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横浜から奈良に移住して驚いたこと【賃貸トラブル編】

2021年の10月1日、神奈川県から奈良県に引っ越した。

「10年も関東にいたのに、なんでまた?」「知り合いがいなくてつらくない?」など、当初は周りから心配された。

とくに心配がられたのは、「地方にはたらき先があるの?」というもの。実は、私自身も一番気にしていたことだった。

インタビューライターのかたわら、社交ダンス講師をしている私。人口が少ない場所への移住は金銭的な打撃を受けるだろうと予想していた。「思い立ったらすぐ決断!」の私が、2020年の間ずっと悩んでいたのだから相当不安だった。

けれど、「仕事や人間関係以上に代えがたいものがある」と思ったのも事実だった。2021年の1月の移住を決め、準備を進めること10か月。その月日は、結構がんばっていたかもしれない。

そしていま、2021年の終わりに差し掛かろうとする12月末。大きな声で言える。

奈良県に移住してよかった……。

その理由を振り返りたいのだけど、まずはこのことに向き合わなければならない。それは、「賃貸トラブル」。移住する前に翻弄された、私の不動産・珍道中について書いてみよう。

「オンライン内覧」は、できないところもある?

2021年の8月、横浜市で暮らしていた私は、奈良県の賃貸マンションを探し始めた。奈良県は、夫の地元である。

できれば夫の両親と同じ市内がいいと思った。理由は2つ。ひとつは車を持っていないので、引っ越してすぐは車を借りることがあるだろうと思ったから。もうひとつは、義母のがんが完治したばかりで心配だったからだ。

義母はがんの他に難病も患っていて、通院をつづけていた。「お風呂の蓋を開けるのもつらいときがある」と言っていたので、何かあればすぐに駆けつけられる場所にいたいと考えた。

しかし、世はコロナ禍。おいそれと奈良県に物件探しができない状況である。ワクチンもまだ打てていなかったので、「オンライン内覧」なるものに挑戦することにした。

SUUMO、HOME’S、奈良の個人不動産屋……。7月はこれらのページをネットやアプリをずっと見ていた。そこであることに気が付いた。

「なんか奈良の物件、S不動産ばっかり取り扱ってない?」

引っ越してから知ったのだが、他県ではマイナーだけれど奈良エリアを牛耳っている不動産会社が数社あった。賃貸物件はとくにS不動産が多かった。

夫は奈良を離れて10年以上経過していた。不動産の状況はわからないという。そこで、Google検索でその不動産会社の口コミを見た。

「こんな悪い評価見たことないわ……」というほど、なかなか辛辣なコメントの数々。「☆1をつけるのも惜しい」というコメントもあった。

試しに違う不動産会社にメールで問い合わせて「別の管理会社の物件ですけど、内覧できますか?」と相談したところ、「その物件は別の不動産会社が管理しているので、うちでは内覧できかねます」と返信が。まじか。

東京、横浜で4回引っ越したが、「他の会社が管理しているから見せられない」とは言われたことがなかったので驚いた。そんな独占契約があるの?

