大きいボールと小さいボール

 ある冬の晩のこと。
 家の中に大きいボールと小さいボールがありました。
 小さいボールはしくしく泣いていました。家の子供たちがもう大きくなって大きいボールでしか遊んでくれないと言うのです。

「それは今だけだ。あの子たちがもう少し大きくなったら。また君と遊んでくれるさ」

 大きいボールはそう言って小さいボールを励ますのですが、小さいボールはしくしく泣き続けています。

「君みたいな大きいボールになりたい。そうすれば、もっとあの子たちを喜ばせることが出来るのに」
「あの子たちがもっと小さかったころ、君は僕より遊んでいたじゃないか。それこそ、僕は君のように小さいボールになりたいと思ったものさ」
 
 大きいボールが小さいボールにそう言いました。

「本当に? 」
「本当さ。でもね、あの子たちを喜ばせるのには、大きくても小さくてもどっちでも構わないんだよ、きっと」
「ねえ、君、どういうことだい? 」

 大きいボールは、窓から外を覗いてみました。外はひらひらと雪が降っていました。

「今にわかるさ」
  大きいボールはそう言って、小さいボールと一緒に外に出ました。
  庭は雪が降り積もり、月の光できらきらと輝いています。

「さあ、僕たちであの子たちを喜ばせようじゃないか」

 朝になりました。子供たちが外に出ると、庭先に雪だるまがありました。それを見た子供たちは驚き、大喜びしました。

 雪だるまだ!

 雪だるまに顔を描いてあげよう!

 そうだ、帽子を被せて、手もつけてあげなきゃ!

 子供たちは大はしゃぎです。そして、道具をとりに走っていきました。雪だるまになった大きいボールと小さいボールもとても嬉しくなりました。

「嬉しいね」

 と大きいボールが言いました。

「うん、とっても嬉しい」

 大きいボールの上で小さいボールが大きく頷きました。


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