【小説】九話 おっさんえんでんべぇで再生か?

9.店のコンセプト

 食べ終えて、静かな状態が続いた。まったりした空気が漂って、七海はその感じが心地よくてうとうととしてしまう。

 はっと気づいた時には横になって、薄手のブランケットが七海に掛けられていた。慌てて起き上がると、他の人達がいないことに気づく。ただ、奥の方から声が聞こえてきて、ブランケットを畳んでその場に置くと、七海は声がする方へと歩いて行った。

 「あー、起きたんだベェ。よく寝てたから、寝かしてたんだんべぇ。ここへ来た時より顔色がいいからよかっただんベェ。さっきまで、琉偉君いたんだけどなぁ、みんながいる畑の方にいっちまったんだんべェ」

 大夢が七海に気づいて、片手を上げて話掛けてきた。
 奥の廊下を少し行くと外へ行ける縁側があって、そこにある庭を見ながら縁側に大夢は座っていたのである。

 「すまない。いい気持ちになって、寝てしまったよ」

 「いやいや、そう言う空間にしたいと思って作った店だから、そうなってくれて嬉しい限りだんベェ。食事する所はあったり、温泉施設でまったりできるけど、食事する場所で寝るのは難しいしさぁ、温泉施設は日帰りで入れるけど、ほら、女性特有のものがあるから、入れない人もいるだんベェ。そうした時に、気兼ねなく安くて休める所あったらいいなぁーって、思ったんだベェ。基本うちは、営業時間内なら千円で寝てても、この家にあるレトロゲームしても、漫画読んでてもいいからさぁ。ゲームは基本テレビゲームだから、寝てる人に配慮してヘッドホンしてもらってるんだんべぇ。あと、水道水はタダで、全部共有なんでぇ、そう言うのが問題ないならって人に限るんだけどねぇ。フードやドリンクなんかも頼めて、それは別途料金もらってるんだベェ。案外ただ寝たいとかいう人とか、お昼食べてゴロゴロしてそのまま眠っちゃう人が多くて、リピーターは多いんだんベェ。うちは基本口コミでしか入れないから、変な輩もいねぇだんベェ。基本、静かで安心できるみたいだぁ」

 饒舌に話をする大夢は楽しそうで、子供のような顔をしている。よっぽどこの仕事が好きなんだろうなと七海は思って、こんな大夢とならいい仕事ができそうだなと思い顔が綻ぶ。

 「そう言えば、ここでも料理するのに、あっちの店はどうすんだ?」

 「ああ...まずは、座って話した方が楽だんべぇ。隣、どうぞ〜」

 話を聞くのに夢中でずっと立っていたのに気づかなく、少し恥ずかしさもあって照れくさそうに大夢の隣に座った。

 「でなぁ、基本こっちは喜陽ちゃんが管理してんだんベェ。俺が作れる料理は作り置きして、冷蔵庫や冷凍庫に保管してんだんベェ。喜陽ちゃんは栄養士の資格も持ってるから、料理も普通にできてうまいんだんベェ。まぁ、お袋の味って感じでプロな味って感じじゃないんだけどさぁ、これがほっとする味でぇ、好評なんだんベェ」
 
 「へー...そうなのか...じゃ、あっちの店はどういうコンセプトなんだ?」

 「俺の店は基本、昼間は軽食とデザートがメインのカフェで、夜はバーになるんだんベェ。で、二階は、秩父の職人さんが主にワークショップしてるんだんベェ。まだ一階には商品置けてないけど、職人さんが作った商品を置いて販売する予定なんだんベェ。曜日ごとにワークショップ違うから、人の出入りも様々で面白いんだんべぇ。注文してくる料理も、全然違うしなぁ」

 「ん?...もしかして、仮オープンしてるのか?」

 「そうだ。まぁ〜基本的には、職人さんとそのワークショップにきてるお客さんにだけで、後は青年団に入ってるやつで酒と取り扱ってる所が結構あるんだんベェ。試飲会とか、全国の取り寄せてやったり、ふるさと納税とかお取り寄せで何が酒に合うんだ〜ってやってるんだんベェ。それで酒と合うものは、店で出してくかーって」

 「そうなのか!...そういえば、祭で酒の方は、提供しないのか?」

 酒好きというのもあって自分が飲めるわけでもないのに、七海はワクワクソワソワして楽しいそうな目をして笑みが深くなる。

 「ん?ビールと日本酒とワインとかやるよ。クラフトビール、日本酒、ワインは秩父産と外国産の珍しいものと、全国で珍しい酒とを飲み比べできるプランにしようと思って。で、後は、柑橘系のカクテル提供もするんだんベェ。バーテンダーの青年団もいるから、レシピ考えてもらって、俺が提供できるようにはしたんだんベェ。結構、ムズイのな」

 「そうか...ウイスキーとか焼酎は、出さないのか?」

 「ああ、癖が強いから、あえてカクテルで飲みやすくして提供するんだんベェ。酒に慣れてる人はいいけどぉ、そうじゃない人が飲むのはハードル高いからなぁ」

 「ほぉーう...よく考えてるな。で、酒のつまみ系は何を出すんだ?」

 「全国のおつまみをお取り寄せして、乾き物とかナッツ系とかチーズ系を食べれるようにして、デザートも夜はシフォンケーキとかムースとかチーズケーキとかオペラっていうチョコケーキのしっかりめなのを出すつもりだんべぇ。基本フルーツをふんだんに使用したやつで、重すぎない感じなんだんベェ。それも秩父産メインの日本のフルーツ色々使ってんだんベェ。まー、酒飲みは基本、高くても食べたきゃ金出すから夜は高めな設定にしてんだんベェ。ま、これは匠さんのアドバイス、なんだけどなぁ」

 「あぁ...匠が...そうか...ん?匠って青年団入ってるのか?もしや...」

 「そうだんベェ。面白いしぃ、刺激がもらえるって、入ってくれたんだんベェ」

 「そうか...そうなんだな...」

 七海はそれを聞いて、自分が如何に時間が止まっていたのかと思い知らされる。親友はどんどん先を見て動いといるのに、自分が情けなくてチクっと胸が痛んだ。痛みに顔が歪む。だが、負けてられないなという気持ちがだんだん湧いてきて、今まで以上にワクワクが止まらなかった。

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