これも引っ越してから知ったのだが、大家とそういった取り交わしをしている不動産会社もあるそうな。地元ルールみたいなものなのかもしれない。

重説は、宅建士が説明する義務がある

結局、気になる物件を見るためにはS不動産に頼るほかなく、直接メールを送り、「横浜にいて直接内覧することができないので、オンラインで見せてほしい」とお願いした。

すると、「当社ではオンライン内覧はしておりません」ときた。

うっそーん。

今やオンラインの時代である。他の不動産会社は「LINEでオンライン内覧」とか「YouTubeで限定公開」など対応できるそうだが、それもできないという。

結果、義理母が内覧してくれることになった。病み上がりなのに、夏の暑い時期なのにと、私は申し訳なさでいっぱいになった。

不動産会社は気に入らないが、物件は気に入ったので入居手続きを行うことに。ここで、私はちょっとしたトラブルに見舞われた。

S不動産から入居手続きの書類が横浜のアパートに届いた。その紙面には、

「8月30日には、入居に費用を振り込んでください」
「書類に署名・捺印をし、送り返してください」

と、書かれてあった。「ん?」と思った。

賃貸物件の取り交わしには、「重要事項説明書」というのがある。

それを宅地建物取引業者が一行ずつ、借り主に説明するという不動産会社の義務があるのだが、それをすっ飛ばして、「書類を送り返すように」と書いてあったのだ。

当初の私はそれを義務とは知らず、「本当はしなきゃいけないけど、遠方に住んでいるから割愛したのかな?」と思った。支払い期日である、4日後の8月30日についても、そういうものかと思って入金した。

不動産会社にストレスを感じた9月

しかし、ずっとモヤモヤが残っていたため、書類を発送するのを渋っていた。そんな9月初旬のある日、不動産会社に勤務する知人に相談。

すると、

「重説の説明を省くなんてありえない。それ、宅建業法違反だし、倫理的にやばいですよ!」

と、物凄い勢いでたしなめられてしまった。

え、違反なの? 怖くなって、書類をひとつずつ見返した。

その書類が、結構ひどかった。

何度もコピーして使ったのか、文字がかすれている。借主の不利な内容が随所に見受けられた。

それに悲しきかな、入金した請求書にも不必要な費用が含まれていることに気が付いた。

すぐに夫に相談。「もう入金しちゃったし、書類の説明してって言えばいいんじゃない?」とのこと。そうかもしれん。物件を気に入っているのなら、甘んじて受け入れるべきなのかもしれない。

けれど、私はその不動会社との契約をやめることにした。

理由は、賃貸物件はいつか退去するはずで、そのときに不動会社や大家とのトラブルが起きやすいような気がしたから。

それと、私はこのとき精神的にダメージをおっていて、「もう、S不動産とかかわりたくないなぁ」と思ったからだ。正直、今もその不動産の看板を見ると、眉間にしわが寄る。

夫と義理の両親には「え~」と最初は驚かれたけど、「しょうがない。またイチから決めないとね」と納得してもらえた。

S不動産に解約依頼のメールを送る。大きな理由は、「重説の説明がなかったから」と記した。数日後、入金した費用を返金される。重説を説明しなかった理由は、明かされなかった。

迫る9月末、無事引っ越し先が決まる

入金した時点で、引っ越し日は10月1日と決まっていた。引っ越し業者も予約済み。けれど、引っ越し先が流れてしまった! 「さて、どうしよう」と慌てる9月末。

第2希望だった賃貸マンションについて、以前やりとりしたT不動産が頭をよぎった。問い合わせてみると、「一つは埋まってしまいましたが、同じマンションで現在リフォーム中の物件があります」とのこと。

この不動産会社の代表がとても親切で、ささくれた私の心は少しずつ回復していった。リフォーム中であるけれど、室内の動画を丁寧に撮影し、動画を送ってくれた。重説の説明はオンラインで行われ、疑問もその場で解消。引っ越し先が流れた数日後に、新しい住まいが決まった。

この出来事を振り返って、オンラインで物件を決めるからこそ、不動産会社との信頼関係は大切だなと感じた。新しい町に引っ越すとき、そこではたらく人にマイナスイメージを持った状態でいたくない。

それと、まったく暮らしたことがない地域の物件を直接見ずに決めるのは、正直おすすめできないと感じた。不動産というのは素人からしたらまったく未知の世界だし、不必要なお金を払うことも時としてあると思う。慎重にことを進めたほうがいい。

コロナ禍で引っ越し先を決めるのは、なかなか大変だった。でも、不動産のほんの少しの知識を学ぶきっかけになったので、結果オーライかなと思う。

10月1日、引っ越し先のカギを受け取り、扉を開けた。そこでいくつかのトラブルが見つかるのだけど、それはまた次回。

(記:池田アユリ)


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