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東京

小学生の頃、好きだった漫画があった。
そのヒロインに憧れていた。大人になったらこんな恋愛がしたい、この子みたいに可愛くなりたいと思っていた。その漫画のヒロインは北国から東京に上京した日に、むかしの恋人と東京で再会した。
それから10年ちょっと経ったわたしにはわかる。東京はそんなに狭くないということが。例えば、そのヒロインがむかしの恋人を追いかけて、彼の勤務先を調べて勤務時間帯を調べて、就業時間付近に会社の前で待ち伏せしたら再会するかもしれない。でもそれは恋愛漫画ではなくなる、ホラー、サスペンス、スリラーだ。
私はその漫画のヒロインの歳を5つも超えてしまった。
それなのに気持ちはあの頃のまま。小学生には中学生が大人に見えて、中学生には高校生が大人に見える。高校生には大学生が、大学生には社会人が。
社会人になってしまったけれど、わたしは変わらずあの頃のまま。今でもあの漫画のヒロインになりたいと思っている。なりたいと思いながら、私は今日も東京を歩く。

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