蛙鳴未明

小説を書いています 普段は作品をカクヨム↓に投稿しています https://kakuy…

蛙鳴未明

小説を書いています 普段は作品をカクヨム↓に投稿しています https://kakuyomu.jp/users/ttyy 本の感想など上げていきます 好きな作家は小林泰三と森見登美彦

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  • 文芸ムックあたらよ創刊号・感想

    『文芸ムックあたらよ創刊号』についての感想をまとめたものです

最近の記事

【短編小説】行方不明の秋

 郷里の夏はねちねちとしている。盆地を囲む山々が熱を逃がさないのだ。郷を離れていた二十数年のうちに、そのしつこさは一段と増したらしい。九月も末だというのに、汗を垂らしながらインターホンを押す。家主を待つ間、くすんだ塀を背に負って立つ、ホウセンカに少し見惚れた。ドアが開く。ひっつめ髪の彼女は、驚いたように目を丸くした。 「あれ、ヒー坊」 「ユイねえ、おひさ」 「電話では木曜って……」 「木曜は今日だよ」 「……ああそっか」  やつれていた。見慣れぬ皺も増えていた。けれどやっ

    • あたらよ通りませんでした~ 最終選考まで行けばと思ってたけど、そもそも最終選考まで行かなかった…… また頑張って大賞取ります

      • 【短編小説】夏富士

         夏富士はくらぐろとして、いかにも乳房のようである。湖畔の旅館でだらだら過ごすつもりだったが、山肌と入道雲の合間の青さを眺めるうちに、どうにもたまらなくなってしまった。五合目までバスでゆき、登山者の列に加わった。みちみち、下山者たちとすれ違う。どうにも場違いなような気がしてきた。大きなリュックを背負い、杖を突く人々は、顔を合わせるたびに挨拶をして、頑丈そうなブーツを鳴らす。それ以外は大して喋らない。まるで巡礼者のように寡黙である。ブーツと挨拶だけが山の言葉なのだろう。  私

        • 【掌編小説】しろすぎる腕

          昼が死にゆく、夕暮れ時の快速急行。すし詰めの車内で何とかつり革を捕まえ、安堵の息を吐いた。ふと、妙なものに目が留まる。子供の腕――がっちりと互いに食い込んだ人々々の隙間から、やけに白い細腕がすらりとこっちへ突き出ている。肘から先。私の方へ手を伸ばしているわけではない。ただ、人ごみの混沌に巻き込まれるうちにあらぬ方へ身体が持っていかれてしまった、そんな様子。私にもそういう経験がある。遠方の塾へ通っていた時分、帰宅ラッシュの真ん中で、いつも私の四肢はバラバラの方向を向いていた。

        【短編小説】行方不明の秋

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        • 文芸ムックあたらよ創刊号・感想
          3本

        記事

          あたらよ文学賞に応募しました あとは天命を待つのみです 審査員様方の胸に爪痕を残せたら嬉しいです

          あたらよ文学賞に応募しました あとは天命を待つのみです 審査員様方の胸に爪痕を残せたら嬉しいです

          息抜きに掌編を書きました。現実と非現実、狂気と正気のあわいがテーマです よかったら読んでみてください 隣の奥さんは雉かもしれない - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16818093079043874577

          息抜きに掌編を書きました。現実と非現実、狂気と正気のあわいがテーマです よかったら読んでみてください 隣の奥さんは雉かもしれない - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16818093079043874577

          一日二日で書き上げるの、諸刃の剣なんだよな 去年のあたらよも十日はかけたからいい結果を生んだわけで そろそろ溜め込み癖をどうにかしたい

          一日二日で書き上げるの、諸刃の剣なんだよな 去年のあたらよも十日はかけたからいい結果を生んだわけで そろそろ溜め込み癖をどうにかしたい

          さなコンに応募しました 柴田勝家先生に読んでいただきたいその一心で書きました 自我に迫るサイバーパンクです よかったら読んでみてください https://x.gd/HpF5N

          さなコンに応募しました 柴田勝家先生に読んでいただきたいその一心で書きました 自我に迫るサイバーパンクです よかったら読んでみてください https://x.gd/HpF5N

