【ショートショート】『違法の冷蔵庫』
「待て、そっちじゃない!」
友達が隣の部屋から走ってきた。
『冷蔵庫のビールを飲んで良い』と言われたから、その通りにしようと冷蔵庫のドアに手をかけた時だった。
友達は、俺が開けようとしたのとは別の冷蔵庫からビールを取り出した。
「そっちは違法の冷蔵庫なんだ。中のものは冷えてない」
友達はもう片方の冷蔵庫を指差し、そう言った。
「なんだ、故障か」
「違う。いいか、冷蔵庫がものを冷やすのは何のためだ?」
「ビールを美味く……いや、長期保存のためか」
「そうだ。こいつはその長期保存に特化してる。冷えないが、中のものは永遠に腐らない」
「そんなの嘘だろ」
俺が笑うと、友達はその違法の冷蔵庫のドアに手をかけた。
「現に、3年前殺した元カノが入ってるが、まだ温かい。見るか?」
俺は声にならない叫びを上げて逃げ出し、警察に通報した。
後日、警察から、違法の冷蔵庫はただの壊れた冷蔵庫だったと聞いた。
ただ、あの部屋からは……もう、この話はやめておこう。
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