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構想から12年。

早いもので、作家デビューして1年と4ヶ月。
ご縁をいただいて、長編歴史小説として3冊目となる『あるじなしとて』が、PHP研究所さまから刊行されます。6月10日発売予定となってますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、版元さんのご紹介の通り、本作は"政治家"菅原道真を題材とした作品です。

全国の天満宮のご祭神、"学問の神さま"として知られ、受験シーズンにはお詣りしたことのあるかたも多いのではないでしょうか。

詳しいかたなら、漢詩や和歌の達者な詩人として、彼の漢詩集『菅家文草』や、菅家の名でさまざまな和歌集に採録された歌をご存じでょう。
あるいは歌舞伎の演目。あるいは平安伝奇モノにおける大怨霊としての造形も、思い浮かぶかと思います。

いろんな意味でとても人気のある歴史上の人物ですね。その分、後世の脚色も多く、著しいものでは卓越した武人であり刀鍛冶の祖、なんて造形が加えられたりもしています。

古くからのスーパースター、菅公さん。
このあたり、聖徳太子や弘法大師にも似た“信仰の対象”としての広がりを感じますね。

ただ、それだけに“史実としての道真”に関する史料は、意外に少ないのが実情です。特に、政治家としての彼の治績はほとんど残っていません。
歴史の授業でよく言及される「遣唐使の中止」ですら、公式の太政官符には残っておらず、彼自身の著作である『菅家文草』の記録でのみ確かめられるんですね。

なので、「具体的な功績がないにもかかわらず、右大臣という顕職にまで昇っている」という状況だけが遺っているわけです。
しかも、最終的には藤原氏による他氏排斥のターゲットにさえなっている。

何故、道真の政治家としての功績が記録されていないのか。
本当に何の功績もなかったから?
学者や詩人が本業で政治に疎かった?
だとすると、何の功績も残せない中流貴族出身の学者を、藤原氏はわざわざ追い落としたの?

そういった疑問に直面したのは、およそ12年前。
歴史小説に転向して1作目を書き終え、つぎの題材を探していたときのことでした。

で。
2作目を書くタネになればいいかなと、軽い気持ちで調べはじめたのですが……。というあたりで、今回はこの辺で。

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