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※2024年06月09日追記【図解 / 経済分析】法人企業統計FY21/1Q ~日本のK字回復が鮮明に。どの業界が笑い、涙しているのか?~ 

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( 2024/06/09 追記 )


少し出遅れましたが、先日6月1日に発表された法人企業統計の2021年の1~3月期(1Q)の調査結果を投稿したいと思います。

このコロナ禍で各国の回復ぶりや、日本の出遅れ気味が指摘される中で日本の企業経営はどのようになっているのでしょうか?

今回の調査結果では、最近よく耳にする『K字回復』が鮮明となってます。どの業界が笑い、どの業界が涙しているのか?が今回の調査で明らかになってます。

今回も経済調査概要としてスライドメインでいきたいと思います!

※今回のスライド ↓


そもそも法人企業統計とは?

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法人企業統計は財務省が3か月ごと(四半期ごと)に調査し報告してます。多くの日本企業を調査し統計的手法を用いて、日本全体の売上や利益などの経営状況が分かるものです。日本の企業活動の状態が分かる大変優れた調査です。しかも資本金1000万以上が調査対象で、資本金5億以上の会社は全数調査ですのでほぼほぼ確からしい調査でもあります。

 ただし、4半期と年度の結果を報告してますが、年度は精度は高くなりますが開示が非常に遅い。そのため法人企業統計で重視されるのは4半期毎の結果です。会社の規模別でも状況を確認できる優れものです。しかし、資本金5億円未満は毎年4~6月期(2Q)に調査企業が半数も入れ替わるので注意が必要といえます(単純に連続的に比較するには少し難しいとこもありますが、長期で見ればほぼほぼ連続的に見ても問題なしとは感じてます)

はじめに売上高

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※基本的に比較を容易にするために、各時期時点での直近12カ月値を採用
※数字は今回は原数値を採用(季節調整値ではない)

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実はコロナ前から日本全体での売上は低下してました。消費増税前の駆け込み需要や増税での消費需要減少によるものです。これをみると増税が経済に与える影響は大きいですね。コロナでこの5年では過去最悪の売上まで低下中、下げ止まりも見えてません・・・

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日本の売上のメインは非製造業で、その売上の低下が日本の売上低下の主因です。もちろん製造業の低下も影響は大きいです。

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非製造業の売上の内訳ですが、その50%は我々庶民に身近な小売・卸業が占めています。サービス業や建設業を加えた、この3業態で80%を占めるのが非製造業の特徴といえます。

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方や製造業の内訳は、日本といえば当然ですが自動車がメイン業種です。ただ圧倒的というよりは、様々な業種で構成されており、多くの産業が日本では育っていることが分かりますね。

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その非製造業のメイン業種である、小売・卸業はこのコロナで大きく下げました。売上としては過去最悪の水準ですが、今期でやっと下げ止まりを見せ始めたといえそうです。これは少し明るい兆しとも感じます。

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他の非製造業のメイン業種であるサービス業と建設業ですが、建設業はそれほど下がってはいないのに対し、サービス業の低下は非常に大きいです。今も下げ止まる様相もないです・・・

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サービス業の主業種である、宿泊業の売上低下は非常に大きく壊滅的ともいえます(20/1Qに対し現在60%も減・・)。娯楽業も同様の影響を受けてます。これに比べると飲食はまだましな方といえますかね。自粛規制の影響の大きさを物語っているといえます。一刻も早いコロナからの回復が必要で、さもないとこの2業種のほとんどがなくなる勢いです。

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それに対して製造業は、主要業態では自動車業のみが底打ち回復基調を維持してます。このコロナで将来が不鮮明な中では非常に順調だといえます。これは海外、特に中国での景気回復を受けて自動車が多く売れているためです。

この状況で利益状況はどうか?

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売上は下げ止まりを見せていませんでしたが、利益は下げ止まり反転の兆しを見せています。

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非製造業が今期ついに底打ち反転し、製造業の力強り利益回復でトータルで利益が回復基調になったいえます。製造業はコロナ前の水準にかなり迫るまでに回復してますね。

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そんな好調な製造業は、やはり自動車業界の力強い回復で支えられていることが分かります。ただ、意外にも自動車業界は2017年3Qからずっと利益は低下トレンドで苦しんでいて事が分かります(中国での自動車販売が頭打ち影響が強い)。

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非製造業も、売上で下げ止まりを見せていた小売・卸業は利益回復を維持しています。売上低下が止まらなかったサービス業も利益は底打ち回復基調へ。しかし、運輸業が大きく利益を低下させ、その下げ止まりを見せていません。

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ただ、サービス業でも自粛規制をもろに受ける宿泊・娯楽・飲食の利益低下は止まっていません。赤字が続いています。売上低下はわずかだった飲食も、利益の低下は非常に大きいです。もともと損益分岐点が高いため、わずかな売上低下でも利益を大きく失うのですね。この3業種は他の業種以上にコロナの影響を受けており、苦しいですね・・・

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非製造業の業種全体で唯一赤字であった運輸業をみてみましょう。もともと運輸業界は大変利益が安定した業種でしたが、今回の自粛規制であの鉄道や航空業が一気に赤字に転落してしまいました。ただコロナが明けても、このコロナ禍で生まれたニューノーマル(ex.テレワーク)で以前のように戻せるかは少し疑問がありますね。

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利益の動向は確認しましたが、利益率の動向も補足として確認しておきましょう。利益率としてはまだ回復の兆しを見せていません。もう少し売り上げが戻らねばってとこですね。

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当然このような状況下では、将来のための設備投資も勢いを失ってます。

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それは製造業・非製造業に限らずに起こってます。コロナの状況の改善と利益回復がないと将来のための設備投資はなかなか加速しない気がしますね。ただ、この5Gや半導体戦争下で投資が加速していかないことは将来的に日本の立場が弱くなる気がしてなりませんが・・

株価(時価総額)にはどう映っているか?

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そもそも日本全体の時価総額はバブル期の影響を除けば、基本的に全産業の利益成長速度とともに成長していると個人的には考えます。

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また、日本の時価総額は利益のピークやボトムのタイミングに一致するように動いていることもわかります。もちろん多少前後はあるが目安には使える範囲だと感じます。今回で利益反転したことでこのまま株価が再度上がるのでしょうか??注視が必要ですね。

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これをEV(企業価値)/EBITDAの推移(50年間)でみてみましょう。基本、1985年以降は6~12倍の範囲で推移していることが分かります。バブルで一気に株価が上がった時が最高値の12倍ですね、逆に直近で最低値になったのはリーマンショック時期です。この範囲が日本の適正範囲では?と見えます。

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この20年で見ても同様です。現在EBITDAマルチプルは上限値の12倍付近にいます。このまま利益が増加する事で株価が適正値に戻るのか?もしくは株価が急落することで下がっていくのか?もう少し様子見が必要ですね。しかも、米国FRBがテーパリング(金融引き締め)も示唆するようなこともありましたね。ややリスクが高まりつつある中で株価と利益はどう動いていくのか?注目ですねー

今回は以上となります!

ありがとうございました!

 ※ コロナ影響を旅行業界にフォーカスしたのはこちらになります↓


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