          あたらよの〆切が迫ってきましたが、夜の俳句をまとめてみました よかったら読んでみてください 『夜と、よると、ヨルとyoru』 https://kakuyomu.jp/works/16818093078275356332/episodes/16818093078276189572

          あたらよの〆切が迫ってきましたが、夜の俳句をまとめてみました よかったら読んでみてください 『夜と、よると、ヨルとyoru』 https://kakuyomu.jp/works/16818093078275356332/episodes/16818093078276189572

          幻想と怪奇に出したやつです よかったら読んでみてください 生首曼荼羅 https://kakuyomu.jp/works/16818093076461983718/episodes/16818093076462156339

          幻想と怪奇に出したやつです よかったら読んでみてください 生首曼荼羅 https://kakuyomu.jp/works/16818093076461983718/episodes/16818093076462156339

          えきすときおさん、伊藤なむあひさん、暇崎ルアさんなどあたらよでも見た方々が幻想と怪奇1次通られていて、めでたい 私も発表ページ上に並びたかったなあ

          えきすときおさん、伊藤なむあひさん、暇崎ルアさんなどあたらよでも見た方々が幻想と怪奇1次通られていて、めでたい 私も発表ページ上に並びたかったなあ

          文芸ムックあたらよが書店に並んでいた……!小説現代の隣で群青に浮き上がっていた……! 思わず「はわわ……」と声を出してしまいそうになった にやにやが止まりませんね

          文芸ムックあたらよが書店に並んでいた……!小説現代の隣で群青に浮き上がっていた……! 思わず「はわわ……」と声を出してしまいそうになった にやにやが止まりませんね

          文芸ムックあたらよ創刊号・感想③【創作】篇

           また会いましたね! 初めての方は初めまして。蛙鳴未明です。前回で「あたらよ文学賞篇」は終わり、今回は「【創作】篇」となります。「創作・対談篇」とずっとお伝えしておりましたが、数夜を経て、そのような乱暴なまとめ方はいかがなものか、と冷静になりました。と、いう訳で【創作】として掲載されている六作品について、感想を述べていきたいと思います。  先に結論を言っておきます。どれも面白いです。厚みと深みがあり、魔力と魅力を兼ね備えています。それぞれが違う夜の面白さを鮮明に切り取ってい

          文芸ムックあたらよ創刊号・感想③【創作】篇

          文芸ムックあたらよ、全国に並ぶそうです! 地元にも来る! す、すごすぎる。 https://note.com/eyedear/n/n723119d8a8dc

          文芸ムックあたらよ、全国に並ぶそうです! 地元にも来る! す、すごすぎる。 https://note.com/eyedear/n/n723119d8a8dc

          文芸ムックあたらよ創刊号・感想②あたらよ文学賞篇/佳作の段

           またお会いできて嬉しいです! 蛙鳴未明です。さて、あたらよ文学賞篇/佳作の段ですよ。佳作は五作品。どれも面白く、個性的に輝いておりました。前文であれこれ言うのももったいない。さっそくきらめきを数えに参りましょう! ※『文芸ムックあたらよ』は下記リンクよりお買い求めいただけます。 月が落ちてくる。 辻内みさと ・あらすじ  父が死に、「わたし」は夜ごと兄に犯されるようになった。格子窓から月を見上げて、「わたし」は母の言っていたことを思い出す――悪いことをすると罰が当たる

          文芸ムックあたらよ創刊号・感想②あたらよ文学賞篇/佳作の段

          試しにつぶやいてみております 起き抜けに伊藤なむあひ様の『ひとっこどうぶつ』を読んだところ、胸の奥からじぃわり湧き出るエモーショナルにいてもたってもいられなくなったので共有させてください https://virtualgorillaplus.com/stories/hitokkodoubutu/ 裏切りで掴まれます。ニンゲン賛歌

          試しにつぶやいてみております 起き抜けに伊藤なむあひ様の『ひとっこどうぶつ』を読んだところ、胸の奥からじぃわり湧き出るエモーショナルにいてもたってもいられなくなったので共有させてください https://virtualgorillaplus.com/stories/hitokkodoubutu/ 裏切りで掴まれます。ニンゲン賛歌