尊敬する方から学んだこと【ノンフィクション作家・小松成美さん】
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尊敬する方から学んだこと【ノンフィクション作家・小松成美さん】

池田 アユリ@インタビューライター

2021年9月、ノンフィクション作家の小松成美さんにお会いした。

この一年、小松成美さんの文章に勇気づけられてきた私にとって、「人生の幸運を使い果たしてしまったんじゃないか?」と思うほどの出来事だった。

今日は、小松さんから学んだことを紹介したい。

小松さんは、イチローや中田英寿など多くの著名人を取材し、大手出版業界から「この人をインタビューできるのは、小松成美さんしかいない」と言われるほどの人気作家さんだ。

待ち合わせは恵比寿。小松成美さんは、ご自身のオンラインサロンのライブイベントが終わったあと向かってくださることになっていた。

「あっ、池田さんですか。どうも、小松成美です。」

軽やかなショートボブにスポーツマスク。そしてトレードマークともいえる鮮やかな花柄のワンピース。私が想像していたとおりの、凛とした佇まいの小松さんが現れた。

その笑顔や話し方を前に、会う前の不安は飛んでいく。小松さんと少し言葉をかわすだけで安心感をおぼえた。小松さんが、興味深く私の話を聞いてくださったからだ。

成美さんのようなノンフィクション作家になる

お会いした小松成美さんは、まずは私の仕事について聞いてくださった。

「社交ダンスとインタビューライターをしている人は、なかなかいませんよ。ぜひ活かしましょう!」

と、今後のプランを一緒に考えてくれた。

そして、慣れ親しんだ横浜を離れて奈良へ移住することについても、率直なアドバイスをくださった。

「人生に無駄なものなんて、何一つないって思います。池田さんの移住も、必ず良い方向に行きます」

慣れない町への引っ越しに少なからず不安に感じていた私にとって、尊敬する小松さんに「大丈夫」と言っていただけることはありがたかった。

ふと、小松さんから「池田さんは今後どんな目標がおありですか?」と聞かれれる。

「それは……成美さんのようなノンフィクション作家になることです」

うっすらと思い描いていた理想を話してしまった。でも、目標とする小松さんに話せたのは大きい。これは、私にとって「真実にしなければならない」と思う瞬間だった。

下準備はダンボール10個!?

ひとしきり話が弾んだあと、小松さんから「どうぞ何でも聞いてください」と言っていただいたので、質問を箇条書きしたノートを開いた。

「以前、成美さんのメルマガに質問を送ったんです。そのあとのメルマガで、成美さんがその質問に答えてくださいました。『情報や資料の整理について、ジャンルごとにダンボールに振り分けている』と。私はその回答に驚きました……。ぜひ、詳しくお話を伺いたいのです!」

メルマガのご返答にはこのように書いてあった。

“今私は、10冊ほどの本の企画を同時に進行していているのですが、つまりダンボールが10個あります。本のタイトルを書いているダンボールが10個あります。ダンボールに本のタイトルを書いていてあるので、読み返したい資料を探すのは一つのダンボールの中だけで済みます。紙袋も10個ほどあって、こちらには興味を持った人物やテーマの関連資料をスポーツ、SDGs、歴史、芸術、健康といったカテゴリーに分け、投げ込んでいきます。新聞のスクラップも昔は切ってノートに貼っていましたが、今は時間短縮のため、紙面を破って、この紙袋へ。これもシンプルで紙やクリアファイルが散らばらず、整理整頓されます。
原稿を書くときには、ダンボールや紙袋の中から資料を引っ張り出し、机や床に広げますが、作業が終わったら、順番はともかくかき集めてダンボールや紙袋に戻します。これが私の整理術。記事や資料を俯瞰して見て、そこから深掘りをしていきます。”

数々の著名人にインタビューをし、本を出版されている小松成美さんが、まさかダンボールに資料を振り分けているなんて! 直接話を聞きたくて仕方がなかった。

小松さんは「そうそう」という言いながら、どのように資料分けをしているのかを説明した。まず、書斎にあるダンボールの外側に執筆予定の本のタイトル書く。先方から届いた資料や関連がありそうな記事を切り抜いて、そのダンボールに入れていくそうだ。

小松さんは資料を集めるとき、最初の段階では細かく考えないそうだ。ちょっとしたキーワードを見つけて、「この内容は、あの裏付けになるのでは?」と思ったらすぐにダンボールに入れる。

「ダンボールは、頭の中の大きな器なんです。それをより分けていきながらストーリーを考えます」

もちろん、ダンボールじゃなくても、ニトリや無印良品で売っているようなボックスでもいいそうだ。ただ、小松さんはダンボールが一番使いやすいという。

「時折なかを見返して、この記事はこういうふうに使えるなぁって構成を考えます。もちろんデジタルデータも使いますけど、ダンボールに入れる方がなくならないし確実なんです」

