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#掌編小説

【短編小説】夏富士

【短編小説】夏富士

 夏富士はくらぐろとして、いかにも乳房のようである。湖畔の旅館でだらだら過ごすつもりだったが、山肌と入道雲の合間の青さを眺めるうちに、どうにもたまらなくなってしまった。五合目までバスでゆき、登山者の列に加わった。みちみち、下山者たちとすれ違う。どうにも場違いなような気がしてきた。大きなリュックを背負い、杖を突く人々は、顔を合わせるたびに挨拶をして、頑丈そうなブーツを鳴らす。それ以外は大して喋らない

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