平林周

年4回渡米しアメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中。 デ…

平林周

年4回渡米しアメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中。 デジタルマーケティングの分野で幅広い経験を持つ。革新的なデジタル戦略を用いて、小売業の変革を推進することに情熱を注いでいる。ストアDXという分野での成功を掴むための実用的なアイデアを配信中。

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【DX#3】日本企業のDXを阻害する、年功序列という呪いの話

日本企業の現状とDXの必要性  日本の企業文化は、長きにわたり上下関係や年功序列を重視する「タテ型社会」の影響を色濃く受けてきました。この垂直的な構造は、意思決定の遅れや新しい取り組みへの抵抗など、企業活動における種々の非効率を生み出す一因ともなってきました。一方で、ビジネス環境をとりまくグローバル化の波は、日本企業に対しても大きな影響を及ぼしています。  また、デジタル化の進展に伴い、ビジネスモデルの変革やイノベーションの加速が求められる時代を迎えています。こうした状況下

    • 【DX#32】コマースメディアを知らない企業にリテールメディアの成功はあり得ない

       リテール業界における広告活動が進化する中で、リテールメディアとコマースメディアの違いはますます重要となっています。リテールメディアは小売業者が自社のプラットフォームを利用して広告収益を上げる手段として注目されていますが、この考え方だけでは成功は限られたものとなります。本当に成功を収めるためには、リテールメディアの枠を超えたコマースメディアの視点が不可欠です。 リテールメディアの限界  リテールメディアは、小売業者の持つ顧客データを活用して、店内やオンラインストア内で広告

      • 【DX#31】日本小売業の誤解が続く無人店舗技術

         デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が遅れている日本の小売業界には、多くの課題があります。特に、Amazon Goのような無人店舗技術を未だに誤解している点も問題の一因になっているといえるでしょう。 誤解される無人店舗技術  日本の小売業者は、Amazon Goの無人店舗技術を単なる省人化の手段と捉えがちです。しかし、これは大きな誤解です。Amazon Goの技術は、レジに並ぶことなくスムーズに買い物ができるキャッシュレスなショッピング体験を提供するものであり

        • 【DX#30】NRF APAC 2024「小売業のDX最前線を体感して」

           先日、シンガポールで開催されたNRF(全米小売業協会)のイベント、NRF APAC 2024に参加する機会を得ました。このイベントは、小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する最新のトレンドや技術を紹介する場として知られています。参加して特に印象的だったのは、来場者の熱意と情熱でした。 日本のサラリーマンとは一線を画す熱量  会場内を歩き回ると、参加者たちの目の輝きと積極的な姿勢に圧倒されました。質問や議論が飛び交い、新しいアイデアや技術に対する好奇心に

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        【DX#3】日本企業のDXを阻害する、年功序列という呪いの話

          【DX#29】データ活用の壁「日米小売業の明暗を分ける決定的要因」

           近年、小売業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれていますが、日本の小売業界ではその実現に苦戦している現状があります。一方で、アメリカの小売業界ではデータ活用が進み、大きな成果を上げています。この差はどこから生まれているのでしょうか。私の経験上、日本の小売業界におけるデータ活用の遅れには、以下のような要因があります。 データ活用における日米の決定的な違い ①文化的背景  アメリカでは「データは資産」という考え方が浸透しています。一方、日本では

          【DX#29】データ活用の壁「日米小売業の明暗を分ける決定的要因」

          【DX#28】AIを活用する人類とAIを活用しない人類の情報格差

           近年、日本の小売業界においてAIに対する否定的な視点が散見されます。これは、AIと人間を対立する存在として捉える誤った認識からくるものです。しかし、実際には「AI vs 人間」という構図は大きな間違いであり、真の競争は「AIを使わない人間 vs AIを使う人間」の間にあります。  過去を振り返ってみると、1990年代にも「人 vs インターネット」という議論が盛んに行われていました。さらに、「人 vs 検索エンジン」という構図も存在しましたが、結局のところインターネットや

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          【DX#27】小売りDXに最も必要なのは逆張りマインドである

           日本の小売業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれて久しいですが、多くの企業が実際には形だけのDXにとどまっています。その大きな原因の一つは、ITベンダーに頼り切った形式的なDXが蔓延していることです。企業は最新の技術を導入することでDXを進めているつもりですが、実際には本質的な変革には至っていないことが多いのです。  この問題の背景には、日本企業の失敗を極度に嫌う文化があります。失敗を恐れるあまり、リスクを避けて無難な選択肢を取りがちです。その結果

          【DX#27】小売りDXに最も必要なのは逆張りマインドである

          【DX#26】パーソナライゼーションの誤解とその課題とは?

           小売業におけるデータドリブンによるパーソナライゼーションの始まりは、1990年代後半から2000年代初頭にかけてのことと言われております。2010年代に入ると、ビッグデータ技術の進化により、膨大な量のデータをリアルタイムで処理・分析することが可能になりました。これにより、より高度なパーソナライゼーションが実現されるようになりました。  しかし、「チョコレートを好きな人にチョコレートの広告を送る」という考え方には限界があります。パーソナライゼーションが顧客の既存の嗜好にのみ

          【DX#26】パーソナライゼーションの誤解とその課題とは?

