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お茶引いてるから小説書いた


親が離婚しただけでスグにとやかく言われるような田舎だった。


5駅先の大きな予備校には私と長谷川しか通っていなくて、高校生にもなると長谷川は背が伸びて、かつて貧相に思えたそれはひょろりとした優男になってそこそこ見れる奴に変わってしまった。
「地元一緒なんでしょ、長谷川くんてなんて呼ばれてたの」と同じクラスに振り分けられた友達に聞かれた。
「やまうちちんちん、やまうちんこ」
そう答えると、「は?」。
「長谷川じゃん」
「それ小学校の途中からだったしさ、ちんこで定着してたから今更呼び方変えるのもむず痒くて地元では未だにちんこ」
友達がええ……と言いながら窓辺でパックジュース片手に男子たちと笑っている長谷川を見る。
しょーもな、と笑われて、私も笑い返した。
「そうですよ、しょーもない男なんですよ」
「いや、あんただよ」
ベシと頭を叩かれて「いてぇ」と思わず声が出る。そうすると窓辺の長谷川がこちらをチラと見て、まるで憐憫かのような笑いをむけてきたので、心の中では「ちんこのくせに」「親離婚してるくせに」と呟いた。

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