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イベントレポート「私、企画書に救われました。」フリーランスライター吉村智樹さんの企画書の書き方

毎月第4水曜日の夜8時。わたしには、ひとつの楽しみがある。

関西ライターズリビングルームオンライン!」の視聴である!!

ライターに有益な情報を届けてくれるこちらのオンラインイベント。今回が3回目の視聴である。楽しすぎて記事を書く手が止まらない......。

素晴らしい書き手さんの仕事術を無料で聞けるなんて…。このぜいたくな時間を皆さんにおすそ分けすべく、今回も書いていきたいと思う。

今回のプレゼンターは、ライター吉村智樹さん

今回のプレゼンターは、なんと、主宰者である吉村智樹さん。フリーランスライターであり、放送作家としても活躍されているお方だ。

今回のテーマは、「あくまでの僕の企画書の書き方」

「ひとえに企画書といいましても、いろんなやり方があると思います。私のやり方が正しいとは限りません。ご自身でゴールドブレンドしていただければと思います。けどね、私の企画書はかなりの確率で通っているので、あながち間違っていないのではと思います」と吉村さん。企画書への並々ならぬ情熱が伝わってきた。

そもそも、吉村さんはなぜライターに?

2016年6月より、Webライティングの仕事を始めた吉村さん。「実はライターとしてのスタートは50歳を過ぎていました」という。それまでは放送作家としてテレビ番組の脚本に向き合う日々だったそうだ。

「テレビのお仕事に全力を尽くしてきましたが、働き方にふと疑問を感じるようになったんです。その頃の業界は世帯視聴率だけで見ていて、視聴者にどう求められているかが見えてませんでした。みんなその状況に慣れてしまって、まさにぬるま湯のような状態。だから惰性的な人が多かった。そこから抜け出したいと思ったんです

そんな矢先、「Webライターという仕事があるらしい」と知った吉村さん。さっそくクラウドソーシングを使って案件を探し始めたという。

4年間を振り返って、吉村さんはいう。

「私、企画書に救われました」

え…どゆこと? 思わず吉村さんに問いたくなった。

TV番組「LIFE 夢のカタチ」(ABC)構成とナレーション台本や「週刊大衆」「メシ通」「SUUMOタウン」「SUUMOジャーナル」「まぐまぐニュース」「トリップ・エディター」「ねとらぼ」「いまトピ」「好書好日」「DANRO」「ライターマガジン」など多数。

こちらは、吉村さんが寄稿した媒体。大手ばかりだ…!放送作家をされているというアドバンテージがあったとしても、4年間でこの経歴はすごい。それもこれも企画書で道を切り開いたというのだから驚きだ。

「企画力の効力」

Webライターの仕事を探していたあるとき、「いまトピ」の編集者がライターを募集していることを知ったそうだ。けれど、どうやってアプローチしてよいかわからないと吉村さんは悩んだ。

とりあえず、いつも書いている「放送の企画書」の書式で提案してみた。

すると、すんなりと企画が通過!初めてのWebライターの仕事がいきなり連載となる。その勢いで「SUUMOタウン」の連載企画を獲得。

「ありがたいことにギャラが良くて…。おかげでテレビの仕事を一つやめられたんです」という。

吉村さんは「企画力の効力」を感じ始める。

企画書を練り、「この企画に適切なメディアはどこか?」と探して売り込む 。そのスタイルを続けていった。

吉村さんはこちらの記事を例にして説明した。

「私は女性メディアで書くような風貌ではないんですけれど…この企画は女性向けだなと思い、『CREA』に応募しました。採用されて多くの方々に読んでいただけたんです」

「あのとき企画書を提出しなかったら、私、一文なしなわけですから」と当時を振り返った。それが「私、企画書に救われました」という言葉の理由だったのである。

「企画営業先」の探し方って?

つづいて、企画営業先の探し方に話が移る。吉村さんは4つの方法を教えてくださった。

①Googleの画像検索で「ライター 募集」と検索する

よくある方法は、TwitterなどのSNSで「ライター 募集」と検索することだ。同様にGoogle検索でチェックすることもあると思う。

ただ、吉村さんがいうには「玉石混交といいますか、ノイズが多すぎますよね。ほしい情報をぱっと見つけたいものです。そこでおすすめなのが、Googleの画像検索。一覧でズラッと募集をみることができます」

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実際に検索してみた。見やすい! 講談社が運営している「with online」や「ことりっぷライター募集」など、名だたるメディアのサムネイルをざっと見ることができる。ライター以外の募集を探すときにも使えそうだ。

②大山くまおさんのnoteをフォローする

ライターの大山くまおさんは、noteでライター募集を記事にまとめてくださっている。すべての募集を見るには500円と有料だが、半分ほどは無料で閲覧することができる。大山さんが選ぶ、よりすぐりの募集一覧だ。

③雑誌『ライターマガジン』を購入する

『ライターマガジン』には、ネットに載っていない有益なライター募集が掲載されているという。吉村さんはここからいくつか案件を得ることができ、さらに「ライターマガジン」からもオファーが舞い込んだそうだ。

④Googleアラートで「ライター 募集」と登録する

Googleアラートからほしい情報のキーワードを登録しておくと、それに関連する新着情報をメールで教えてくれる。これを使わない手はない。

通りやすい「企画書」の書き方

いよいよ講義も後半。ここで吉村さんはご自身の企画書を見せてくださった。A4サイズの2ページだ。

①表題は必須!

