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勉強しない学校【ショートショート893字】
「おーい、ミキの番だぞ―!」
と校庭でドッジボールをしているミキを、タケシが呼びに来た。
「今日もうまくいった?」
「もちろん、看護師さんにも褒められたよ。」
とタケシは得意そうだ。
今日は週に一度の登校日。昔は毎日学校に行っていたらしいけれど、小学3年生のミキとタケシが入学した頃にはすでにこのスタイルになっていた。
というのも、「電磁波インプット」が発明されたからだ。これは特殊な電磁波を脳に当てることで、知識を直接脳にインプットすることができるという画期的な発明だ。もう机に座って辛い思いをしながらの「勉強」は必要ない。教科書一冊分なら電磁波の照射たった3秒でインプットできてしまう。
ミキは校舎に入り、「インプット室」に向かう。インプット室には医者と看護師が構えていて、やってくる生徒をベッドに寝かせ、ちょうどドライヤーのような形をした装置で頭に電磁波の照射を行う。
「はい、リラックスして、何も考えないでね〜。」
と看護師は優しい声でミキに言う。そうなのだ、この瞬間が苦手だ。
何も考えないでと言われても、いろんなことを考えてしまう。さっきのドッジボールでどうすれば球を避けられたのかな、今日の晩御飯は何かな、お医者さんと看護師さんの服はなぜ白いんだろう…。
「うーん、もうちょっと頭を空っぽにできるかな?ちょっとインプットが上手くできないみたいだ…。」
と医者が言う。ミキは上手くできないことを申し訳なく思う。
なんとかインプットが終わり、校庭に戻るとタケシが声をかけてきた。
「うまくいったか?」
「うーん、やっぱり難しい…。」
とミキは正直に言う。
「タケシはなんでそんなにうまくできるの?」
「そうだな、僕は普段から何も考えないようにして練習しているんだ。」
「え、そうしたら何か疑問が出てきたらどうするの?」
「どうせ次のインプットで知識が入ってくるから、まぁいいか、と思うようにするんだよ。実際、そのほうが自分で考えるより早いし正確だろ。」
「そうなんだ!私もやってみるよ!」
とミキはコツを教えてもらえたことに喜んだ。
この教育方法が根本的に間違っていたことに政府が気づくのは、それから10年後のことである。
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