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負債 と 余剰 ~お金 の 起源 Ⅱ~

 “通貨の歴史は物々交換から始まった”、という説に異論を唱える者も度々いるようである。

 アメリカの人類学者ディヴィット·グレーバーは著書『負債論ー貨幣と暴力の5000年ー』の中で、物々交換が一般的であったことはなく、通貨の始まりは「負債」であると主張している。すなわち誰が誰にいくら“借り”があるかを追跡する手段として通貨が発達した、と言うのだ。かつて人々は、お互いの“借り”を頭の中で覚えているだけだったが、通貨の誕生により、貸し借りの仕組みが顔見知りでない人の間にも広がっていったという。なんとも斬新な説である。

 一方で、ギリシャの経済学者ヤニス・バルファキスは、文字や通貨の始まりは「余剰」であると説いている。狩猟社会から農耕社会になり、余った食物を保存できるようになると、“どれだけ小麦を倉庫に預けたか”を記録する為に文字が発達し、預り証ができた。農民はどれだけ支払いを受けれるかを預り証によって担保される事になるが、これが債務と通貨の始まりと言っている。

 ところで、お金の役割りとは何なのだろう?世間的に言われているのは、①価値基準②交換③貯蓄の3つである。例えば、毛皮が欲しいと思った時に、それはいくらかを定量的に知る事ができ、交換する事が可能で、それを半年後に買う為に貯めておく事ができる。貝殻から金属貨幣にシフトしていったのは、貯蓄を行う為に、耐久性が求められたからだろう。

 それゆえに、人は有事の際や纏まったお金が必要な時を考慮して貯蓄を行う。毎月ローンを支払い、余ったお金は貯金する。考えてみれば世話しない。しかし、時代に逆行するようだが、お金をずっと貯めておいた場合、ある時腐って使えなくなってしまうとしたら、どうだろうか?【続く】

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