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賞【ショートショート485字】

彼はつくづく賞と縁がない男だった。思い返せば、それを意識しだしたのは小学校低学年の頃からだ。

同級生は書道、絵画、自由研究、運動会の徒競走、ピアノのコンクールなど、それぞれが得意な分野で様々な賞をもらっていた。しかし彼はその一つとしてもらえなかった。

彼も最初はいつかもらえるだろうと楽に構えていたが、小学校高学年にもなると焦ってきた。友達の家に賞状やトロフィーが飾ってあるのを見ると、悔しくて帰ってしまうこともあったほどだ。

彼はなんでもいいから賞がもらいたかった。彼は水泳が得意だったので大会に何回か出たが、いずれも入賞ならず。皆勤賞を狙おうと小学校6年間一日も休まずに登校したが、なんと彼が卒業した年から「体調が悪い時に登校させるのはよくない」と言って廃止になった。

そのまま中学校、高校、大学と進学したが、彼は一度として賞をもらうことがなかった。そして就職した。

しかし彼は諦めていなかった。会社員にはあれがある。

朝礼で部長が言う。

「えー、誠に遺憾ながら、今回のボーナスは会社の業績不振のため、なしということに…」

賞与までもらえないとは。彼はつくづく賞と縁がない男である。

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