一冊書き終えたら必要な資料だけ残して捨てる、というのを繰り返す。「次に家を建てるときは、ダンボール用の部屋をつくる!」と、小松さんがあまりにも真剣な表情で仰るので、私はつい笑ってしまった。

構成案は、本の目次から

続いて、構成案について質問させてもらった。構成案は、なんとスマホのメモ帳に目次を書くそうだ。そのメモを少しだけ見せてもらった。どんな章の構成が読者の興味をそそるのか。それを細かく考えるため、言葉を変えたり、順番を見直したりするという。

「これはどこから始めたらいいのか。時系列か、時を戻すような構成か。取材をしているので、証言が頭の中にあるわけです。それをどこに持っていくかを考えます。そのときに、テーマの柱がブレないようにしなければなりません。読者に何を伝えたいのか、それで本当に伝わるのかを目次で考えます」

4000字のインタビュー記事を書くだけでも大変だと思うのに、本を書くとなったら途方のない時間がかかるだろう。「ものすごい胆力がいることです」と小松さんは言う。

小松さんとお話していて、“胆力”という言葉が心に深くとどまった。

たんりょく【胆力】
たいていの出来事に驚いたり恐れたりしないで、物事をやってのける精神力。(広辞苑無料検索より)

「この仕事は、好きなんだけど苦しいのがセットなんです。でも、仕事ってそういうものですよね。ダンスもそうでしょう?」

たしかに、十数年の社交ダンス生活を反芻してみて、やはり胆力が必要だったなと。一緒に踊る相手と向き合うこと。勝ち負けがあること。自分を表現すること。恵まれた身体ではない私が戦ってきた日々は、胆力と意地に必死にしがみつくものだった。今度は文章で挑戦していくのだなと、勝手に想像した。

人の心に寄り添うこと

小松さんとのお話で、私はこれから起こる出来事をプラスに感じるようになっていた。「大変なこともきっとあるだろうけど、なんだか待ち遠しい」。そんな気持ちになった。

私は、ここに小松さんのインタビューアーとしての深いパワーを感じた。

小松さんとお話すると、とても勇気が湧いた。いろんなことに挑戦しようと思える。それは、小松さんが相手の心に寄り添っているからだろう。

小松さんは、メルマガでこう書かれていた。

インタビューはマニュアルで行うものでなく、心の呼応・気脈を通じる行為です。私が人より優れているところがあるとすれば、それは、「人の心に寄り添う力」「相手の心に飛び込む力」があることです。

~メルマガ・小松成美の伝え方の教科書 vol.05「人は誰しも、必ず人に伝えたいことがある」より~

「人の心に寄り添う力」、「相手の心に飛び込む力」は、すぐにできるものではないのかもしれない。自分自身の気持ちに偽りがあれば、そうすることは難しいのではと思う。

有名人であろうとなかろうと、それに全く左右されず誠実であり続ける。それが、私の感じた小松成美さんだった。

中村洋太さんと小松成美さんのツーショット

その後、インタビューライターになる道をサポートしてくださった中村洋太さんのことを話した。中村さんの「人の心に寄り添う力」にすごく感化されたこと。素晴らしい書き手さんであること。「ライターコンサル」という形で、道に迷うライターにアドバイスをしていること。

小松さんは、「とても興味があります。ぜひお会いしたいです」と仰った。そのとき、尊敬するおふたりのツーショット写真がふわっと頭に浮かんだ。私は「このように頭に浮かんだことは必ず実現する」というジンクスを勝手に信じていて(笑) そのジンクスを、中村さんがカタチにしてnoteに書いてくださった。おふたりのツーショット写真は、近い将来プレミアになるだろう、と私は思っている。

いま、私は奈良に移住して、これから待ち受けるだろう何かについて想像する。正直なところ、まだ関西での仕事は定まっていないし、自分に何ができるのかもわからない。でも、「人の心に寄り添う力」を高めることは、日々続けている。きっと未来は明るいはずだ。

最後に、小松さんのメルマガを紹介します。毎回一万字を超える大作です。インタビューを仕事にしている人だけでなく、人とのコミュニケーションについて深く学べます。(2週に1度のメルマガが届いたら、私はGoogleドキュメントに書き写すようにしています。)

(記:池田アユリ)

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池田 アユリ@インタビューライター
年間100人ペースでインタビュー取材。社交ダンスの講師としても活動。noteではエッセイや小説を。誰かを勇気づける文章を目指して活動の枠を広げている。noteコンテスト受賞作品▷https://note.com/amayuri4/n/n6aa223569d3a