12球団ドラフト展望③~横浜DeNA編~
2000年代初頭から2010年代前半までの低迷期を乗り越え,Aクラス常連となろうとしている横浜DeNAだが、1998年以来の優勝には手が届かずにいる。今年も9月9日終了時点で、2位と健闘しているが首位の巨人から8.5ゲーム差をつけられており、優勝に向けては厳しい状況だ。
昨年までの主砲・筒香嘉智が太平洋を渡ったことを考えると、十分健闘しているともいえるが、優勝を意識できるチームに成長しているだけに物足りなさもある。来年以降優勝を果たすためのポイントを3点に絞り、ドラフト会議での指名ポイントを押さえたい。
① 山崎康晃の後任の抑え
2020年の一大事は守護神・山崎の不調によるクローザーはく奪だ。2015年の入団以来絶対的守護神として君臨していただけに、チームに対する動揺は大きかったと推測できる。
岩瀬仁紀(元・中日)のように長期間にわたって第一人者であり続ける投手も稀にいるが、負担の大きい役割を担っているだけに勤続疲労が心配される。不調が一時的であっても、今後の山崎の負担を考慮した場合、後任の抑えを任せることができる投手を確保しておきたい。
後継者の有力候補が伊藤大海(苫小牧駒澤大・右投)だ。大学日本代表でも抑えを務めた剛腕は、150キロを超えるストレートに多彩な変化球で勝負する。プレーの傍ら、YouTubeやTwitterを駆使して自身の情報発信を続けるなど、インフルエンサーとしての資質も買いたい。山崎同様ファンからも愛される投手になるはずだ。
伊藤以外だと木澤尚文(慶應義塾大)や高田孝一(法政大)あたりが有力候補になってくる。木澤も高田も所属先では先発を務めることもあるが、スピードボールを生かすにはリリーフの方が良い。高校生だと小林樹斗(智辯和歌山)に抑えとしての高い適性を感じる。いずれの面々も上位で指名しなければ獲得は難しいだけに、球団が「ポスト山崎」をどれだけ意識しているか、ドラフト会議当日に答え合わせをすることになる。
② スラッガータイプの野手
筒香に代わり4番に座った佐野恵太が首位打者争いをしており、リーグ屈指の強力打線は健在だ。ただし、ソトやロペス、オースティンといった外国人選手がスタメンに3人並ぶ場面もあり、新たな和製大砲候補が欲しい。
真っ先に名前が上がるのは、佐藤輝明(近畿大・内野手・左打)だ。底知れぬ長打力に加え、守備面でも内外野いずれもこなすため、起用の面で幅が広がる。打数に対して三振の比率が高いなど不安材料もあり、即戦力とは言い難いが、育った際のスケールの大きさは他の誰も真似できない。
社会人では今川優馬(JFE東日本・外野手・右打)が最有力だ。フルスイングから広角に本塁打を放つ打撃に加え、伊藤同様に自己プロデュース能力の高さも惹きつけられるポイントだ。DeNAのチームカラーにも合致する選手だ。
高校生は三塁手をこなせる小深田大地(履正社・内野手・左打)や井上朋也(花咲徳栄・内野手・右打)、山村崇嘉(東海大相模・内野手・左打)あたりを指名できるとよい。宮崎敏郎が30歳台の中盤に差し掛かろうとしており、次代を担う伊藤裕季也の競争相手を確保しておきたい。
③ 即戦力遊撃手
昨年は2名の高校生内野手を指名したが、一軍に割って入るだけの二遊間の選手が是が非でも欲しい。今シーズンの遊撃手のUZRは、「-10.0」と12球団中10位だ。2018年にFAで獲得した大和も、今シーズンは二塁手としての起用が増えており、緊急の処置が必要な個所になっている。
総合力で考えると元山飛優(東北福祉大・内野手・左打)が最有力になるだろう。ただ、昨年のドラフト会議で森敬斗を指名していることから、上位に同じポジションの選手を指名するよりも、中位~下位で指名するのが現実的だ。元山は上位で指名される可能性が高く、指名できるかとなると難しい。
現実的な対応としては、瀬戸西純(慶應義塾大・内野手・左打)や矢野雅哉(亜細亜大・内野手・左打)、児玉亮涼(九州産業大・内野手・右打)といった守備面での不安が小さい選手を指名して、柴田竜拓みたく打撃を後天的に強化する方向で育てたいところだ。
まとめ
低迷期の投手偏重の上位指名から一転、ここ2年は真っ先に野手に入札するようになっており、チーム強化も次の段階に移った印象を受ける。
今の主力選手が在籍するうちに優勝するだけではなく、継続して強いチーム作りができる土台も今のうちに整える必要がある。前回の優勝時はマシンガン打線で一世を風靡したものの、数年でチームが解体され、長期の低迷期を迎えてしまった。過去の失敗を繰り返さないためにも、最善の指名を期待したい。
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