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ご縁がつないだ新作出版の経緯。

さてさて、まずは新刊のご紹介を。
"天神”菅原道真の、知られざる政治家としての姿を描いた『あるじなしとて』。PHP研究所さまより6月10日に発売予定となっております。
現実で参議院選が迫っておりますが、千年の昔、みずからの発心を以て政(まつりごと)に挑んだ男の姿を、ぜひ味わっていただきたいと思います。

さて、本作『あるじなしとて』は、発売までにさまざまな皆さんのご協力をいただきました。
なかでも、はじめのきっかけとなったお話に少しお付き合いください。

『利生の人 尊氏と正成』で第12回日経小説大賞を受賞して作家デビューした私ですが、何しろ世間はコロナ禍まっただなか。
授賞式も規模を縮小しての開催でしたし、人と会うのも憚られるご時世でしたし。版元の皆さんなど、文芸界隈のかたにご挨拶する機会もありません。

正直言って、これはなかなかしんどい。

もちろん、日経さんから受賞第一作は出版していただけることにはなっていました。が、その後の予定はというと、その時点では白紙状態でした。
いろんな版元さんとも仕事をしていきたいですし、ストックしている作品も、できれば陽の目を見てほしい。何より、作家でいつづけるには新しい作品を世に出すしかないわけで。

危機感もありながら、とにかくも受賞第一作『和らぎの国 小説・推古天皇』の原稿を進めつつ、SNSでのPRや他版元さまへの投げ込みなどをしていたわけです。

そんななか、SNSを介して講演のご依頼をいただいたのが「歴史を楽しむ会グループ」さんでした。

こちらのグループさん、“歴史業界を楽しく拡張する”をモットーに、「南北朝を楽しむ会」をはじめ各種歴史系イベントの主催をされている団体です。

グループの代表さま、かなり熱烈な南北朝ファン。
ということで、いまどき珍しい南北朝モチーフの『利生の人』にご注目いただいてのお声掛けでした。
さて、読書会やセミナー、また「南北朝フェス」のプレイベントと出演する機会をいただいたのですが、その打ち合わせのときに「いやぁ、なかなか版元さんと知り合う機会もなくて大変ですよ」とか言ってたわけですよ。

すると代表さま。
「もしかすると、ご紹介できるかもしれませんよ」

同グループさん、歴史界隈の学識者や専門家などをマッチングする「Histlink(ヒストリンク)」というサービスも運営していらっしゃる。歴史関係を得意とする版元さんともつながりがあるので、と。

で。

PHP研究所さまとの面談が実現したのでした。

このとき持ち込んだの企画書は、ストックしている長編2本・中編1本。
うち長編2本にご関心を賜り、原稿をお預けして検討していただいた結果、『あるじなしとて』で行きましょう、となった次第です。

SNSでつながったご縁、というのはなかなかイマドキだなぁとも思いますし、南北朝の作品を書いていなかったらとも思いますし、運が良かったとも思いますし。
実際にこういうケースがあることなのかは分かりませんし、あくまで自分の場合、というお話ですが、なかなかの奇縁と言っていいんじゃないでしょうか。

そんな次第で刊行に向けた準備がはじまるのですが、その後の話は別の機会に。


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