          【DX#25】リテールメディア依存で小売業の本分を失わないためには?

           日本の小売業界において、リテールメディアはお金が儲かるものという楽観的な認識が広がっています。しかし、実際の現場では、広告代理店とのリテールメディア協業企画が小売業の本分を達成できないケースが多々あります。この現象の原因、理由、そして対策について考察します。 原因と理由 ①短期的利益への過度な依存  多くの小売業者は、リテールメディアの導入によって即座に収益を上げることを期待しています。このため、広告代理店との協業においても、短期的な広告収入を優先し、長期的な顧客価値の

          【DX#25】リテールメディア依存で小売業の本分を失わないためには?

          【DX#24】日本小売業のリテールメディアへの誤解「Walmartから学ぶ本質とは?」

           近年、リテールメディアの可能性に注目する小売業者が増えていますが、その中でWalmartの成功事例は特に注目されています。Walmartのリテールメディア事業、Walmart Connectは、広告収益を大幅に向上させただけでなく、顧客体験の向上にも大きく寄与しています。しかし、リテールメディアを単純に「お金が儲かるもの」と楽観的に捉えるのは危険です。今回のコラムでは、Walmartの事例を通じて、リテールメディアの成功には多大な努力と戦略的な投資が必要であることを論じます

          【DX#24】日本小売業のリテールメディアへの誤解「Walmartから学ぶ本質とは?」

          【DX#23】Walmart Connect仕組み解説

           Walmart Connectは、Walmartが提供する包括的な広告プラットフォームで、ブランドや販売者がWalmartの広大な顧客基盤と効果的に繋がることを支援します。Walmartは全米で毎週1億5千万人以上の顧客を迎え入れ、90%のアメリカ家庭が利用しているという巨大な小売企業です。2022年には、Walmartの広告事業が顧客との接点を最大化し、広告収益を大幅に増加させました。 以下のフロー図を使用して、Walmart Connectの仕組みを説明します。 ①

          【DX#23】Walmart Connect仕組み解説

          【DX#22】日本企業に足りないデータリテラシーの問題点

           デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない小売業界における大きな問題の一つとして、データ活用の誤りがあります。特に、日本企業においては、データリテラシーの不足が原因で、データの取り扱いにおいて以下のような問題が発生しています。 間違ったデータ活用  多くの企業がDXを推進する際に陥る罠の一つは、「とにかくデータを集める」ことです。膨大な量のデータを集めることが重要だと考え、データ収集に奔走しますが、これは多くの場合、逆効果です。データはただ集めればよいというもの

          【DX#22】日本企業に足りないデータリテラシーの問題点

          【DX#21】リテールメディア事業は内製化こそ至高である

           デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない小売業界には多くの課題があります。以前、内製化と外注の問題点についてコラムを書きましたが、その中でも、リテールメディア事業の内製化に焦点を当てた問題について考えてみましょう。 内製化こそ至高  リテールメディア事業を成功させるためには、内製化が不可欠です。自社内でリテールメディア事業を運営することで、企業は迅速かつ柔軟に市場の変化に対応することができます。外部に委託することで一時的な成果を得ることはできるかもしれませんが

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          【DX#20】コミュニケーションレベルの低い日本小売業の嘆き

           デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業が競争力を維持・向上させるために不可欠な要素となっています。しかし、小売業界では、DXの導入が他の業界に比べて遅れていることが多いです。その背景には、働き方の変化や在宅勤務に対する誤解が存在します。ここでは、小売業がDXに取り組む上で直面している問題について考察します。 働き方の変化  近年、在宅ワークや省人化、そしてテクノロジーの進化が急速に進んでいます。在宅ワークは、多くの企業で導入が進み、特に大都市圏において通勤時間

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          【DX#19】リアルタイム分析の重要性 : 遅延するID-POSデータに価値はない

           小売業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透は、事業運営のあらゆる側面に革命をもたらしています。特にID-POSデータの取り扱いにおいて、リアルタイム分析の重要性が高まっている中、多くの小売業者がデータ遅延の問題に直面しています。このコラムでは、ID-POSデータがなぜ遅れるのか、その影響、そしてWalmartがどのようにしてこの問題を克服しているのかを掘り下げます。 ID-POSデータ遅延の原因 ①古い技術基盤  多くの小売業者が依然として古いPOS

          【DX#19】リアルタイム分析の重要性 : 遅延するID-POSデータに価値はない

          【DX#18】時代遅れのRPA : 小売業を蝕む自動化の落とし穴

           デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せる中、多くの小売業が技術的な解決策を求めています。特に注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)ですが、このツールは2000年代初頭から存在しており、最近になってDXブームにより再評価されています。しかし、RPA導入が増える中で浮かび上がってくる問題点も少なくありません。このコラムでは、RPAが抱える課題と小売業が直面するデジタル変革のジレンマについて掘り下げます。 RPAとは何か

          【DX#18】時代遅れのRPA : 小売業を蝕む自動化の落とし穴