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sannoun
新入社員【ショートショート595文字】
「部長が新入社員をえこひいきしている」という噂が立ち始めたのは先週くらいからだろうか。私に直接その話題が振られたことはないが、女子トイレの個室にいるときなど、よく話が聞こえてくる。
「あの新入社員がちょっとかわいいからって、部長えこひいきしすぎ。」
「振られてる仕事量が明らかに少ないもんね。しかも成果をアピールしやすい、オトクな案件ばっかり振ってる感じ。」
「新入社員は新入社員で、部長〜って甘えている感じじゃない?」
「もしかして、できてるとか…」
「えー、結構歳違うでしょ!」
と言いたい放題である。
確かに先月入ってきた新入社員はかわいらしい。素直だし、やる気があるし、少なくとも女子トイレで愚痴を言っているあの子たちより感じがいいのは確かだ。
私は彼女らの愚痴に耐えかねて、勢い良く個室のドアを開けて飛び出す。こちらを振り返った彼女たちは、私に気づき顔面蒼白になる。
「部長…」
私は腰に手を当てて言う。
「あなた達、くだらないこと言ってないで。あなた達が新入社員で入ってきたときも同じように面倒見たでしょう。新入社員くんはまだ仕事に自信ないみたいだから、みんなも初めのうちは面倒見てあげて。」
「はい…」
と彼女たちの声は消え入りそうだ。
「それから、彼、ちゃんと彼女いるみたいだから。変なこと言わないようにね。」
と私は去り際に付け加える。
部下の教育は私の仕事だ。変な噂が立たないようにしっかりしなければ。
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