「メディアの方々は大量の企画書が日々届いています。なので、最初の出だしで何を伝えたいのかを明確に書かなければ、スルーされてしまうかもしれません。表題は必ず入れましょう」と吉村さん。

例えば、このような形だ。

「メディア名」御中 ○○企画のご提案 
提出日:2021年4月1日 提出者:池田アユリ

「記事の企画をしたい」という意図がわかるようにすることが大切だという。

②タイトルをつけよう

「ライターさんは皆さん経験があると思うんですが、考えたタイトルがそのまま掲載されるということはあまりないんですよね。編集者がタイトルをいじったり、オリジナルで作ったりすることが多い。けれども、ライターがタイトルのたたき台を作っておくことは非常に大切です」と吉村さん。

なかでも、そのタイトルを見ただけで内容がわかるようにしておくことが望ましいという。

③サムネイルをつけよう

「画像がないWeb記事はほぼありませんよね。ならば企画書では完成形をイメージさせなければいけません。そのために企画内容に直結した写真を入れましょう」と吉村さん。

ただ、気をつけてほしいことがあるという。

「企画書というのは、基本的に会社と提案者の間だけで共有するもの。ネットから拾ってきた画像で問題ありません。ただ、どこから持ってきたのかを明記すべきです。メディアはライターの行動をすべて把握できない。だからこそ、外部ライターが著作権違反をすることを非常に恐れているのです。そういうことをわきまえていると伝える意味でも、引用元を明記しましょう」

④訴求ポイント、構成案を書く

「訴求ポイントを明確にすることが大切です。なるべく端的にしましょう。三行以内で伝えられないことは結局伝わらないと思った方がいいです」と吉村さん。

例えば、このように書き出すそうだ。

●掲載意義・・・なぜ今この記事を掲載すべきなのか?
●想定読者・・・この記事は誰に刺さるのか?
●メディア側のメリット・・・この記事はメディアのメリットになるか?

つづいて、構成案については3段階くらいの転換で良いとのことだった。

構成案(1行以内)
▼○○さんはこんなことに取り組まれている。
▼○○を始めるきっかけはこうだった。
▼○○を受賞するなど活躍。

⑥取材予定者、取材行程を書く

2ページ目には、取材相手の肩書きや名前を明記。また、取材行程はこのようなことを書くという。

・アポはこちらから取ります。
・撮影はわたしがやります。(一眼レフカメラを所持しています)
・資料は○○からいただきます。

「取材行程では『わたしがやります』ということを伝えます。結局、メディアは発信してる数が膨大なのであれやこれやと手が回らないわけです。だから編集能力のあるライターが求められます」と吉村さん。

また、多くの人は「ぶ厚いものを読みたくない」と思っているので、企画書は最多でも3枚が限度だという。吉村さんは大事な部分は1ページに集約し、2ページ目に細かい詳細を書いているそうだ。

⑦書体について

書体についても説明いただいた。企画書で明朝体はまず使わない。電子に向いていていない書体だからだ。ゴシック、丸ゴシック、メイリオなど、シンプルで読みやすい書体にするべきだという。

⑧ノンブル

ノンブルとは、印刷物のページごとに欄外に打った、順序をあらわす数字のこと。「ぶ厚い企画書だったらイヤだな」という不安を抱かせないようにするために必要なのだ。

⑨メールに必ず添えなければならない言葉とは?

「メールの本文に自分の実績を載せるのもよいですが、本当に載せるべき言葉はなんでしょう?」 吉村さんが視聴者に投げかける。

私は御社のメディアの愛読者です。(実例)という点が素敵です。大好きな御社のメディアに私も参加させてほしいのです。

大切なのは『わたしは御社の大ファンです』と伝えることです。これは、自分を売り込むより大事なことですよ」と吉村さん。

編集者は実績のある人が好きなわけではない。「自分のことを好きだ」と言ってくれる人と仕事がしたいものなのだ。

そして、「このライターはうちのメディアのトーン&マナーを理解しているのだな。じゃあ話が早い」と思ってもらう必要があるという。

はたして、メディア編集者にどう言わせたら勝ちなのか?

「これ、(掲載が)見えますね」

これを編集者に言わせたら、「通ったな」と思えるそうだ。


改めて、「なぜ企画書は必要なのか」

ひと呼吸置いた吉村さんはふと真面目な顔つきになり、少し声のトーンを落とした。そこで、大事なことを教えてくださった。

「企画書を書くのは正直めんどくさいですよね。人間関係を構築できたら、書かなくていいと思うかもしれません。それでも、なぜ企画書は必要なのか?」

企画書を書くことは、文化貢献だと思っているんですよ。話が大きいと思われるかもしれませんが、ある意味、世直しだと思ってます」

「私ね、ライターの仕事をこんなふうに定義しているんです。『右手にサーチライト、左手にスポットライトを持つ仕事』だと。文化的意義があるのにまだ知られていない人やものにサーチライトで照らす。それを企画しメディアで記事にすることで、スポットライトをあてるんです」

「ウェブの記事はスマホでサクサクッと読めますよね。せいぜい読者がお菓子を食べてる間の5分くらいです。でもね、ほんの5分で人の知的好奇心をくすぐることができる仕事って、なかなかないと思うんですよ。だからライターの仕事っておもしろいなと」

「自分の書いた記事が、誰かの5分をあたたかい気持ちさせる。そんな時間を創出できるのがライターの特権。それを見つけるのが企画書だと思ってます。読者を幸せにすること、それが我々ライターのミッションです

吉村さんの熱い想いに感化され、わたしは少し泣いた。

良かった。ライターを続ける意味は、間違ってなかったんだ…。この講義で、わたしはますますライターの仕事が好きになった。

吉村智樹さん、すばらしい講義をありがとうございました!

(記:池田アユリ)




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