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第144回 お嬢サンを下サイ の巻

天神が天皇をポカスカ・・・
不敬なマンガを描いてしまったことを深く反省しつつ、今回の解説。

道真の娘・ヒロコが宇多帝と結婚。

これ…実はただのオメデタイ話ではなく、ど真ん中の政争なのです。 血筋・家柄が最重視された当時、道真は天皇の義父、つまり権力者のポジションをゲットしたことになるのです。

「道真の野心でこの婚姻が…」と説明する解説本もあります。しかし、臣下の道真が希望してこんな婚姻が成立するわけもなく、宇多帝側が望んだことと考えるのが自然です。

しかし、血統に関わる超重要案件を、若い宇多帝が独断で決めたとは考えられない。背後にいる宇多帝の母・班子(なかこ/はんし)女王が仕掛けたと考えるべきでしょう。

配偶者である光孝帝が奇跡的に即位してから阿衡(あこう)事件にかけての時期から、班子女王はそれまで仲良しだった藤原摂関家と対立するようになったと思われます。 

皇族出身の班子女王にしてみれば、藤原摂関家が皇族を差配するという越権行為がガマンならなかったのかなあと想像します。

そこで班子女王は、若い時平が権力を確立する前に藤原摂関家を牽制する勢力を作っておきたかったということでしょう。 そこで道真の菅原家に白羽の矢が立ったというわけです。

ではこの時、もう一人の影の最高権力者・藤原淑子(時平の叔母で、宇多帝の養母)はどう反応したか?

淑子もまた道真を信頼していたことは残された文書から一目瞭然です。しかし、まさか藤原摂関家を脅かすポジションにのし上がってくることは想像もしなかったでしょう。かなり困惑したと想像します。

藤原摂関家ギライで対抗勢力を作りたい班子女王。 藤原摂関家の繁栄が至上命題の淑子。

宇多帝は、実母と養母、ふたりの母の間にはさまれ、悩んだことでしょう。 

しかし宇多帝は、時平をトップに立てることで淑子の体面を保ちつつも、完全に班子女王寄りのた動きを見せます。

道真娘・ヒロコの入内だけでなく、別の娘は女官として後宮入り、さらに別の娘は醍醐帝の弟・斉世(ときよ)親王と結婚。

斉世親王は、まだ皇太子のいなかった醍醐天皇の次の天皇候補。つまり、醍醐天皇に万が一のことがあれば斉世が即位し、義父の道真が後ろ盾のポジションになるというわけです。

菅原家の足場固めが着々と行われていきました。

しかしやがて班子女王の衰えとともに風向きが変わります。後ろ盾を失う危険を察知した宇多帝は、班子女王が亡くなる直前に出家し、逃亡するかのように政界から姿を消します。

一方、いよいよ天皇家と抜き差しならない状態になってしまった道真。

最大の後ろ盾だった班子女王が亡くなり、宇多帝が出家。道真はハシゴを外された形となってしまいました。

丸腰となった道真は藤原時平を筆頭とするアンチのえじきに・・・ と、ここまでが通説です。

しかし私は、道真追放は時平とは比べ物にならないもっと大きな権力、つまり藤原淑子が動いた結果だと思っています(それはまたいつか何らかの形で描ければ…)。

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ちなみに、マンガの中で道真サンが読んでたセリフは、さだまさしさんの昭和の名曲『親父の一番長い日』の歌詞から拝借。

さだまさしさんはご自分の所有されている島に、太宰府天満宮から勧請された天神さんの神社を祀られています。



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