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おやつ【ショートショート451字】

 最近、中学校の放課後に、ちょくちょくクラスの山田んちに行っている。山田の母親は専業主婦らしく、俺と山田が山田の部屋でだべっていると、毎回おやつを運んできてくれるのだが、そのおやつが毎回豪華で驚いている。ショートケーキ、豆大福、メロン…今日のおやつはなんと、とらやの羊羹だ。

 俺の家は貧乏で、子供の頃からおやつと言ったら、さつまいも、とうもろこし、すいか…山田の家とはえらい違いだ。ふと気になって、山田に訊いてみた。

「おやつでこんだけ豪華なら、夕飯は何が出てくるんだ?」

 すると山田はうつむきながら答えた。
「夕飯はこんな豪華じゃない…カレーとか、コロッケとか。」


 帰り際、玄関に見送りに来た山田の母親に声をかけた。

「お母さん、次回からはお菓子はいりませんから。ははは、50歳を超えると糖尿が気になりだしましてね…。」

「わかりました。先生、息子ももう少ししたら学校に通えると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

と母親は深々と頭を下げた。年季の入った板張りの玄関廊下を眺め、母親の胸中を想った。

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