瞬間、
音がブワッと、もしくはガツンと身体に訴えかけるように煩く響く
あの感覚をイヤホン越しに体感しました。

人や物の動きだけでなく、静から動の音の動きまでも、冒頭で”演出”していたのです。

本当のライブのような、ついに始まる!というワクワク感を、映像と音を通して体感しました。

そして、そこから、ライブ本編が始まります。

ライブ演出についても少し見ていきましょう。
特に、オンラインライブならではだなぁ〜と感じたのが、
『陽炎』の演出ですね。

一郎さんがハンドマイクで別ステージ(という名の「スナックNF」)に出向き、そこで歌い、昔のアナログテレビにメンバーの演奏が映し出される、という演出。
ここは特にMVみたいだなぁ〜と感じた人も多いのではないでしょうか。
正に、実際のライブではできない演出方法だと感じました。


そして、少し順序が前後してしまいますが、『陽炎』の曲前で、一郎さんによる軽いMCが入ります。
一郎さんが、画面越しの私たちに向けて、話し出します。
(ちなみに1日目は、「NF会員の皆さん〜!」のような感じでした。)
ここで、私たちは、この目の前のことが「リアルタイムの出来事」だと再認識するのです。

配信ライブの弊害といってもいいのかもしれませんが、視点が固定されている画面越しの映像というのは、カメラに映し出される映像であり、どこかリアルではない映像として私たちは認識してしまいます。
しかし、この発信側と受信側の溝を埋める機能をMCが上手く担っています。
MCで私たちに語りかけることで、「これが作られた映像」ではなく、「今の映像」である、ということを強く認識させられるものとなっているな、と感じました。

そして、見ている側に「今」を再認識させた後に、先に述べた『陽炎』の収録したかのような演出。
この構成がこれまた憎いなぁ〜と。笑

冒頭の「映像作品のような作られた映像」、「目線の動きと音で実際のライブのような感覚表現」、そして、ライブ中の「移動による1画面を超えた表現」、「MCの語りによる、リアルタイムの再認識、観客との一体感の共有」、そして、最後に流される作品の終わりを告げる「スタッフロール」。
初めから最後まで、精密に構成されたライブでした。
まさしく、戦略的な革新ライブだったのではないでしょうか。

「映像であることの優位性を音楽ライブに落とし込んだライブ」だったと言えるでしょう。


実際に、私はリアルタイムで1日目の公演を観ましたが、
映像作品を見ていたはずが、それはライブ会場で見るライブであって、しかも映像で観ているけどリアルタイムでのライブで、一個の芸術作品であり、映画だった。
みたいな感覚に陥りました。笑

ライブ中の演出について今回は特記しませんでしたが、相変わらずの素晴らしい演出の数々でしたね。
サカナクションは、自分たちの作品を、ライブでいつもアップデートしてくれるように感じます。
既存曲でも、少し違ったアレンジになっていたり、照明や映像を使うことで、その作品の違った一面を見せてくれたり。

曲の持つ多様性というか、世界を広げてくれるような感覚です。


当日は部屋を真っ暗にしてモニターに写して見ていたのですが、『ボイル』の照明がパッと明るくなったところで、思わず声を出して号泣してしまいました。
なんで泣いたのか、未だに理由は見つけられないんですが、
目の前のサカナクションのライブの様がただただ圧巻で、本当に美しいな、と感じたんです。

音楽で心が震える、ってこのことなんだな、と実感しました。
それほどまでに、本当に素晴らしいライブでした。


映像化されないのが、本当に惜しい…


しかしながら、音楽の新しい可能性を見せてくれたサカナクションに感謝の気持ちでいっぱいです。


この状況を乗り越えて、きっと音楽はもっと進化する。
表現に限界なんてない。


そして、インターネットが主流となった今、誰もがクリエイターであり発信者なのです。
私も1クリエイターとして、表現を追求していきたいな、と改めて思いましたし、
やっぱり音楽が好きだな、と。

音楽を好きでいて良かったなぁ。

サカナクションを好きでいて良かったなぁ。

========


まとまりのない文章になってしまいましたが、
ライブを見た後、衝動で書きなぐったものを手直ししたものなのでお許しを……笑

書かずにはいられないライブだった、というわけです。

本当は、ライブ後すぐに公開したかったのですが、完全に時期を逃してしまい…アーカイブも終わった後の更新になってしまって、すごく不甲斐ない…というより悔しい……
お蔵入りも考えたのですが、ここまでの想いをなかったことになんてできない!!という思いの方が強かったので、こんな中途半端な時期の更新となってしまいました。笑
思い返してもやっぱり最高のライブだったなぁ〜

さて、今週も他バンドの配信ライブが控えてるんですよね〜
楽しみだなぁ〜
チューハイ買ってこないとなぁ〜〜笑

きいろ。

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